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番外 没案

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没にした展開を書いてみた、おまけ的な話です。
本編ではないので、飛ばしても問題ありません。



神の世界にて、あの世界が作り変えられる原因が他の世界からやってくる人がいないことであると知った僕は、なんとか神様達を説得して世界の作り変えを待ってもらう。

すぐに行動に移すために、フランちゃんが生き返るように遅延魔法で蘇生魔法を掛けた後殺し、最高神様からゲームのクリアを宣言してもらった。

神の世界で確認した通り、クリア後も僕は向こうの世界に行くことが出来、ストレージはどちらの世界でも使え、地球で入れた物をあっちの世界で取り出すことも可能だった。

あっちの世界での力が地球でも使えるようになったということを実際に試して確認した後、あっちの世界に日本の住人を送る為の準備にとりかかる。

まずは実験の為に犯罪者を捕まえることにする。

誰かいい相手はいないかなとネットニュースを見ていると、子供2人を人質に取った立てこもり事件がちょうど発生していた。
運がいい。

場所も電車を使えばさほど時間を掛けずに行けるところだ。


電車を乗り継いで現場に行くと、立てこもりが発生している学習塾の周りを警察官が包囲しており、そこから少し離れた場所に報道者らしき人と野次馬が集まっている。

目立ちたくはないので、時間を止めて学習塾に入り、犯人と人質になっている子供を探す。

「やあ、悪いけど実験に付き合ってもらうよ」
教室に口を布で塞がれた状態で椅子に縛られた男の子と女の子の側で包丁を手にしたおじさんがいたので、時間を動かして話しかける。

「誰だ!ふざけた格好をしやがって……」
おじさんは日曜の朝に放送してそうなヒーローの姿をした僕に包丁を向ける。

せっかく人質がいるのに僕の方に武器を向けるとかばかなのかな?

「残念、悪党に名乗る名はないんだ。一旦眠っててくれる?」
おじさんの懐に入り、腹を殴って気絶させる。
内臓が潰れたような感触があり、口から汚い物を噴き出したけど、動かなくなったしいいだろう。

「このおじさんに少し用があるから、このまま騒がずに待っててね」
人質の子供達に目隠しを付けて、おじさんを使っての実験が終わるまで待っていてもらう。


「お待たせ。もう逃げていいよ」
おじさんが実験体となってくれたことで知りたいことは知れたので、おじさんを縛ってから子供達の縄を解き逃す。

「……ありがとうございました」
女の子からは迷いながらもお礼を言われた。


「斉藤君、今テレビでやってるニュースに心当たりはある?」
自宅にファストトラベルして準備を進めていると、委員長から電話が掛かってきて、出るとニュースのことを聞かれたのでテレビを点ける。

『たった今、人質となっていた子供達が建物から出てきました。詳しいことはわかっておりませんが、ヒーローが助けに来たと保護された少年が口にしているようです』
テレビでは大体の局で緊急として子供が無事保護されたことを放送していた。

「無事救助されたんだね」

「ヒーローって斉藤君のことじゃないの?あれだけ警察に囲まれてたら、ヒーローだろうと気付かれずに入ることは出来ないわよね?報道の感じだと、犯人以外の人影はなかったみたいだし」

「まあ、人助けだよ。こっちの世界でも力が使えるままだから、試し撃ちも兼ねてね」

「程々にね」

「気をつけるよ。委員長に頼みがあるんだけど会えない?会えるなら、近くのファミレスに来てくれない?」

「急用はないから大丈夫よ。これから?」

「うん、これから」

「わかったわ。支度したら向かうから、先に入ってて」

「ありがとう」


ファミレスで委員長を隣の席に座らせる。

「スマートフォン用のアプリを作りたくて、この本の通りにやるとある程度の形にはなるらしいんだけど、内容が難しすぎてね……。手伝ってくれない?」
ノートパソコンを委員長からも見やすい位置に置き、プログラミング用の参考書を見せる。

「私もプログラミングなんて出来ないわよ」

「そう言いつつも、その本を読めば出来るんじゃない?委員長なら出来ると僕は勝手に期待しているから、無理なら無理でいいからやってみてくれない?」

「やってみるくらいはいいけど、期待しないでよ。それで、どんなアプリを作りたいの?」

「簡単なアンケートに答えていくだけのアプリ。アプリのタイトルは『異世界に行こう!』でいいや。アカウントを作らないといけないようにしてもらって、このアンケートを答えたことで異世界に行くことが叶い、今住んでいる世界で行方不明となっても一切の責任は負いませんみたいな規約も付けてくれる?」

カタカタカタカタ…………

「こんな感じ?アンケートの内容は適当だけどね。後、規約に同意させても、罪に問われないわけではないと思うわよ」
委員長が初めてのはずなのに、手慣れた手付きでパソコンを操作してテスト版のアプリを作る。

「……すごいね」

「書いてあることをやっただけよ」

「これをスマホで出来るの?」

「もう少し手を加えれば出来るけど、個人情報を扱うわけだから、このままだと防御面が心配ね。何かの拍子に乗っ取られるかもしれない。そこはプロの人に任せた方がいいと思うわ」

「そっか……。あんまり事情を知らない人を関わらせたくないんだけど、委員長がそう言うなら仕方ないかな。…………パッと見ただけでこれだけのものが出来たんだし、もう少し勉強したらなんとかなったりしない?」

「無理よ」

「そっか……、それじゃあ頼む人を探すのを手伝ってもらってもいい?腕が良くて口が固そうな人」

「そのくらいはいいわよ。でも、こうやって手を貸している私も同罪ね。斉藤君の手であっちの世界に人を連れていくのはわかるけど、どうやってやるかは教えてくれないの?」

「そうだね。委員長の為に言うけど、聞かない方がいいよ」

「……わかったわ。何をするつもりなのか想像がついてしまったけど、見て見ぬふりをさせてもらうわ」
ついてしまったと言っているけど、前から僕がやろうとしていることには予想がついていたと思う。


委員長と一緒にプログラマーを探し、報酬を払ってアプリを作成してもらい、アンケートと利用規約の内容だけ変えて運用を始めて10日、委員長の手腕により、アンケートに答えると異世界に行ける可能性が表示されるだけのアプリは、少しだけSNS上で話題になっていた。

「滝本修二さんですね?おめでとうございます」
僕はアプリのアカウントから手に入れた情報を元に、滝本修二という人のアパートを訪ねる。
身分証明書までアカウントの登録に必要とした為、偽造されていたり、他人の証明書を使っていない限りは登録された本人のところに辿り着ける。

チャイムを押されてチェーンロックを外さないまま扉を開けた滝本さんは、急に祝福の言葉を発した僕をジロッと見る。
訪問販売を警戒しているのかもしれない。

「何の用だ?」

「異世界に行こう!運営の者です。数あるアカウントの中から栄えある1人目に選ばれました。おめでとうございます」

「…………ああ、確かにそんなアプリをインストールして適当にアンケートに答えた気がするわ。それで、その運営者さんが何の用だ?」

「言葉の通りですよ。これから滝本さんには異世界に行ってもらいます」

「は?何言ってるんだよ。あんなの冗談に決まってるだろ?ふざけてるなら帰ってくれるか?」

「あ、冗談とかこっちには関係ないので。とりあえず必要なことなんで死んでください」
ストレージから取り出したナイフで滝本さんの心臓を突き刺し、絶命させる。

「ちゃんと規約とアンケートの冒頭にも赤字の太字でアンケートには正直に答えるように書いておいたのにな」
僕は呟きながら滝本さんの死体をストレージに仕舞ってから、向こうの世界へと移動する。

「反魂!……ヒール!」
アクアラスの近くの街道で滝本さんを蘇生させ、傷を回復させる。

「う……てめえ何てことしやがる!」
少し間があってから目を覚ました滝本さんは、先程刺された左胸をぺたぺたと触りながら激昂する。

「お望みの異世界に着きました。この文字が読めますか?」
滝本さんにこっちの言語で書かれた紙を見せる。
紙には『ようこそ!異世界へ』と書かれている。

「そんなこと望んでねえんだよ!」

「あなたの答えたアンケートには異世界に行きたい!地球に未練はない!今すぐにでも旅立ちたい!と答えがありました。これはあなたが選んだ未来です。それでは異世界ライフを楽しんでください」

「ちょっ、ま……」

滝本さんを残して日本へと戻り、次の人のところに向かう。

「大島健吾さんですね?おめでとうございます」
高そうなマンションの一室のドアをノックして開けてもらい、先程と同じように確認をする。

「はい……どちら様ですか?」
滝本さんと同様、大島さんもチェーンは外さないままドアを開ける。
警戒しているのは、エントランスでインターホンを鳴らさず、ロックも解除していないのにドアをノックされたからだろう。

城に日々侵入している僕にとって、高級マンションに忍び込むことくらい朝飯前だ。

「異世界に行こう!運営の者です。数あるアカウントの中からあなたは選ばれました」

「…………マジか!俺配信者やってて、龍虎って知らないか?」

「知らないですね。興味ないです」

「……登録者100万超えなんだけどな。カメラ回してもいいか?」

「……別に構いませんが、生配信はやめてください」

「以前紹介した異世界に行こう!って頭のいかれたアプリの運営者が来てくれたぜ!なんと俺が選ばれたそうだ。何に選ばれたのか気になるな」
カメラを回し始め、大島さんのテンションが配信用に切り替わる。

「何に選ばれたって、異世界に行く人にですよ。それじゃあ異世界に行くために死んでください」

「え……ちょ、ちょちょちょ待て」
ストレージからナイフを取り出すと、大島さんがカメラを構えたまま後退りする。
さすがプロと言いたいが、逃げる時にはちゃんと逃げないと、向こうではすぐに命を落とすことになりそうで心配だ。

待てと言われて待つことはせず、大島さんにも心臓にナイフを突き立てて息の根を止める。

ちゃんとカメラもストレージに回収して、大島さんはブーケルの近くで生き返らせる。
滝本さんで異世界言語のスキルは取得させてもらえることは確認出来ているので、大島さんが目を覚ますのを待たずに、僕は自室に帰る。

「無事最初の2人が異世界に旅立ったよ」
色々と手伝ってもらった委員長に電話で報告する。

「……お疲れ様。何か問題はあった?」

「予想通り、僕が向こうに送っても異世界言語のスキルは貰えていたし、大きな問題はないかな。アンケートに本当のことを書いてないのが問題なくらいだね」

「それは大きな問題よね?」

「本心がどうかは知らないけど、僕は異世界に行きたい!っていう望みを叶えただけだから。後からぐちぐち言われても知らないね。僕達みたいに何も心当たりもない人が行くことになってないんだから、小さな問題だよ。これからも定期的に人を向こうに送るから、何か問題があったらサポートよろしくね」

「……わかったわ。一度足を踏み入れているのだから、最後まで責任はもってやるわ」



ということで、没にした展開の一部始終です。

没にした理由は、人を殺してストレージに仕舞い、異世界に持っていくというやり方が道徳的にどうかという話…………ではなく、クオンの性格として、元の世界に帰ってから人を定期的に送るという仕事のようなことをするのはなんか違うなと思ったからです。

それと、クオンが死んだ後に異世界に送られる人がいなくなるという問題もあります。
それはゲームのキャラのようになったから歳を取らないという案でいこうかなと思ってましたが、それも違うなと……。


次回からまた本編に戻ります。
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