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帰還

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アルマロスさんとは別れ、アリオスさんと詰所に戻ってきて部屋に入る。

「やはりアルマロスには気付かれたな」

「アリオスさんはアルマロスさんが気付くと思っていたんですか?」

「あいつはああ言っていたが、私よりも感覚が鋭い。私でも気付くことはあいつも気付くだろう」

「それならなんでアルマロスさんは引き下がったんですか?」

「あいつは自分の騎士団を1番に考えている。こういう言い方は語弊があるかもしれないが、魔王が復活して世界に危機が訪れるよりも、自分の騎士団が評価される方を優先するやつだ。今回の騎士団に与えられた任務は、邪教徒が残した遺物の調査と、魔王と思われる石像の破壊だ。石像の破壊が成せたとなれば13騎士団の扱いは今以上に良くなるだろう。私がいなければ君を問い詰めただろうが、私が知らないと言ったのであれば、後々君が盗んだ事がバレたとしても、アルマロスも気付かなかったと言い訳が出来る。自分で言うことではないが、私に出来ないことは出来なくても仕方ないという風潮がこの国にはある。だから、アルマロスは気のせいだったと言ったんだ。アルマロスにとってのデメリットは、君が関わっていることを内密にしたことくらいだが、それも私があいつに頼んだことだから無いに等しい。僅かなリスクで大きなリターンを得られるなら、あいつは今回のような選択をするだろう。多分、私が気付かなかったというのが嘘だとも気付いているはずだから、あれ以上追求すれば私と敵対するかもしれないと思ったのかもしれない。敵対は言い過ぎかもしれないが、あいつにとってはそっちの方が避けたいところだ。他の団長ならこうはならなかっただろうから、運が良かったな。他の団長だったら私と敵対してでも見逃しはしなかっただろう。あいつの正義感が薄いのではなく、今まで13騎士団は不遇の扱いをされていた。その影響によるものだから勘違いはしないで欲しい」

「……そうだったんですね。自分の力を過信していたようです」

「団長クラスでも君の幻に初見で気付くのは僅かだと思うから、運が悪かったとも言えるけどね。それで、封印はいつ解くんだ?そもそも解けるのか?」

「今は解けません。封印を解けるだけの力を得たら解くことにします。ちゃんと約束は守りますので、その時にはアリオスさんに教えます」

「そこを疑っているわけではないが、まるで封印を解く技能を将来得るのが分かっているかのような言い方に聞こえるな」

「これは封印されているのではなく、呪いに掛けられてるんです。解呪する方法には当てがあります」
取得しようと思えば解呪のスキルは取得出来るけど、今はスキルポイントが足りない。

それに、解呪のスキルは僧侶専用のスキルだ。
取得するなら僧侶にジョブチェンジして取得するわけだけど、多分ゲームと同じで、取得後に魔法使いのジョブに戻しても、消費したスキルポイントは戻ってこない。
魔法使いのジョブでは使えないので、解呪のスキルにスキルポイントを使うのはもったいない。

正直、無駄なスキルポイントを使ってまで呪いを解くべきか迷っている。
もしかしたら、僕がスキルポイントを使わなくても解呪する方法は見つかるかもしれないし、今すぐに石化の呪いを解かないといけないわけではない。
解呪のスキルで石化が解けるかもわからないし。

とりあえず、この世界に連れてこられたことへの手掛かりになりそうなものだったので、確保しておきたかっただけだ。

「……そうか。では元々の予定通りこの街を出るのか?」

「はい。この後ハルト君に話をして、準備などが無いようでしたら明日にでも魔法学院に戻ろうと思います」

「そういえばハルトが先日挨拶に来たな。分かってはいたが、衛兵にはならないそうだ。私としてはハルトに衛兵になってほしかったが、あいつは元々衛兵志望で雇われにきたわけではなかったからな。残念だが仕方ない」

「衛兵にならないというのは僕も聞いてますよ。僕と一緒に魔法学院に戻るのか、それとも別行動するのかを確認するだけです」

「ハルトにいつでも戻ってきていいと伝えておいてくれ」

「わかりました。伝えておきます」
僕はアリオスさんに別れを告げて、桜井君の所へと行く。

「どうするかは決まった?」
僕はハロルドさんに桜井君と2人で話が出来るように部屋を借りて、そこで桜井君に聞く。

「どうするのが一番いいのか考えたんだが、俺も一緒に行ってもいいか?……別に肉に釣られたわけではないからな」

「別に肉目当てだったとしても僕は歓迎するけど、理由を聞いてもいいかな?」
元々勧誘する意思があるという意味を伝えるためにも、メリットとして肉の話をしただけだ。
桜井君が本当に肉に釣られるとは思っていない。
迷った時に背中を押すくらいになればいいなくらいだ。

「委員長と共に行動したとして、俺に出来ることはあるのかと思うんだ。いや、あるとは思うんだが、俺がいなかったとしても遅かれ早かれ同じ結果になると思う。それよりは、隠し事があるとはいっても俺を縛るつもりはないなら、クオンと一緒に行った方が出来る事は多いと思うんだ。委員長は騎士団としての力を使ってクラスの奴らを探して、帰還方法を探るだろう。クオンは楽しむのが目的だとしても色んなところを旅するんだろ?俺は足を使ってクラスの奴らを探すつもりだ。どこまで出来るかはわからないが、俺を戦力として期待するというのであれば、やれる限り協力するつもりだ。目的は違ったとしても利害は一致していると思う」

「委員長の方に行ったらそうなるかもね。委員長の指示の下動いていた方が気持ち的にも楽だとは思うけど、桜井君が自分のやりたいように動きたいなら、確かに委員長のところに行くのはよくないかもね。隠し事を話す気はないけど、それは本当にいいの?」

「ああ。別に全てを話さなければ仲間じゃないというわけでもないだろう」
仲間…………仲間か。
桜井君とは仲間というより協力関係に近い気がするな。

「それなら、これからもよろしく。僕は明日にも出発出来るけど、桜井君はどう?」

「……問題はないけど、少し急だな」

「それなら明後日にしようか。別に急いでないから」

「悪いな。助かる」

「それで、桜井君が僕と一緒に行動するなら出発する前に話しておかなければならないことがあるんだけど」

「改まってなんだ?」

「これはヨツバもイロハも知ってることだから2人には話してもいいけど、実は僕は元の世界と自由に行き来出来るんだよ。僕が神様からもらったスキルって結構特殊で、簡単にいうとシステムがゲームと同じになるってスキルなんだよ。それで、ログアウトすると元の世界に戻れるんだ。ログインしたらこの世界に戻ってこられるんだけど、その関係で僕はちょくちょく居なくなるから、いないからって慌てないでね」

「は?……いや、何言ってるんだ?」

理解の追いついていない桜井君に詳しい説明をする。

「……すぐに信じられる話ではないが、そんな嘘をつく必要もないか。消えた理由もわからないから、信じるしかないのか?」
一度目の前で元の世界に戻ったりして、なんとか完全にではないけど理解してもらう。

「僕がいなくても探さないでって言いたいだけだから、信じても、信じなくてもいいよ」

「俺達は日本でどうなってるんだ?」

「僕以外は行方不明ってことになってるよ。日本でこっちの世界のことは話せないから、桜井君の家族に桜井君は異世界で生きていることを言ったりとか、そういう期待はしないでね」

「そうか。…………これは立花さん達も知ってるって言ってたよな?」

「そうだね」

「何か隠し事をしているんだろ?これよりも言えないようなことを隠してるのか?」

「まあ、そうだね。隠しているんだから内容は言わないけど」

「さっきの話だけで十分衝撃的だったのにこれよりも上があるのか……。出発は明後日だったな。準備しておく」

そして、当日僕達は魔法学院へと出発する。

「待たせて悪かったな」
馬車が出発したところで桜井君に言われる。

「急ぎの旅でもないし、昨日も観光していただけだから気にしないでいいよ。それよりも魔法学院まで時間があるけど、何かやることはある?」

「いや、特にないな」

「暇ならやって欲しいことがあるんだけど」

「俺に出来ることなら言ってくれ」

「じゃあこれの続きをお願い」

「なんだこれ?」
桜井君が僕がストレージから出した物を見て聞く。

「作りかけのチョコレートだよ。滑らかになるまでずっとゴリゴリとやらないといけないんだよね。終わりが見えないから、どうせ暇だし馬車に揺られながらやろうかなと」

「言われてみればチョコレートの匂い……か?やるのは構わないが、なんでこんなの作ってるんだ?」

「イロハのスキルがショップっていうのは聞いてるよね?」

「ああ」

「イロハがチョコレートが食べたいって言って、イロハのスキルでチョコレートは買えないから諦めると思ったんだけど、カカオ豆は買えたから話の流れで作ることになったんだよ。作り方は僕が向こうで調べてね。どうせいつかやらないといけないなら、移動中の暇な時間にやろうかと思っただけだよ」

「そうか。まあ、食べたくはなるか」

「そういうわけだから頑張ろう。多分目的地に着く頃には完成してるよ」
ゴリゴリし続けた結果、滑らかなチョコレートになった。

後はテンパリング?ってやつをしたら完成かな。
それはヨツバにやってもらおう。
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