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side 俺⑧

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エルクが勝てない相手がいる戦いに挑もうとしてしまったので、ロックを使い、エルクに魔力の制御が利かなくなる薬を渡す。
これを飲むことで、魔力が正常に体の中を循環することが出来なくなるはずだ。
制御の利かないこの状態は、暴走している状態に近いと思われる。
もしかしたら俺が出てこられるかもしれない。

全ての準備が整った後にエルクに飲ませて、体を乗り換える予定だったが、緊急時だから仕方ない。

思っていた通り、エルクは赤い龍に苦戦し、白い龍に殺されそうになる。
ロックと一緒に逃げるという判断をすればいいのに……。

白い龍が2発目のブレスを吐く前に、俺は薬を飲むように念を送り、エルクが薬を飲む。

狙い通り、エルクの魔力は暴走状態になったようで、俺が表に出て来る。

俺は迫ってきていたブレスを吸収し、放出のスキルで相手に送り返す。
白い龍は避けたが、エルクを死ぬ寸前まで追い込んだことを許しはしない。
俺は白い龍の首を風魔法で切り落とす。

門の近くで生きているのは俺だけだ。
残っていた者は皆、白い龍の一撃目のブレスで命を落とした。
魔物から人々を助ける為に死力を尽くしたこいつらは立派だ。
だから生き返らせてやろう。

生き返らせた後は眠らせておく。

魔物の処理だが、ただ殺すのではもったいないな。
俺は空間を操り、ここからルインダンジョンまでを世界から隔絶する。
外からは光を失って暗くなったようにでも演出しておくか。

俺は魔物を殺すのではなく、亜空間に吸収して閉じ込めることにする。
何かのタイミングで使えるかもしれない。

この亜空間は生き物も入るアイテムボックスのようなもので、俺が普段閉じ込められているあの空間に近い。

それから、脅威が無くなったと一目でわかるように、ダンジョンも消滅させておく。

処理が終わったところで空間の隔絶を解き、光を入れる。

やることも終わったし、今はまだ力を蓄える時なので、エルクに体を返そうかと思っていると、空に門が現れる。

他の者が騒いでいないことを考えると俺にしか見えていないようだ。
門が開き、門の先に忌まわしき神の姿が見える。

今すぐにでも殴り飛ばしに行きたいが、今行っても殺されるだけだろう。
行くにしても、エルクの体から出てからにするべきだ。

だが、せっかくのチャンスを棒に振るわけにもいかない。
なので、細工をして白い龍の頭を門の先に飛ばす。
お前もこうしてやるとの意味も込めて。

門が閉じたのを確認し、神の居場所が認識出来なくなったところで、仕掛けが意味を成しているかを確認する。

あの龍の頭には俺の魔力の一部を含ませておいた。
意識を集中させれば、それがどこにあるか調べることは可能だ。
それが、神のいる神界?にも通用するのか分からず、賭けではあったが、俺はなんとか自身の魔力を捉えることに成功する。

神界は異相にあるようで、同じ世界にはないようだが、空間の場所さえ分かれば、対処の仕様はあるだろう。

何の目的があったのかは知らないが、俺の目の届くところに姿を現したことを後悔するといい。

魔物の対処は終わったが、せっかく自由に動けるのだから、今のうちにやれることをやっておくことにするか。

俺は中等部にいる学院長の前へと転移する。

「中等部は守り切ったみたいだが、初等部は使い物にならないほどに壊れてたぞ?」

「あなたのような存在と同じにしないで下さい。自身のいる場所を守るので精一杯だ」
学院長もまだまだだな。

「仕方ないから直しておいてやった。感謝しろ」

「……感謝します。それで、何の用ですか?」

「リュートに会いに行くことにした。俺が行くと飛ばしておいてくれ。勘違いされて攻撃でもされると面倒だ」

「わかりました。リュート様…………これから1人の子供がリュート様のところに行きます。以前お話しした子供ですが、中身は違います。…………………はい。そのように」
学院長の声しか聞こえないが、相手と会話は成立しているようだ。

「問題なさそうだな」

「はい。リュート様から、瘴気が充満しているので気を付けて欲しいとのことです」

「自身の周りに結界を張っておけば問題ないだろう。それから、学院長には朗報ではないが、一つ情報だ。さっき神界との門が開いたが、アリエラの魂は感知されなかった。俺が感知出来なかっただけかもしれないが、神界にアリエラはいなさそうだ」

「情報感謝します」

俺は頭を下げる学院長を置いて、リュートの元へと転移する。

「お前がリュートか。けったいな姿だな」

「君がルーカスの言っていた人だね。僕は龍斗。そちらの方も紹介してもらってもいいかな?」
ルフの存在に気づくか。

「コイツは悪魔のルフだ。必要だから連れてきただけだ。今は気にするな」

「僕を殺してくれる為に来てくれたってことでいいのかな?」

「俺の頼みを聞いてくれたら死なせてやる。死にたかったら俺の役に立て」

「僕に出来ることなら」

「お前は自分の力を他者に移動出来ると聞いているが間違い無いか?」

「うん。そうだよ」

「不死のスキルはなんで移動出来ないんだ?」

「不死を移動させたら僕が死ぬからだよ。他にもあるかもしれないけど、不死を移動させようとすると、発動を拒否されるんだ」

「それは残念だな。そんな姿になっても力を行使することは出来るんだろ?」

「ほとんどの力はね」

「お前はどうしてそんな姿になって平常心を保ってられる?普通なら発狂してるだろ?」

「心の闇も勇者の力が勝手に浄化するんだよ。それから、こうやって誰かと連絡をとる時以外はスリープ状態にしている」

「そうか。俺は神を超える力を手に入れるつもりだ。だいぶ強くなったが、まだ神を相手にするには心許ない。お前が協力すれば、俺はさらに大きな力を得るだろう。契約を結び、毎日生命力を魔力に変換し続けろ。どれだけ生命力を使おうと死なないお前は都合がいい」

「そうすれば死なせてくれるのかい?」

「俺が今考えている方法で、お前を死なせられるかはわからないが、恩には恩で返すつもりだ。死にたいなら俺に恩を売れ」
リュートを死なせる方法は2つ考えている。
俺の予想ではどちらでも死なせることは出来るだろう。

「わかったよ」
俺はルフにリュートと契約を結ばせる。
これで契約を切って魂の繋がりを切らない限り、俺とルフも不死のスキルで死ねなくなっただろう。

転移でダンジョンから出た俺は、エレナのいる場所の上空でエルクの乱れた魔力をまた微調整し、自身の意識を強制的に切る。

これだけやっても俺を止めに来ないということは、神は俺に手を出せない理由でもあるのだろう。
そっちにどんな事情があるかは知らないが、俺は受けた仕打ちを忘れてやったりはしない。
せいぜい首を洗って待っているといい
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