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第4章 獣王国編2

第110話 魔法剣技評価会

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以前リアム殿の”趣味”で手合せを、”見せっこ”にしようと言う案が教祖直系の聖女達に阻まれていたのだが、正式に聖魔法王国監修の魔法剣技評価会(略して魔剣会)となり、最初は”婿達”の特技を見せ合う場としてようやく行われる事になった。

これは、魔法と魔法陣や剣技などの研究成果を審査員の聖女達にみせて優劣を付ける内容だ。
魔法や技の披露なので戦いでは無く個々の技能、効果、威力などを見比べたり、新たな魔法や技に対して報奨を与える制度になった。

まぁ結果的には翌年からは”婿達”だけでは無く、王国内からの応募で誰でも参加できるようになる。

そして当たり前の様にその翌年からは聖魔法王国、獣王国、エルフ国の監修の元、三ヶ国大会が行われる事となる。

規模が大きくなるに連れて報奨も高額な物となって行った。

皆の目標は剣技賞、魔法賞、技能賞(武器開発、戦闘技術、その他)に参加登録して優勝を競い合うのだ。

また、秘奥義などの代々秘匿されていた技や技能の公開で称賛に値する者は、奥義名を隠し特別種族賞として特級種族の名誉が与えられる事となった。

国内でのささやかな特権で、軍事的な意味合いが多分に係わって来るからだ。



取りあえず第一回目となる会に出席するエルヴィーノだ。
中央教会に集合してから転移した場所は王都から北西の離島にある田舎町だった。
この場所には既に関係者が前乗りし準備を整えていたのだ。

まぁそのほとんどが龍戦隊だが、やはり233人のブエロ・マシルベーゴォ(飛行魔導具)で荷物や人を転移魔法陣で運べるのが一番の利点だな。
連結から散開して群体に変えたりも出来るし。
これが大きいだけの船との違いだ。
記念すべき第一回目となる演目は次の通りだ。

1番目、エルヴィーノのオスクロ・マヒア(暗黒魔法)を使った魔法のお披露目。
ネグロ・グロボ(黒玉)と、ネグロ・ラミナ(黒刃)(ネグロ・タブラ(黒板)にロタシオン(回転魔法)を付与させて飛ばす)の二つを予定。
巨石と使い古しの鎧や剣を用意してある。

2番目、リアム殿の炎の剣舞。
エスパーダ・リャーマ(炎の剣)を両手に持ち舞い踊るらしい。

3番目、聖女達へ龍戦隊のお披露目。
カランバノ王国での”奥義神龍変化”(氷龍)の実績は報告されており、今回は”聖白龍”の変化を予定している。



場所は広大な草原と荒地が見渡せる場所に10個の巨石と使い古しの鎧や剣が立てかけてある。
簡易小屋で日差しと風を防いで紅茶を飲みながら一族と関係者が見守っていた。

「これからお見せするのはストーンゴーレムを倒したネグロ・グロボ(黒玉)と、棘の森を切り抜けた時に使ったネグロ・ラミナ(黒刃)です」

オスクロ・マヒア(暗黒魔法)など見た事の無い全員が興味津々に見ている中(そんなに面白いモノでも無いと思うが・・・)と密かに思いながら10cm程のネグロ・グロボを手の平に作り出しエネロのテーブルの上に置いた。

「こっこれは、どうしろと言うのじゃ?」
「特に意味は無いですが触れますので」
説明すると全員が回して触りだす。

「重さを感じないのう」
「硬いですわ」
「これをどうするのですか?」
アブリルが興味を示したので説明した。

「ではあの岩に向って投げてください」
一番近くにある岩に投げつけるが、女性の投げ方では手前に落ちそうになるが、ヒュンッとスピードを増し岩の上部を粉々にして手元に戻ってきた。

「「「おおおっ」」」

「それは国王が動かしているのか?」
マルソ殿が聞いて来たので更に説明する。

「触っても特に害は有りませんが術者の意思に従います。更に形の変形も出来ます」
三角錐や細長くしたり殺傷性の高い形に変えるのも可能だが、面倒だからいつもは●にしていると話すと「それ1つでゴーレムを破壊したのか?」
鋭い指摘が入る。

「戦況に応じてですが、かなり早く飛ばせれるので俺の手の上と、一番遠くの岩を見てください」
右手を上げてその上には●(ネグロ・グロボ)が有り(行け)と念じると、一瞬消えたと同時に岩が砕け、次の瞬間には手の上に有った。

「「「おおおお!」」」

「うーむ速さと威力は凄いが、戦場では多数の敵と戦う時はどうだろう?」

まだ値踏みするかのようにマルソ殿が言って来る。

「まぁ”戦況”によりますが、こんな事も出来ますよ」

そう言って、両手を広げるとポポポポッ●●●●●●●●●●●●●●●とネグロ・グロボを100個出した。
目の前の空間に黒い玉が沢山現れた光景を見てビックリしたマルソ殿は立ち上がり後退あとずさりした。

「「「うおおおおお!」」」
「分かった! 分かったぞ国王!」

ニッコリと微笑んで全てのネグロ・グロボを消した。
「実際には沢山出す事は有りません。全てを制御するのが出来ないからです。まぁ敵を殲滅する時ですかねぇ」

何気に恐ろしい事を言いながら説明を進めた。
「では、次に参ります。これは誰も通り抜けれなかった棘の森を越える時に使った魔法でネグロ・ラミナ(黒刃)です。この魔法は二つの魔法を使っています。1つはネグロ・タブラ(黒板)で大きさや厚みを自由に替えられます。そしてロタシオン(回転魔法)を数回掛けます。そのまま飛ばしても良いですし、エスクード(盾)の様に自身の周りに回転させても有効ですので実際にお見せします」

まずは20cm×150cmで厚みは1cmだ。テーブルの上に置き触ってもらうと先ほどと同じような感想だった。

「では、ロタシオン30」と言うと手元のネグロ・ラミナが高速回転を始めた。

「えーこれから岩や甲冑などを切り裂きます」と宣言し、投げる様に腕を動かして飛ばす。

ヒュンッと飛んでいき岩は勿論、動かない様に杭に縛り付けてあった鎧や剣もあっけなく切られて戻ってくる。

「国王よ、それは何でも切れるのか?」

リアム殿が舞の準備が終わり聞いて来たので、龍戦隊リーダーのバスティアンを呼んで切りかかってこいと命令した。
困惑しながら命令に従い剣を振り下ろすより早くネグロ・ラミナがエルヴィーノの目の前で壁になるように回転している。

カンッ! キンッ! と甲高い音をさせて剣が弾かれる音がする。
高速回転するネグロ・ラミナは半透明に見えていて何度切りつけても弾かれていた。

「国王よ、それでは後ろががら空きだぞ?」
もっともなご意見に補足した。
「棘の森を攻略したのは、この発展系です」

「同じネグロ・ラミナを三つ出して、四つを自分の周りを高速回転させると」
「おおおおおっ」
「これで上にもネグロ・ラミナで蓋をすれば、聞こえますか?」
どうやら周りに声が届いていないらしいので、全て解除して説明した。

「あの状態で外敵を一切寄せ付けず森を抜けました」
「なるほど、身を守りながら敵を撃つのだな?!」
「流石はリアム殿!」
いち早く理解を示した義父にオベッカを使う。

「以上でオスクロ・マヒアの説明を終わります」
パチパチパチと初めて見たオスクロ・マヒアに聖女達には新鮮だったのだろう。
ロリが自慢げな顔をしていた。

「次は、久しぶりにリアム殿の剣舞が見れるな」
アヴリルとマルソが楽しそうにしていた。
場所は魔法実地場所と簡易小屋の裏側に音楽隊を待たせてあった。
特設台も有り見せる気十分のリアムだ。

「では参る」

軽やかな音楽に合わせて、流れるように動き、たまに飛び跳ねて炎の剣からフエゴ・グロボ(火の玉)を誰も居ない方向に放ったりと、エルヴィーノも含め全員が見とれていた。
時間にしてどの位だろう。
全員から喝采の拍手が降り注ぎ、終わってみたらもっと見ていたいと思うような素晴らしい舞だった。

リアムが近づいて来て感想を聞いて来た。
「どうだったか?」
「ハイ、素晴らしい舞でした。”剣舞はどれだけ優雅に見せるかで技や腕力では無い”と言われた意味が分かりました」
「国王もきっと出来るだろう」
まずいと思いながら用意した対策を話す。

「リアム殿のエスパーダ・リャーマ(炎の剣)にはフォーレのエスパーダ・ヒエロ(氷の剣)との演舞の方がより一層リアム殿を引き立たせますよ。俺はオスクロ・エスパーダ(暗黒剣)しか使えないですから!」
「おおっそうか!」
「はい、フォーレには例の件で貸があるので、演舞であれば問題無いと思います」

うれしそうなリアム。
仕方ないのでフォーレを犠牲にして自分は目立たない様にしよう。
(でも元国王に演舞の相手に指名されると異性が寄って来るかな? まっいいか。フォーレも喜ぶだろう)



最後は実戦経験済の龍戦隊だ。
ただし今回のお披露目は、エルヴィーノ達王族は乗らず龍戦隊だけで隊列飛行、連結合体、奥義神龍変化(聖白龍、咆哮付)、岩の残骸をフィロ・ディオス(神の刃)の全体攻撃で粉砕、変化解除、散開、隊列飛行、着地の順だ。

「改めて皆さんに紹介します。龍戦隊233人のリーダーでバスティアンです」

裾で待機していた軽装の甲冑を纏った戦士が挨拶した。
「元騎士団に所属しておりましたバスティアンです」

もともと騎士団はマルソ殿の時代に軍隊化して行ったが本格的になったのはリアム殿の指導が入ってからだ。
そして魔力も持ち合わせている者が式典の警備について、その中でも選りすぐりを集めたのが龍戦隊だ。

その隊長バスティアンはリアム殿が太鼓判を押す程の者だ。
「今後は龍戦隊として、王国の為に役立つよう訓練して参ります」
「ではバスティアンよ、我らに雄姿を見せてくれ」

リアム殿が言うとバスティアンが号令を叫ぶ。
「ハッ龍戦隊出動!」
大きな声で叫び233人が一斉にブエロ・マシルベーゴォへ駆けて行った。

次々と垂直に上空へ飛び立ち、隊列飛行で旋回し、連結合体した。
「お母様! 龍の形になりましたよ」
ロリが嬉しそうに見ていると聖女が全員そうだった。

そして奥義神龍変化(聖白龍)を発動させる。

「おおおおっ! 聖白龍様じゃ!」
教祖エネロが叫ぶ。

そして咆哮が響き(フィドキアのだけど)皆感動して”教会の儀式”をしようとするが「待ってください! あれは偽物ですから! 皆さんの神様とは違います!」

「しかし国王よ、聖女の信仰は熱いぞ本物では無いと教えねばならん」
マルソ殿が援護してくれた。

「偽物に儀式をしたら、本物に申し訳ないですよ!」
「そうですわ、お母様」

マルソがアヴリルを説き伏せて、教祖エネロに進言した。
「ウ~ム。分かったぞ、アヴリルや」

自分の考えた偽物に信仰の儀式をされるなどたまった物じゃない。

「では、続いてはフィロ・ディオス(神の刃)の全体攻撃で岩や甲冑の残骸を粉々にします」

そう言って上空に合図を送ると、右上空から滑降しそこそこの高さから、光輝く剣が大量に聖白龍の身体から振りだして、岩の残骸と甲冑を粉々に切り裂いく光景を目の当たりにし、身を乗り出して見ていた王家一同。
変化の状態もまずまずの出来で、龍を見た事の無い者が見れば本物だと思うくらいだ。

身体全体から出たフィロ・ディオスも”奇跡的な”美しさだった。
聖女や一同が喜ぶ中で釘を刺す事にした。

「教祖様、奥義神龍変化は、この国の極秘扱いにした方が良いと思いますが?」

終始ニコヤカだった一同がそれぞれに考えている。

「分かったぞ、国王よ。本来は見せびらかしたい所じゃが、あれほどの兵器を持っていると他国からの密偵に更に気を付けねばならんのぉ」

うなずく一同。

「でもお母様、本当に素晴らしかったですわ」
プリマベラがアヴリルに言うとまた盛り上がりだした。

無事に変化解除し、散開、隊列飛行と、着地して全員が王族の前に並んだ。

「皆の者、本当に素晴らしかったぞ。お前たちの訓練がいつか王国の為に役立つ時が来る。それまで日々の努力を怠るでないぞ」

いがいにも大司教フェブレロの言葉だった。

そして、結果発表だ。
まぁ大体分かっているが2人と一組だけだ。
剣技賞は、炎の舞で見る者を魅了する美しさに与えられた。
魔法賞は、あらゆる物を切り裂くネグロ・ラミナだ。
技能賞は、龍戦隊233人でブエロ・マシルベーゴォの”連結と散開”となり、”奥義”は秘密にされた。
これは教祖エネロから、事の重大さを説明され外部に漏らさない様に厳重な情報操作がなされた。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


魔剣会が終わり、ロリとクララを連れて監視室に転移した。
お土産は事前に調達済みだ。

「ラソン様ぁ~お邪魔しまぁ~す」
ロリが声を掛けで居間に来ると足が止まっていた。
どうやら知らない”人”が居て驚いたのだろう。

「ロリ、紹介するよ。三人目の龍人でカマラダだ」
「カマラダ! 俺の嫁さんでロリと娘のクララだ」
「初めまして。エルヴィーノの妻でロリ・ヴァネッサ・シャイニングと申します」
「初めましてサンクタ・フェミナ。龍人のカマラダです」
ロリは驚いた。龍人に名前では無くてサンクタ・フェミナと呼ばれたからだ。

「そう驚かなくて良いのでは? サンクタ・フェミナは特別な名前ですからね。我らに最も近付いた女性ですよ」
「本当ですか?!」
ロリはラソンの顔を見ると、うなずいていた。

「じゃ、私達は向こうで話してくるわ」
ロリとクララを連れてラソンの部屋に向った。

「ロリ、ちょっと抱かせてくれるかしら?」
「ハイ、どうぞ」
クララを抱っこするラソン。

「ロリィ、棘城の事は聞いているわよね? 棘城と城下町に監視室を作るのだけど、私の部屋も作りたいのよ。それでね、ロリに手伝ってほしいの」
「ハイ、何でもおっしゃってください」
「他の人(龍人)達は知らないけど、私は可愛い部屋にしたいわ」
「ラソン様。私も今、城と城下町に自分の部屋を作る計画をしていますの。宜しければ一緒に考えませんか?」
「それよ! ロリの部屋の隣に作るわ。そうすれば便利な事も有るしね」

ラソンの便利な事とは(サンクタ・フェミナ付きの召使いであれば、誰も怪しまないし自由に街に出入り出来るから、お菓子も串も自由に買いに行く事が出来る)と言う発想だ。

ラソンの意識は別次元で串を食べて居たがロリに呼び戻される。

「ラソン様、部屋の場所はまだ決まっていないのですが、内装や家具を決めませんか? それと部屋は隣でも構いませんが、私の部屋にはいろんな人が出入りするので入口は別にしませんか? もしもラソン様が見られたら大変な事に成りますし」
「大丈夫よ、ロリ。人と同じ服を着ていれば分からないわ。それにサンクタ・フェミナ付きの者だと言えば誰も疑わないわよ」
「ダメですダメです。そんな事許されません」
「あら、良いじゃない。聖女ならばいざ知らず、獣人達には分からないわよ。そうだわ! 魔法で姿形を変えるのはどうでしょう? 男性か子供はどうかしら」
「では子供でお願いします」
すると成人するかしないかの15歳位の女の子に変化した。

「可愛い! ラソン様」
「ロリィこの姿の時は、様は要らないわ」
「ダメですよ、ラソン様はラソン様ですから」
「良く聴いて、私はこの姿でロリと街に買い物に行きたいの。サンクタ・フェミナが小さな子を様付けして呼ぶと怪しまれるわ」
「でも・・・もしも知られたら私が咎められます」
「あら、誰に?」
「お母様や教祖様です」
「その時は私が説明するから大丈夫よ」
「分かりました。では教会の侍女として教会の衣装も来てください。そして何処に行くにも私に連絡して下さい」
「分かったわロリ。心配性ねぇ」

しばらくしてラソンがエルヴィーノに要望を言ってきた。
ロリに転移の魔法を覚えさせるか、転移魔法陣でロリ1人でもこの場所に来られるようにするかだ。
それは考える必要も無く後者だ。
アレに転移魔法を覚えさせるのは自分の首を絞めるような物だからな。
後日ロリの部屋に転移魔法陣を設置してあげた。













あとがき
どうやら毎年やるそうだ。
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