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次元斬

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皆で占いをしてもらった後、サラボナさんに次元斬の件の答えを聞きに行く。

ネロ君の占い通りなら、サラボナさんは首を縦に振ってくれるはずだ。


「君の提案を受けることにした」
冒険者ギルドの応接室にて、サラボナさんから交渉成立の言葉をもらう。

「ありがとうございます。約束通りオアシスは作らせてもらいます」

「スキルを使うにあたって、一つ条件がある」

「なんでしょうか?」

「流石に街中で使うのには抵抗がある。周りに人が住んでいない開けた場所で使わせてもらう。王都の中でとか考えていたなら断らせてもらう」

「場所はどこでも大丈夫ですよ。それじゃあオアシス建設の相談ですけど、僕は水の魔石の調達に行ってきます。サラボナさんは場所を決めて、穴を掘ったり、石を組んだりと、水以外の所をお願いします。外部に依頼するのに必要なお金は僕が払います。とりあえず金貨10枚置いておきますので、足りなければ言ってください」

「……わかった。そちらは引き受けた」

「水の魔石ですけど、オアシスを作るのにいくつくらい必要ですか?」

「井戸を作るのに8個使用した。オアシスと呼べるものを作るなら、少なくても30倍。240個は必要になるだろう。少なければ天候によっては枯れてしまう」

「わかりました。余裕を持って調達してきます。それから別件ですけど、ロンデル子爵家の領土ってどこですか?先日話した件で、少しあれだと対応が遅れるかもしれないなと思いましたので、話し合いをしたほうがいいかなと」

「地図は持っているか?」

「はい」
カバンから取り出すように、ストレージから地図を取り出して机に広げる。

「領土はここで、屋敷はこの辺りだ」
サラボナさんが示した所に忘れないように印を付けておく。

「この森の中も通っている大きな川に魔物は生息してますか?確かこの森はCランク指定の危険区域でしたよね?」
子爵家の近くにある森を指差して確認する。

「そこは少し前にBランク指定に危険度が上がった。川に魔物は生息しているが、あそこは魔物同士の縄張り争いが激しい。冒険者が何人も姿を消している」
水系統の魔物であれば水の魔石はドロップするし、わざわざ危険なところで集める必要はないな。

「どこか、水棲の魔物が多く生息しているところは知りませんか?弱い魔物が群れているのが1番いいです」

「ここの湖には魔物がたくさんいたわね。私がまだ冒険者の頃の話だから今はどうなっているかわからないけど、湖がなくなったという話は聞いていないわ」
サラボナさんが指差す湖は、ここからだいぶ離れているけど、この世界に連れてこられた時に最初に入った街の近くだ。

サラボナさんが冒険者だった時のことを思い出して話しているから、あの辺りになるのは当然といえば当然か。

近くまではファストトラベルで行けるから、候補として悪くはないな。

「ありがとうございます。それじゃあ僕は一度王国に戻ってから色々とやらないといけないことをしてきます。水の魔石が必要個数集まるのは早くても一月は掛かるので、準備を進めながら待っててください」

「私がスキルを使うのは、そんなに後でも大丈夫なのかしら?」

「もちろん少しでも早い方がいいけど、仕方ないかな」

「約束を破るような人じゃないのは知っているから、前払いでスキルを使ってもいいわよ」
嬉しいことを言ってくれる。

「いいんですか?もちろん約束を破るつもりはありませんけど、保証は出来ませんよ。これから貴族にケンカを売るつもりですし」

「ロンデル子爵なんて小物に君が遅れを取ることはないだろうから、その心配は不要ね。君が不慮の事故に巻き込まれてオアシスの計画が無くなっても、私が失うものはないから問題ないわ。昔に自身で決めたあのスキルは使わないっていう決意を無駄にするだけ」
昔に何があったかは聞かない方がいいだろう。
言う気があるなら、断った時に言っているだろうから。

「それならお願いします。どうすればいいですか?」

「君がスキルを使って欲しいのだろう?私に聞かれても困るのだが……?」

「少し指定はしますけど、基本的には使ってもらえればそれでいいです」

「……君が何をしたいのか私にはわからないわね。オアシスなんてものを作るのを対価に君が頼むようなことには思えないのだけれど?」

「珍しいスキルを見たいだけということにしておいてください。踏み込まない方がいいこともあるとは思いませんか?」

「何か悪いことを企んでいたりはいない?」

「良いことか悪いことかは主観によるので断言は出来ませんけど、僕は悪いことをするつもりはありませんよ」

「確かにそうね。2日後の昼でいいかしら?街からは少し離れたいから、すぐに出発するのは難しいわ。あまり無断で抜け出すと怒られるからね」

「わかりました。2日後の昼ですね」
そんなに早く見せてくれるのは、素直にありがたいな。
元の世界でやりたいこともあったから、全てがちょうどいい。


「この辺りでいいわね」
2日後、サラボナさんとスカルタの街から離れた場所へと移動する。

断りきれず、委員長まで付いてきてしまった。
見られたところで致命的なことにはならないだろうけど、前に話したスキルとは別のスキルを使うところを見られることにはなってしまい、僕が何か隠し事をしていて秘密裏に動いていることが、委員長の中で疑いから核心に変わってしまうだろう。

断固として断り、振り切ることも出来たけど、どちらが面倒なことになるのか考えた結果、同行を許可することにした。

「少し耳を貸してください。……あのサボテンを的にしてください。ただ、実際に発動する直前までは他を狙うようなフリをお願いします。僕はサボテンの近くに移動しますが、動かないようにするので当てないようにお願いします」
僕は周りに聞こえないように小声でサラボナさんに指示を出す。

「了解した」
サラボナさんの了承を得た僕は、指定したサボテンの3メートルほど左前に移動する。

「僕はここから離れて見ていますのでお願いします」
僕の合図を聞いて、サラボナさんがいつも使っているだろう腰に差してある剣とは別の剣を取り出して上段に構え、直前に狙いをサボテンに変えて振り下ろす。

キンッ!!
高周波のような高く大きな音が鳴り、サラボナさんから狙いのサボテンの遥か先までに黒いモヤが掛かる。
音がよく聞こえない。近くにいたせいで鼓膜が破れたかもしれない。

黒いモヤは、陽炎かげろうに色が付いたような見た目だ。
これが次元の裂け目というやつだろうか。
二つの世界の境目が曖昧になっているように見える。

黒いモヤの中に羽の生えた人影が2つ見える。

鑑定の結果、倒れている方は神下さんだ。
もう一つの立っている人は誰だ……?
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