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逃亡開始
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こちらの身分を明かさないまま地下通路を抜けて、森へと出る。
途中からフランちゃんは僕が背負っている。
子供にこの距離は辛いだろうから仕方ない。
ただ、背負われたまま寝てしまうのはどうなんだ?
知らないオッサンの背中でよく寝れるな。
「これからどうするか何か考えてる?」
委員長に聞かれる。
「王都には戻らずに近くの街までは頑張って歩いて、そこで馬車に乗るのがいいかな。街道沿いを歩いていれば馬車が通るかもしれないし、乗せてくれれば楽ができるけど。宿屋に荷物は置きっぱなしだよね?僕は野営しているから取りに行ってきていいよ」
「その子を連れて戻るのは危険だよね。出来るだけ早く戻ってくるね」
「いや、戻るのは朝になってからでいいよ。ちゃんと朝にチェックアウトしないと怪しまれるかもしれないからね」
委員長を見送った後、野営の準備をする。
準備といっても、組み立て済みのテントをストレージから出して、その中にベッドを置くだけだ。
ベッドにフランちゃんを寝かせて、僕はテントの外でうたた寝をしながら朝になるのを待つ。
「ひゃっ!あ、あの、お兄さんは誰ですか?」
目を開けて振り向くと、フランちゃんが起きてきていた。
自分の手を見て寝ている間に幻影の効果が切れてたことを確認した僕は、寝起きで頭の働いていないまま考える。
「僕はクオン。変装の達人だよ。こっちが本当の姿ね」
一度さっきまでのオッサンの姿になってから、すぐに幻影を消す。
「助けてくれたおじさん……お兄さん?」
「おじさんでもお兄さんでもどっちでもいいよ。今もう1人が帰ってくるのを待ってるところだから、もう少し寝てて」
フランちゃんをテントの中に戻す。
これから一緒に行動するのだから、素性をバラしてもよかっただろう。
「クオン君」
もう一眠りしていると、変装したままの委員長に起こされる。
もう朝か。少し寝過ぎたかな。
「ああ、おはよう」
「おはよう。変装はもういいの?」
「ずっと変装するのは疲れるから、もういいかなって。フランちゃんが起きてきた時にこっちが本当の姿だって話はしたよ」
「それなら私も着替えようかな。中を使わせてもらうわ……覗かないでね」
「覗くわけないでしょ。そんなことより、朝ごはんは食べた?」
「…………食べてないわ」
委員長はなんだか不満気だけど、覗くかもしれないと思われている僕の方が怒っていいはずだ。
「わかった。3人分用意しておくよ」
ストレージからテーブルと椅子を取り出し、ヨツバに大量に作り置きしてもらっていたご飯と味噌風のスープ、焼き鮭を並べる。
フランちゃんは箸じゃなくてスプーンとフォークにするか。
「ひゃっ!」
テントの中からフランちゃんの悲鳴のような声が聞こえるが、男の姿の委員長がいきなり脱ぎ出したからだろう。
「お待たせ」
少し待っていると着替えた委員長とフランちゃんがテントから出てくる。
フランちゃんの顔が少し赤いけど、見なかったことにしよう。
「ご飯を食べたら出発しようか」
テーブルを囲んで朝ごはんを食べる。
「おいしい。懐かしいわね」
委員長がご飯を一口食べて感想を述べる。
「ヨツバ達と食べなかったの?」
「中貝さんのスキルのことは聞いてたけど、私は騎士団に篭りっきりだったからね。前に一緒にスカルタに行った時も出てこなかったし」
「エドガードさん達は米より肉と酒のほうが喜ぶからね。結構まだ持ってるから、食べたい時は言って。フランちゃんはパンの方が良かったかな」
不味そうにしているわけではないけど、あまり食は進んでいないように見える。
緊張しているからかもしれないけど。
「ごめんなさい。おいしいです」
すぐ謝るのは、そういう扱いをされていたからだろう。
「別に謝ることはないよ。遠慮せずになんでもこのお姉ちゃんに言っていいからね」
「少しずつ私に丸投げしようとしてない?」
「女の子同士の方がなんでも言いやすいでしょ?」
「それはそうかもしれないけど……。どこを目指すのかは決めた?いつまでも逃げ続けるのは疲弊するからあまりおすすめ出来ないわよ」
「ブーケルっていう街に行くつもりだよ」
「そこに何かあるの?」
「温泉があるよ。少し前まで温泉が枯れていたんだけど、また湧き出てきたみたいで賑わいを取り戻してきたみたいだね。やることはあの部屋にあった本を読むことだから、環境としては悪くないと思うんだ。フランちゃんを匿うにも王都からいいぐらいに離れるから悪くないと思うし」
「いいと思うわ。でも、温泉宿に泊まり続けるほどお金は持ってないと先に言っておくわね」
「お金は僕が出すから心配いらないよ。委員長に調べごとをしてもらえれば僕は助かるから、その対価と思って」
「クオン君は今でも帰れるわけだから、クオン君がそれでお金を出すのはおかしい気がするけど、甘えさせてもらうわね」
ご飯を食べ終わった後、街道を歩いていると運良く乗り合い馬車が通りがかったので、多めにお金を支払い乗せてもらう。
御者になんで歩いているのか聞かれたので、乗っていた馬が魔物に驚いて逃げてしまったと答えておいた。
乗り合い馬車で近くの街まで移動した後、温泉が復活したからか、ブーケル行きの馬車があったので乗せてもらう。
途中の街でもお客を追加で乗せながら最終的にブーケルに着く予定のようだ。
道中、魔物に襲われることはあったが護衛が問題なく討伐して、フランちゃんを探すために検問でもあるかと思ったけどそんなこともなくブーケルに到着した。
攫われた王女も死んだことになっていて、盗まれた物も見られたらまずいようなものばかりだろうから、表立って捜索隊を組むことは出来なかったのだろう。
「やっと着いたね。僕は商業ギルドに行ってくるから、2人はあそこの店でお昼ご飯を食べてきて。前に来た時は美味しかったよ。結構時間が掛かると思うから、食べ終わったら適当に観光でもしててね。はい、これお金ね」
委員長とフランちゃんに以前堀田君に連れてこられた食堂に行くように言ってお金を渡し、僕は商業ギルドに向かう。
「家を借りたいんですけど、風呂トイレ付きで私室が2部屋以上ある温泉に入れる物件はありませんか?」
受付で希望を伝える。
フランちゃんを匿っている以上、宿屋に泊まるのはバレた時に迷惑になるので家を借りるつもりだ。
「家の中に温泉がある家ということでしょうか?」
「出来れば。温泉じゃなくても、浴室は欲しいです」
「だいぶお高くなりますがよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。何日間以上は借りないといけないみたいな規約はありますか?」
「ありませんが、退去した時に借りた日数に関係なく清掃などの為の費用を頂きますので、少しの間しか借りられないのであればお高くつくと思います。退去の際の費用は契約時に前払いで頂き、使用しなかった差額分はお返しいたします」
「わかりました。お願いします」
途中からフランちゃんは僕が背負っている。
子供にこの距離は辛いだろうから仕方ない。
ただ、背負われたまま寝てしまうのはどうなんだ?
知らないオッサンの背中でよく寝れるな。
「これからどうするか何か考えてる?」
委員長に聞かれる。
「王都には戻らずに近くの街までは頑張って歩いて、そこで馬車に乗るのがいいかな。街道沿いを歩いていれば馬車が通るかもしれないし、乗せてくれれば楽ができるけど。宿屋に荷物は置きっぱなしだよね?僕は野営しているから取りに行ってきていいよ」
「その子を連れて戻るのは危険だよね。出来るだけ早く戻ってくるね」
「いや、戻るのは朝になってからでいいよ。ちゃんと朝にチェックアウトしないと怪しまれるかもしれないからね」
委員長を見送った後、野営の準備をする。
準備といっても、組み立て済みのテントをストレージから出して、その中にベッドを置くだけだ。
ベッドにフランちゃんを寝かせて、僕はテントの外でうたた寝をしながら朝になるのを待つ。
「ひゃっ!あ、あの、お兄さんは誰ですか?」
目を開けて振り向くと、フランちゃんが起きてきていた。
自分の手を見て寝ている間に幻影の効果が切れてたことを確認した僕は、寝起きで頭の働いていないまま考える。
「僕はクオン。変装の達人だよ。こっちが本当の姿ね」
一度さっきまでのオッサンの姿になってから、すぐに幻影を消す。
「助けてくれたおじさん……お兄さん?」
「おじさんでもお兄さんでもどっちでもいいよ。今もう1人が帰ってくるのを待ってるところだから、もう少し寝てて」
フランちゃんをテントの中に戻す。
これから一緒に行動するのだから、素性をバラしてもよかっただろう。
「クオン君」
もう一眠りしていると、変装したままの委員長に起こされる。
もう朝か。少し寝過ぎたかな。
「ああ、おはよう」
「おはよう。変装はもういいの?」
「ずっと変装するのは疲れるから、もういいかなって。フランちゃんが起きてきた時にこっちが本当の姿だって話はしたよ」
「それなら私も着替えようかな。中を使わせてもらうわ……覗かないでね」
「覗くわけないでしょ。そんなことより、朝ごはんは食べた?」
「…………食べてないわ」
委員長はなんだか不満気だけど、覗くかもしれないと思われている僕の方が怒っていいはずだ。
「わかった。3人分用意しておくよ」
ストレージからテーブルと椅子を取り出し、ヨツバに大量に作り置きしてもらっていたご飯と味噌風のスープ、焼き鮭を並べる。
フランちゃんは箸じゃなくてスプーンとフォークにするか。
「ひゃっ!」
テントの中からフランちゃんの悲鳴のような声が聞こえるが、男の姿の委員長がいきなり脱ぎ出したからだろう。
「お待たせ」
少し待っていると着替えた委員長とフランちゃんがテントから出てくる。
フランちゃんの顔が少し赤いけど、見なかったことにしよう。
「ご飯を食べたら出発しようか」
テーブルを囲んで朝ごはんを食べる。
「おいしい。懐かしいわね」
委員長がご飯を一口食べて感想を述べる。
「ヨツバ達と食べなかったの?」
「中貝さんのスキルのことは聞いてたけど、私は騎士団に篭りっきりだったからね。前に一緒にスカルタに行った時も出てこなかったし」
「エドガードさん達は米より肉と酒のほうが喜ぶからね。結構まだ持ってるから、食べたい時は言って。フランちゃんはパンの方が良かったかな」
不味そうにしているわけではないけど、あまり食は進んでいないように見える。
緊張しているからかもしれないけど。
「ごめんなさい。おいしいです」
すぐ謝るのは、そういう扱いをされていたからだろう。
「別に謝ることはないよ。遠慮せずになんでもこのお姉ちゃんに言っていいからね」
「少しずつ私に丸投げしようとしてない?」
「女の子同士の方がなんでも言いやすいでしょ?」
「それはそうかもしれないけど……。どこを目指すのかは決めた?いつまでも逃げ続けるのは疲弊するからあまりおすすめ出来ないわよ」
「ブーケルっていう街に行くつもりだよ」
「そこに何かあるの?」
「温泉があるよ。少し前まで温泉が枯れていたんだけど、また湧き出てきたみたいで賑わいを取り戻してきたみたいだね。やることはあの部屋にあった本を読むことだから、環境としては悪くないと思うんだ。フランちゃんを匿うにも王都からいいぐらいに離れるから悪くないと思うし」
「いいと思うわ。でも、温泉宿に泊まり続けるほどお金は持ってないと先に言っておくわね」
「お金は僕が出すから心配いらないよ。委員長に調べごとをしてもらえれば僕は助かるから、その対価と思って」
「クオン君は今でも帰れるわけだから、クオン君がそれでお金を出すのはおかしい気がするけど、甘えさせてもらうわね」
ご飯を食べ終わった後、街道を歩いていると運良く乗り合い馬車が通りがかったので、多めにお金を支払い乗せてもらう。
御者になんで歩いているのか聞かれたので、乗っていた馬が魔物に驚いて逃げてしまったと答えておいた。
乗り合い馬車で近くの街まで移動した後、温泉が復活したからか、ブーケル行きの馬車があったので乗せてもらう。
途中の街でもお客を追加で乗せながら最終的にブーケルに着く予定のようだ。
道中、魔物に襲われることはあったが護衛が問題なく討伐して、フランちゃんを探すために検問でもあるかと思ったけどそんなこともなくブーケルに到着した。
攫われた王女も死んだことになっていて、盗まれた物も見られたらまずいようなものばかりだろうから、表立って捜索隊を組むことは出来なかったのだろう。
「やっと着いたね。僕は商業ギルドに行ってくるから、2人はあそこの店でお昼ご飯を食べてきて。前に来た時は美味しかったよ。結構時間が掛かると思うから、食べ終わったら適当に観光でもしててね。はい、これお金ね」
委員長とフランちゃんに以前堀田君に連れてこられた食堂に行くように言ってお金を渡し、僕は商業ギルドに向かう。
「家を借りたいんですけど、風呂トイレ付きで私室が2部屋以上ある温泉に入れる物件はありませんか?」
受付で希望を伝える。
フランちゃんを匿っている以上、宿屋に泊まるのはバレた時に迷惑になるので家を借りるつもりだ。
「家の中に温泉がある家ということでしょうか?」
「出来れば。温泉じゃなくても、浴室は欲しいです」
「だいぶお高くなりますがよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。何日間以上は借りないといけないみたいな規約はありますか?」
「ありませんが、退去した時に借りた日数に関係なく清掃などの為の費用を頂きますので、少しの間しか借りられないのであればお高くつくと思います。退去の際の費用は契約時に前払いで頂き、使用しなかった差額分はお返しいたします」
「わかりました。お願いします」
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