【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔

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第七章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・武士団ギルド編~

道場訓 六十六   裏闘技場の闇試合

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「もしかすると、そういう場所で非合法な魔薬まやくの製造が行われているのですか?」

 俺の言葉にコジローが反応する。

「もしかすると……ってのはどういうことだい?」

 ここまできたら隠す必要がないので、俺はコジローに洗いざらい話した。

「俺はゲイルさんから2つの依頼を頼まれたんです。1つは任侠団ヤクザからあなたの身体を守ること。そしてもう1つはヤマトタウンから横行している、高品質の非合法な魔薬まやくの出所の捜査です」

 そうである。

 俺はコジローの護衛任務とは別に、最近になってちまた横行おうこうするようになった非合法な魔薬まやくの捜査も頼まれていた。

 そして、実は後者のほうがメインの仕事だったこともコジローに説明していく。

「なるほどな。何かおかしいとは思ったぜ。どうして取り巻きの多い俺の元に、わざわざ護衛ごえいなんて名目で人を寄越よこしてくるなんてよ。そうか、お前さんらの本当の目的はそっちかい」

「隠すつもりはありませんでした。ただ、まさかここまでヤマトタウンの情勢が乱れているなんて知らなかったんです。どうやらあなたの話を聞く限りでは、任侠団ヤクザの1つや2つ潰せばいいというような甘いものじゃなさそうだ」
 
「そうだな。すぐに居所が分かるような末端の任侠団ヤクザなど、上の組織からすればいつでも尻尾しっぽを切れる。そんなところをところで情報なんて出ねえよ。それこそ全部を取り仕切っている頭を見つけないとな」

「その頭を見つけるためのヒントが、闇試合ダーク・バトルと呼ばれている賭け死合しあいにあるんですね?」

「お前さんの口振りだとゲイルから少しは聞いているようだな。だが、それでも真相は分からないと言われただろう?」

「はい、ゲイルさんも独自に密偵スパイ専門の冒険者を雇って調べたようですがダメだったようです。ことごとく冒険者たちは死体となって見つかった、と」

「俺のところもだよ。うちにも隠密おんみつ忍者にんじゃ)っていう密偵スパイけた人間がいるんだが、どうしてもある場所に潜入しようとすると失敗するのさ」

 俺は小首をかしげた。

武士団サムライギルドも非合法な魔薬まやくの出所を調査していたんですか?」

「まあな。それが裏社会の資金源になっているということもあるが、もっと問題なのはそれに〈暗黒結社あんこくけっしゃ〉がからむことでヤマトタウンの秩序が根底からくつがえされそうになっていることだ。それに連中が高品質で安価である非合法な魔薬まやくをバラいている目的は金じゃない」

「……と言いますと?」

 コジローは「生贄いけにえだ」と言った。

「連中は顧客こきゃくリストにっていた客を、自分たちが取り仕切っている裏の闘技場コロシアムへとポンポンと送り込んでいるのさ。いつ姿を消してもおかしくない奴らばかり選んでな。たとえばキキョウ・フウゲツなんかもその口さ。奴はいつ死ぬかも分からない冒険者だからな。ある日、ふと姿を消しても誰も怪しまない」

「待ってください。そんなことになったら私とケンシン師匠が黙っていません。そうですよね? ケンシン師匠」

 エミリアの言葉に俺は大きく首肯しゅこうした。

「それに顧客こきゃくリストに記載きさいされていたのはキキョウだけではなかったはずです。中には表に出てはマズい身分の人間もいたのでは?」

「だから選別されていると言っただろう。本当にマズい奴らは役人が除外しているから、それこそ姿を消しても大丈夫な奴しか選んでいないはずだ」

「そして、その姿を消しても大丈夫な人間を裏の闘技場コロシアムに送っている」
 
「ああ、そこまでは潜入した密偵スパイ忍者にんじゃ)の情報で分かっているんだ。どうやら送り込まれた人間の一部は、闇試合ダーク・バトルと呼ばれる賭け死合じあいの合間にあるイベント――魔物との余興戦よきょうせんなんかに放り込まれる生贄いけにえとして使わるみたいなんだが、その他の人間はどこで何をするために使われるのか不明らしい。どちらにせよ、裏の闘技場コロシアムに送り込まれた顧客こきゃくリストの客はただでは済まない」

「だったらキキョウさんも……」

 顔を蒼白そうはくにさせたエミリアに、コジローは深くうなずいて見せた。

「十中八九、死ぬだろうな。少なくとも五体満足で返ってくることはない」

 その言葉を聞いた瞬間、俺は立ち上がった。

「コジローさん、このヤマトタウンの奉行所ぶぎょうしょの場所を教えてください」

「聞いてどうする?」

「どうもこうもありません。今すぐキキョウを助けに行きます。俺はあいつの師匠なんです。そんなところに送られると分かって見過ごすことなどできません」

「ケンシン師匠、私も同じ気持ちです。このまま姉妹弟子しまいでしであるキキョウさんを見殺すなんて無理です」

 と、俺とエミリアが決意を強く固めたときだ。

「待ちな。奉行所ぶぎょうしょに行ったところでキキョウはいないぜ」

「なぜです? ヤマトタウンでもヤマト国と同じく役人に捕まった罪人ざいにんは、まず奉行所ぶぎょうしょろうに入れられるはずでしょう?」

「普通に捕まった罪人ざいにんならな。だが、キキョウは間違いなくあのまま裏の闘技場コロシアムに送られたはずだ。それほど最近の連中の動きは簡略化され迅速じんそくになっている」

「だったら裏の闘技場コロシアムの場所を教えてください」

「おい……まさか、裏の闘技場コロシアムに正面から乗り込む気じゃないだろうな?」

「ダメですか?」

「お前さんがキキョウを本当に救いたいのなら悪手あくしゅだ。連中は大胆だいたんかつ慎重しんちょうを絵に描いたような連中の集まりでもある。少しでも異変を感じれば根こそぎ証拠を消してトンズラしかねない」

 証拠を消す。

 つまり、それは……。

「集めた顧客こきゃくリストの客を殺して、ですか?」

「それだけじゃないだろうが、必ずそれはやるだろうよ。もともと生かしておくつもりもないだろうからな。ただ、イベントで使うまでは生かしておくってだけさ」

「どちらにせよ、あまり時間はないってことですね。だとしたら、ここで手をこまねいていてもどうしようもありません。やはり、俺たちが裏の闘技場コロシアムに乗り込んでいってキキョウを助けるしかない」

「でも、私たちが正面から乗り込んでもダメなんですよね?」

 俺とエミリアは表情を曇らせた。

 どうすれば一番良い方法でキキョウを助けられる?

 などと考えていると、コジローは「出場してみるか?」と言った。

 俺はハッとしてコジローに顔を向ける。

「お前さんら自身が闇試合ダーク・バトルに参加してみるかい?」

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