仮 弐

淀川 乱歩

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其の九 淫獄転生 其の弐 淫蕩遊戯 其の餐獣市

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 ……処で、そんな呪文使用者達(スペルユーザー)は、必ず、常に棒(スタッフ)や杖(ワンド)を所持していたのです。
 ……其れは、呪文詠唱中の無防備な自分を、魔法生物化した棒や杖の、自動防御結界(オートガード)で守る為でした。
 ……魔法の棒や杖は、実は、大陸各地に点在する魔導錬金術協会内の、巨大な人工知能と常に精神感応(テレパシー)で交信(リンク)している端末で、常に周囲を監視して、攻撃を探知すると、其の攻撃を瞬時に精密分析(アナライズ)し、対抗する防御結界(シールド)を展開したのです。

 ……そして、そんな防御目的以外に、詠唱の補助も行っていたのは、実は、魔族達の詠唱する呪文には、一部の高等魔族以外には発音不可能な音が含まれており、呪文使用者達の詠唱を、棒や杖が輪唱(カノン)の様に続けて詠唱して、音声で詠唱補助(ハーモナイズ)していたのでした。
 ……呪文には、使用者の知識量(ランク)に依る封印(ロック)が掛かっており、知識量の低い呪文詠唱者が詠唱を間違えたり、魔法の制御に失敗して、暴走するのを防いでいたのです。
 ……つまり、魔法の棒や杖は、持ち主との契約の儀式で、精神感応(テレパシー)で主人(あるじ)と意識を常に同期(リンク)しており、主人と意識と知識を共有していたのでした。

 ……そして、そんな魔法の棒や杖は、最初は地下迷宮の、中階層の宝箱の中から発見され、冒険者協会(ワンダラーズ)から魔導錬金術協会へ、付与されている魔法の精密鑑定(アナライズ)を依頼されて、分析されていたのです。
 ……やがて、魔導錬金術協会と契約した武器商人達の手で、安価な模倣品(レプリカ)が量産され、冒険者協会の武具商店で販売されて、一般の冒険者達の間に広く普及して行ったのでした。
 ……地下迷宮(ダンジョン)の、宝箱の中から次々と、冒険者達の手で発見される武器や防具、装身具や調理器具、置き物や皿には全て、魔法が付与(エンチャント)されており、必ず其れ等の魔法は封印状態(スリープ)だったので、魔導錬金術協会が付与された魔法の精密鑑定を行い、再起動(アウェイク)させていたのです。

 ……そして、迷宮内で発見された、遺物の中には神々の食器が有り、例えば神々の皿に温かな料理を盛り、記憶呪文(セーブ)を唱えて皿に料理を記憶させてから、其の料理を全て食べ、空の皿に再び記憶呪文(ロード)を唱えると、皿の上には元通りの温かな料理が出現したのでした。
 ……また、神々の酒盃(ゴブレット)では、矢張り、其の酒盃に葡萄酒(ワイン)を注ぎ、記憶呪文(セーブ)で記憶させ、其の酒盃を飲み干してから、空の酒盃に記憶呪文(ロード)を唱えると、再び元の温度の葡萄酒で、酒盃が満たされるのです。
 ……更に、別の種類の神々の酒盃では、例えば其の酒盃に、葡萄酒を記憶させてから、其の葡萄酒を唯の水に交換し、記憶呪文を唱えると、酒盃内の水が一瞬で葡萄酒に変わったのでした。
 ……其れ等の、魔法の食器を精密鑑定した、当時の魔導協会は、食器が周囲の環境魔素(マナ)を消費して、料理や酒を再生している魔術回路を解析して、其の魔術回路を錬金術回路と名付け、様々な魔導具内へ組み込んだのです。
 ……そして、やがて魔導協会は、錬金術協会と統合され、魔導錬金術協会が誕生したのでした。
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