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第二章 ~『クラス分けと下剋上』~
しおりを挟む学園長の挨拶が終わり、ケインによる学内施設の説明が始まる。寮生活のルールや、校内での禁止事項と続く。
「君たちにはこれから三つのクラスに分かれてもらうよ。どのクラスに配属されるかは名簿を確認してね」
ケインの合図に従って、教師たちが名簿を配る。早速、自分の名前がどこにあるかを探す。
「私はAクラスね。ティアラは?」
「私もAクラスだ」
「ティアラと一緒になれるなんて幸先がいいわね」
友達と一緒のクラスになれた安心感で心が和らぐ。他にも知り合いはいないかと、名簿を見つめていると、ティアラの小さなため息が届いた。
「どうかしたの?」
「クラス名簿にレイン様がいたのだ」
「あ、本当ね」
婚約を破棄された女と破棄した女。そのどちらとも因果を持つレインが同じクラスにいることに気まずい空気が流れる。
(話題を変えないと!)
名簿に視線を巡らせると、クラス名の傍に恩師の名前が記されていることに気づく。
「Aクラスの担任はケイン先生よ!」
「大賢者が担任教師をしてくれるとは、さすが王立魔法学園だな」
大賢者は世界で七人しかいない魔法使いの頂点だ。その一翼を担うケインが指導してくれる贅沢な教育環境に感謝する。
「ケイン先生と一緒なら授業もきっと楽しいわね」
「気になっていたのだが、君は先生と親しいのか?」
「え⁉」
「先ほども『念話』の魔法で話をしていたようだしな」
「気づいていたの⁉」
「私も『念話』は得意魔法だからな。他の生徒は気づいていないと思う」
「それなら安心ね。先生には立場があるから、変な風評が流れたら困るもの」
生徒と教師が親密な関係だと邪推する者も出てくる。親密なことを大々的に話したくはなかった。
「それで二人はどのような関係なのだ?」
「変な関係じゃないのよ。ただ助手として働かせてもらっているだけで……」
「大賢者の助手を! やはり成績優秀者は違うな!」
「ただの雑用係よ。でもケイン先生の役に立てることにやりがいを感じているわ」
聖女を目指すマリアは人を救うことに生き甲斐を感じている。それは傷を治すばかりではない。尊敬している人の仕事を手助けすることもまた聖女の道に通じていた。
「クラス分けの結果は確認できたね。察しの良い人は気づいていると思うけど、Aクラスには成績優秀者が割り当てられている」
ケインの一言で場の雰囲気が変わる。BとCのクラスに配属された生徒たちは劣等生の烙印を押されたようなものだからだ。
「でもBクラス、Cクラスの生徒も落胆しないで欲しい。きちんと挽回のチャンスは用意してある。試験の結果に応じて、Aクラスへ上がる道も用意してあるから、下剋上を目指して精進して欲しい」
人は絶望に救いの糸が垂れてくるだけで前向きに生きられる。BとCクラスの生徒たちは闘志の炎をメラメラと燃やす。
「BとCクラスの生徒たちに負けてられないな」
「ん? でもティアラはAクラスじゃない」
「Aクラスでも序列はある。私は入学試験の成績が二位だったからな。友として好敵手として、君を超える魔法使いを目指してみせる」
「ふふ、私も負けないから」
友達として互いに切磋琢磨していこうと約束する。こうしてマリアは最高の入学式を終えたのだった。
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