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魔物掃討
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「君のおかげで砂漠の移動も苦じゃなかったな」
予定通り遺跡に到着した。
遺跡は地下に作られているようで、入り口の階段が見えるだけだ。
入り口も近付かないと分からないので、ずっと見つからなかったのも納得だ。
「この遺跡は誰が作ったんでしょうか?」
明らかに人為的に作られている。
「大昔の誰かだろうな。発見者の冒険者が言うには、階段を降りて少し進んだところに広めの空間があって、そこに魔物がたくさんいたらしい。ヘルハウンドらしき姿をした魔物もいたようだ。奥への道もあったようだからどれだけ掛かるかわからない。覚悟しておいてくれ」
「わかりました。奥に進むほど強い魔物が出てくるんですか?」
入る前に確認しておく。
「魔物が住処としている原因によるな。遺跡の奥に魔物が好むものがあるなら、強い魔物がそこを独占しようとするだろう。魔物の世界も弱肉強食だ。強い魔物がいい場所を独占しようとするのは当然だ」
「つまりヘルハウンドよりも強い魔物が待ち構えているかもしれないし、奥にはスライムみたいな雑魚しかいないかもしれないってことですね」
入ってみないとわからないということだ。
「戦闘は私達でやるから、君は下がっていて」
「えっ?……僕も戦いますよ。レベル上げしたいです。可能なら僕1人にやれるところまでやらせて欲しいです」
「……正気か?」
「正気ですよ。魔物がたくさんいるんですよね?広域殲滅とか魔法使いの仕事ですよ。一気にレベルを上げるチャンスです。ダンジョンと違って素材も手に入りますし、良いことしかありません」
「君が死んだら私達も回復役を失って困るんだけど……?」
「引き際はわかっているので、やらせて下さい」
「…………はぁ。危険だと思ったら確認せずに介入するけど、怒るなよ」
「わかりました。それから魔物の素材ですけど、全て僕の買取ということでいいですか?僕が倒したからと報酬を独占するつもりはないんですけど、少し僕は特殊でして、素材を分配することが出来ないんです。貨幣で分配ということにして欲しいです」
「何を言っているのかわからないが、別に構わないよ」
「ありがとうございます。では行きましょう」
慎重に遺跡の中へと進んでいく。
「情報通りだな」
「あの中で1番強いのはあの犬ですか?」
「そんな可愛いものではないけど、その通りだ」
「エアリアさん達は赤い水に触らないように気を付けて下さい。少しなら問題ありませんけど、ずっと触っていると動けなくなります。部屋に入ったら岩を用意しますので、その上に乗っていて下さい」
「あ、ああ」
エアリアさんはよくわからないまま返事をする。
「グキャアアア」「グルルルル」
部屋に入ると同時に魔物達に気付かれる。
まずはストレージから岩を取り出して設置する。
「この上に乗っててください」
エアリアさん達に声を掛けてから、ブラッドワンドを地面に突き刺して血の池を発動する。
準備は完了だ。
後は一撃で殺されないようにだけ気を付ければ負けることはないかな。
まずは犬っころを相手にするか。
数を減らすとこちらが不利になるから、出来るだけ弱い魔物は残して、強いやつから倒していこう。
「痛っ、痛っ。痛いな、もう」
ゲームと違って痛みがあることを忘れてた。
HPは減ってもすぐに血の池が魔物から吸い続けている分で回復するけど、ずっと痛みが走る。
ヘルハウンド以外の弱そうな魔物の攻撃は気にせずに食らっていたけど、やり方を変えた方が良さそうだ。
「大丈夫か?」
クリスさんが助けに入るべきか迷って聞いてくる。
「大丈夫です。痛いだけでダメージはありません」
僕は攻撃してくる弱い魔物を殺さないように倒すことに作戦を変更する。
でも狙いは変えない。
邪魔してくる魔物は払い除けつつ、ヘルハウンドやトロールなどの大物の急所を狙って攻撃を飛ばしてダメージを稼いでいく。
たまに転がした魔物から魔力を奪い、盾とし、自身への攻撃の妨げとする。
そうして決定的な攻撃は受けないようにしながら、命を刈り取っていく。
「ふぅ。終わりました」
最後に弱い魔物も倒し、血の池を解除して終わりだ。
「……ええ、お疲れ様。色々と聞きたいことがあるのだけれど、聞いてもいいかしら?」
「答えられることなら」
「あれだけ魔物から攻撃を食らって、なんで無傷なのかしら。致命傷だけは避けていたみたいだけど、普通なら死んでいるわ。治癒魔法を使ってもいなかったわよね?」
「治癒魔法は使ってませんが、常に傷が自動で回復する状況は作ってましたよ」
「最初魔物を倒さないようにしてたのが関係しているのかしら」
「まあ、そうですね」
「まあ、いいわ。聞かないといけないわけではないし、言いたくなさそうだから聞かないわ。それよりも、魔物はどこに消えたのかしら」
「アイテムボックスのようなスキルが使えるんです。これが少し特殊で、魔物がそのまま回収されるわけではないので、先に素材は僕の全て買取にさせて欲しいと言ったんです」
「アイテムボックスね。岩を出したから持ってるんだとは思ったけど、メルのスキルとはだいぶ規模が違うみたいね」
「そうですね。メルさんは倉庫一つ分くらい入るんでしたっけ?」
「そうよ」
「そのまま回収されないっていうのは?本当に素材は手に入ってるの?本当は消えただけなら、分け前とかいらないからね。今回の依頼は元々報酬目当てじゃなくて姉さんに頼まれたから受けただけだから」
別にエアリアさん達には話してもいいかな。
他言するような人達じゃないっていうのもわかったし。
「実は自動的に解体されて収納されるんです。解体といっても魔物がバラバラになるわけじゃなくて、関連するアイテムに変換されるっていうスキルで、例えばサンドウルフを倒して手に入ったのがこれです」
僕は土の魔石を見せる。
「……これは、色が違うだけで水の魔石か?」
「これは魔力を込めると砂が出てきます。土の魔石です。サンドウルフの体内にこんなものはないはずですけど、僕が倒すとたまに手に入ります。これが僕の特殊なスキルです。他の人がサンドウルフを倒しても手に入らないものなのでギルドに買い取ってもらうのは不自然ですよね?だから僕が買い取るんですよ」
「それなら、君が買い取ることにして分配したら君が困るだろう。売ってお金に出来ないんだろう?別に気を使う必要はないわよ」
「売れないだけで使い道はあるので大丈夫です」
肉は食べればいいし、魔石や毛皮や牙なんかは装備の素材になる。
要らないものは石みたいに飛ばしてもいいし、全く要らないというものはない。
「それならいいけど、私達は見てただけだし、クオン君が無理しない程度にくれればいいからね」
「お金は知っての通りいっぱいあるので問題ないです」
「……そうだったわね。元々は姉さんが借金したお金だと思うと貰いにくいわ」
「僕としてはレベルがたくさん上がるので、それが1番の報酬ですよ」
そろそろ広範囲の攻撃魔法も覚えたいし、スキルポイントが増えるのは嬉しい。
クラスメイトを殺すために、対人の単体を相手にする為のスキルばかりを選び過ぎているから、魔物を一気に殲滅する爽快系のスキルが欲しい。
レベル上げも捗るし、取得しちゃおうかな。
「君がそれでいいなら私は何も言わないよ。とりあえず今日は外に出て休もうか」
「わかりました」
外に出ると日が少し落ち掛けていた。
「疲れたでしょ?ご飯は私達で作るから休んでて」
「ありがとうございます。これ使ってください」
エアリアさんに食用肉(★)を渡す。
「お肉ね。使わせてもらうわ」
少しして食事の準備が出来たとのことで早めの夕食を頂く。
「この肉美味いわね。…………もしかしてニーナはこれを食べたことがあるのかしら?」
「そうですね。食べたことはありますよ」
「やっと謎が解けたわ。ニーナがアリアドネに入ってすぐの時に歓迎会をしたのよ。美味しい肉を食べさせたのに感動が薄かったのはクオン君の仕業だったのね」
「別にエアリアさんにいじわるしたわけではないですよ」
「それはわかってるわよ。もっと喜ぶと思ったらそうでもなかったから、少し残念だっただけよ。さて、食べたら休む準備をしましょう。まだまだ遺跡には魔物がいそうだからね」
これはいい依頼だったな。
ダンジョンよりもレベルが上がって、素材も手に入るとか美味しすぎる。
明日からも前線で戦わせてもらおう。
予定通り遺跡に到着した。
遺跡は地下に作られているようで、入り口の階段が見えるだけだ。
入り口も近付かないと分からないので、ずっと見つからなかったのも納得だ。
「この遺跡は誰が作ったんでしょうか?」
明らかに人為的に作られている。
「大昔の誰かだろうな。発見者の冒険者が言うには、階段を降りて少し進んだところに広めの空間があって、そこに魔物がたくさんいたらしい。ヘルハウンドらしき姿をした魔物もいたようだ。奥への道もあったようだからどれだけ掛かるかわからない。覚悟しておいてくれ」
「わかりました。奥に進むほど強い魔物が出てくるんですか?」
入る前に確認しておく。
「魔物が住処としている原因によるな。遺跡の奥に魔物が好むものがあるなら、強い魔物がそこを独占しようとするだろう。魔物の世界も弱肉強食だ。強い魔物がいい場所を独占しようとするのは当然だ」
「つまりヘルハウンドよりも強い魔物が待ち構えているかもしれないし、奥にはスライムみたいな雑魚しかいないかもしれないってことですね」
入ってみないとわからないということだ。
「戦闘は私達でやるから、君は下がっていて」
「えっ?……僕も戦いますよ。レベル上げしたいです。可能なら僕1人にやれるところまでやらせて欲しいです」
「……正気か?」
「正気ですよ。魔物がたくさんいるんですよね?広域殲滅とか魔法使いの仕事ですよ。一気にレベルを上げるチャンスです。ダンジョンと違って素材も手に入りますし、良いことしかありません」
「君が死んだら私達も回復役を失って困るんだけど……?」
「引き際はわかっているので、やらせて下さい」
「…………はぁ。危険だと思ったら確認せずに介入するけど、怒るなよ」
「わかりました。それから魔物の素材ですけど、全て僕の買取ということでいいですか?僕が倒したからと報酬を独占するつもりはないんですけど、少し僕は特殊でして、素材を分配することが出来ないんです。貨幣で分配ということにして欲しいです」
「何を言っているのかわからないが、別に構わないよ」
「ありがとうございます。では行きましょう」
慎重に遺跡の中へと進んでいく。
「情報通りだな」
「あの中で1番強いのはあの犬ですか?」
「そんな可愛いものではないけど、その通りだ」
「エアリアさん達は赤い水に触らないように気を付けて下さい。少しなら問題ありませんけど、ずっと触っていると動けなくなります。部屋に入ったら岩を用意しますので、その上に乗っていて下さい」
「あ、ああ」
エアリアさんはよくわからないまま返事をする。
「グキャアアア」「グルルルル」
部屋に入ると同時に魔物達に気付かれる。
まずはストレージから岩を取り出して設置する。
「この上に乗っててください」
エアリアさん達に声を掛けてから、ブラッドワンドを地面に突き刺して血の池を発動する。
準備は完了だ。
後は一撃で殺されないようにだけ気を付ければ負けることはないかな。
まずは犬っころを相手にするか。
数を減らすとこちらが不利になるから、出来るだけ弱い魔物は残して、強いやつから倒していこう。
「痛っ、痛っ。痛いな、もう」
ゲームと違って痛みがあることを忘れてた。
HPは減ってもすぐに血の池が魔物から吸い続けている分で回復するけど、ずっと痛みが走る。
ヘルハウンド以外の弱そうな魔物の攻撃は気にせずに食らっていたけど、やり方を変えた方が良さそうだ。
「大丈夫か?」
クリスさんが助けに入るべきか迷って聞いてくる。
「大丈夫です。痛いだけでダメージはありません」
僕は攻撃してくる弱い魔物を殺さないように倒すことに作戦を変更する。
でも狙いは変えない。
邪魔してくる魔物は払い除けつつ、ヘルハウンドやトロールなどの大物の急所を狙って攻撃を飛ばしてダメージを稼いでいく。
たまに転がした魔物から魔力を奪い、盾とし、自身への攻撃の妨げとする。
そうして決定的な攻撃は受けないようにしながら、命を刈り取っていく。
「ふぅ。終わりました」
最後に弱い魔物も倒し、血の池を解除して終わりだ。
「……ええ、お疲れ様。色々と聞きたいことがあるのだけれど、聞いてもいいかしら?」
「答えられることなら」
「あれだけ魔物から攻撃を食らって、なんで無傷なのかしら。致命傷だけは避けていたみたいだけど、普通なら死んでいるわ。治癒魔法を使ってもいなかったわよね?」
「治癒魔法は使ってませんが、常に傷が自動で回復する状況は作ってましたよ」
「最初魔物を倒さないようにしてたのが関係しているのかしら」
「まあ、そうですね」
「まあ、いいわ。聞かないといけないわけではないし、言いたくなさそうだから聞かないわ。それよりも、魔物はどこに消えたのかしら」
「アイテムボックスのようなスキルが使えるんです。これが少し特殊で、魔物がそのまま回収されるわけではないので、先に素材は僕の全て買取にさせて欲しいと言ったんです」
「アイテムボックスね。岩を出したから持ってるんだとは思ったけど、メルのスキルとはだいぶ規模が違うみたいね」
「そうですね。メルさんは倉庫一つ分くらい入るんでしたっけ?」
「そうよ」
「そのまま回収されないっていうのは?本当に素材は手に入ってるの?本当は消えただけなら、分け前とかいらないからね。今回の依頼は元々報酬目当てじゃなくて姉さんに頼まれたから受けただけだから」
別にエアリアさん達には話してもいいかな。
他言するような人達じゃないっていうのもわかったし。
「実は自動的に解体されて収納されるんです。解体といっても魔物がバラバラになるわけじゃなくて、関連するアイテムに変換されるっていうスキルで、例えばサンドウルフを倒して手に入ったのがこれです」
僕は土の魔石を見せる。
「……これは、色が違うだけで水の魔石か?」
「これは魔力を込めると砂が出てきます。土の魔石です。サンドウルフの体内にこんなものはないはずですけど、僕が倒すとたまに手に入ります。これが僕の特殊なスキルです。他の人がサンドウルフを倒しても手に入らないものなのでギルドに買い取ってもらうのは不自然ですよね?だから僕が買い取るんですよ」
「それなら、君が買い取ることにして分配したら君が困るだろう。売ってお金に出来ないんだろう?別に気を使う必要はないわよ」
「売れないだけで使い道はあるので大丈夫です」
肉は食べればいいし、魔石や毛皮や牙なんかは装備の素材になる。
要らないものは石みたいに飛ばしてもいいし、全く要らないというものはない。
「それならいいけど、私達は見てただけだし、クオン君が無理しない程度にくれればいいからね」
「お金は知っての通りいっぱいあるので問題ないです」
「……そうだったわね。元々は姉さんが借金したお金だと思うと貰いにくいわ」
「僕としてはレベルがたくさん上がるので、それが1番の報酬ですよ」
そろそろ広範囲の攻撃魔法も覚えたいし、スキルポイントが増えるのは嬉しい。
クラスメイトを殺すために、対人の単体を相手にする為のスキルばかりを選び過ぎているから、魔物を一気に殲滅する爽快系のスキルが欲しい。
レベル上げも捗るし、取得しちゃおうかな。
「君がそれでいいなら私は何も言わないよ。とりあえず今日は外に出て休もうか」
「わかりました」
外に出ると日が少し落ち掛けていた。
「疲れたでしょ?ご飯は私達で作るから休んでて」
「ありがとうございます。これ使ってください」
エアリアさんに食用肉(★)を渡す。
「お肉ね。使わせてもらうわ」
少しして食事の準備が出来たとのことで早めの夕食を頂く。
「この肉美味いわね。…………もしかしてニーナはこれを食べたことがあるのかしら?」
「そうですね。食べたことはありますよ」
「やっと謎が解けたわ。ニーナがアリアドネに入ってすぐの時に歓迎会をしたのよ。美味しい肉を食べさせたのに感動が薄かったのはクオン君の仕業だったのね」
「別にエアリアさんにいじわるしたわけではないですよ」
「それはわかってるわよ。もっと喜ぶと思ったらそうでもなかったから、少し残念だっただけよ。さて、食べたら休む準備をしましょう。まだまだ遺跡には魔物がいそうだからね」
これはいい依頼だったな。
ダンジョンよりもレベルが上がって、素材も手に入るとか美味しすぎる。
明日からも前線で戦わせてもらおう。
応援ありがとうございます!
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