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情報交換
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コンコン。
僕は委員長が泊まっている部屋をノックする。
この宿屋は現在騎士団で貸し切っているようで、店主を除けば騎士しかいない。
こうしてバレずに委員長の部屋の前まで来れるのだから、やはり幻影のスキルは使い勝手がいいな。
「ゴンズさん、こんな時間にどうされましたか?」
委員長が部屋のドアを開ける。
ゴンズという人の姿を幻影のスキルで自身に被せているので、委員長は訪ねてきたのが僕だと気づいていないようだ。
「内密に参謀にご相談したいことがありまして、少しお時間を頂けませんか?」
とりあえず、他の邪魔が入らないようにしたい。
「……入って」
少し間が気になったけど、部屋に入れてくれるようなので、入ることにする。
まずはっきりとさせないといけないことは、委員長が僕に会いたくないのか、それともアルマロスさんが僕と委員長を合わせたくないのか。
後者の方がいいのだけれど……。
「そこに座ってて。お茶を淹れるわ」
「ありがとうございます」
僕は委員長に言われた通りに椅子に座り、お茶を淹れてくれることにお礼を言う。
「どうぞ。それで相談があるのよね?斉藤君」
「……なんでわかったのか聞いてもいい?」
バレているようなので、幻影を解く。
大丈夫。いざとなったら逃げる準備は出来てる。
「ゴンズさんはあんな話し方をしないわよ。それに似せたみたいだけど声も違うわ」
「そっか。昼間に団長と話しているのを参考にしたんだけどね」
委員長と話す時は違ったのだろう。
ただ、これで一つ判明した。
委員長が嘘を言っていないなら、ゴンズさんでは無いことがわかったとしても、それが僕だとはならない。
そう考えると、委員長が僕に会わないようにしたということだ。
「それで、わざわざ変装してまで訪ねてきた目的を聞かせてもらえる?」
さて、どうしようか。
「昼間に騎士団を訪ねたら、参謀は王都にいるから不在だと言われちゃってね。会わせてもらえなかったから、仕方なくコソッと訪ねたんだよ。僕の方こそ会えなかった理由を聞いてもいいかな?僕が偽名を使ってることも知ってたみたいだし、その辺りを聞きたいな。元々は委員長がクラスの人を集めてるみたいだから、ちょうど近くにいるし会って話をしたいなくらいだったんだけどね」
委員長に騙し合いで勝てる気はしないので、正直にいくことにする。
「うーん。口止めされてないし言ってもいいのかな?斉藤君に会わないようにして欲しいって頼まれたから会わないようにしてただけよ。それが元の世界に帰る手掛かりになるみたいだからね。私としては斉藤君とも話をしたいと思ってたから、迷った結果、部屋に入れたわけだけどね。あ、今はクオン君って呼んだ方がいいのかな?」
委員長は顎に指を置いて考える素振りをした後、答える。
「クオンでお願い。それで、誰に頼まれたの?」
僕の知ってる人から聞いたのであればどちらかだとは思うけど……。
「……心当たりはあるみたいね。もしかしたらクオン君とも会ってるのかな?」
「ああ、神下さんに頼まれたんだね」
今の言い方でわかった。
僕が偽名を使っているのを知っている人で、委員長に言いそうなのは神下さんか神様を名乗る少年くらいだ。
「そうよ。神下さんと何かあったの?」
「何もなかったと言えば嘘になるんだけど、神下さんと対立してたりはしないよ。僕があることをしていて、それをやめてくれって言いにきただけだね。あることっていうのを話す気はないから聞かないでね。それで、神下さんは委員長に何か言ってた?」
「神下さんは元の世界に帰る方法を知ってるんだって。神下さんは帰り方が特殊で、帰るには私達の誰かの協力が必要だって言ってたよ。その誰かを特定出来たら、私達も元の世界に帰れるように動いてくれるみたい。どうやって帰るのかは教えてくれなかったけどね」
やっぱり神下さんは帰り方を知ってるよね。
だから僕の行動を知っても幻滅したりはしなかったわけだ。
「そうなんだね。それで、なんで委員長が僕と会わないことになる訳?」
「全く驚かないのね?元の世界に帰る方法を神下さんが知ってるっていうのに……」
「前に神下さんに会った時に、元の世界に帰る方法を知ってるんじゃないかとは思ったからね。やっぱり知ってたんだなくらいにしか思わないよ」
「ふーん。それで神下さんは私達がクオン君と出会うと帰れなくなるかもしれないから会わないようにして欲しいって」
「なんで帰れなくなるかは言ってなかったの?」
「教えてくれなかったよ。誰かと念話しているらしくて、許可が降りなかったみたいだね」
僕が委員長達を殺すかもしれないことは言ってないみたいだね。
でも、やっと神下さんが僕に何を言いに来たのかがわかった。
「………………」
どうせ聞いているだろうと、特定の人物とは僕の可能性が高いと言おうとしたら言えなかった。
神様はよっぽどハードモードにしたいらしい。
ただこれでほぼ確定だな。
神下さんは死んだら元の世界に帰れることを知っていて、天使だから普通の方法では死ねないから、天使を殺せる相手を探していると。
どうせあの神に、同じ異世界人にしか天使を殺せる人はいないとか言われたのだろう。
神下さんは誰が天使を殺せるのか分からないから、僕がその人物を殺してしまわないように、殺すのを待ってって言いに来たと。
実際は僕には殺せないなら、わざわざ神様が話せなくすることはないだろう……と思う。
殺せるのが僕なら待つ必要は無いな。
約束?の一ヶ月もとうに過ぎてるし、再開しよう。
「どうかしたの?」
口をパクパクした僕を不思議そうに委員長が見ている。
「いや、なんでもないよ。神下さんが言ってたのはそれだけ?」
「そうね。後はクオンくんが偽名を使ってることと、立花さんと中貝さんと桜井君と一緒にいるってことくらいね。そういえば立花さんと中貝さんはここにはいないの?」
「今は別行動中だよ」
さて、とりあえず知りたいことは聞けたし騒ぎになる前に帰ろうかな。
聞きすぎると色々と感づかれそうだし……。
「まだ帰らないでよ。私はクオン君の知りたいことを答えたんだから、次は私の番よ」
「もちろん答えられることなら答えるよ」
委員長にジッと見られる。
ヨツバといい委員長といい、なんで僕の思考が読めるのだろうか……。
「なんで神下さんは私達とクオン君が会わないようになんて言ったのかわかる?」
「委員長からさっきの話を聞いて神下さんの諸々の行動の理由はわかったけど、なんでかは言いたくないな」
「言えないんじゃなくて、言いたくないのね?」
「そうだね。いつかは言うかもしれないけど、今は言うつもりはないよ」
「……クオン君は元の世界に帰る方法に心当たりはある?」
「この世界から出る方法に心当たりはあるよ」
元の世界に帰る方法と同じ意味のようで、少し違う。
将来的に殺す前に敵対しないといけないことを考えると、元の世界に帰る方法を知っているとは言わない方がいい。
殺す=帰還だと委員長にバレた場合に、敵対するのが難しくなる。
「教えてくれる?」
「無理だね。これは言えない」
委員長と話していて一つ思うことがある。
神様は死んだら元の世界に帰れることを言ってはいけないと言っていたけど、さっき聞いているかもしれない神下さんに話しかけようとしたら声が出なかったことを考えると、声が出ることに関しては許容範囲なのではないだろうか……。
結果として僕がもたらした情報によって、死んだら元の世界に帰れることがバレたとしても。
……でも、確証がないから下手な賭けには出たく無いな。
現状だと言わない方が良さそうだし……。
「そう。言えないのね。神下さんについては?何か教えてくれることはあるの?」
別に口止めはされてないから言ってもいいか。
委員長から色々聞いたのに何も答えないわけにもいかないし……。
「神下さんは天使だよ」
「……別にクオン君の好みを聞いたわけではないわよ。クオン君から神下さんは天使だと告白されて私はなんて答えればいいのかしら?」
「天使のように可愛いみたいな比喩じゃないよ。神下さんは種族が天使なの。なんでそんなことになってるかは知らないけど、言葉通り神下さんは人間を辞めたんだよ」
「そっか、天使か。……変なこと言ってごめんね」
「別になんとも思ってないよ」
「クオン君は今まで何してたの?桜井君達と合流出来てるってことは一つの街にいたわけではないのよね?」
「そうだね。転々としているよ」
「目的は?」
「端的に言うなら旅行かな。このゲームみたいな世界を楽しんでるんだよ。他にも理由はあるけど、主な理由はこれかな」
「……そう。人それぞれよね」
なんだか哀れみの目を向けられた気がする。
「自分が変わってるって認識はあるから、気をつかわなくていいよ」
「桜井君達の他には誰かに会った?」
「何人かにはね。委員長は?何人くらい集まったの?」
「合流出来たのは7人ね。騎士団で保護してるのは5人だけだけど、あとの2人とも連絡は取れるわ」
思ったより集まってるな。
ということは、所在が不明なのは神下さんを入れずに8人か。
委員長からのメッセージに気づかないか、気づいても無視してるってことは、残りの人を探すのは苦労しそうだ。
「流石だね。僕の方を合わせれば全部で12人いるわけだから、後少しだね」
「まだ全然よ。半分も揃ってないわ。クオン君は?」
「委員長には残念な事を知ってはいるけど、聞く覚悟はある?」
「……聞いた方がいいことなんだと思うから聞くわ」
「田中君と堀田君は死んだよ」
他の人のことは秘密にしておく。田中君と堀田君に関しては桜井君も知ってることだから、後々怪しまれないように教えただけだ。
「……厳しい状況で放り出されたもの。全員生きている方が奇跡だから、覚悟はしてたわ」
「委員長は強いね。他には何か知りたいことはある?」
「そうね……桜井君達もクオン君と一緒で旅行気分で動いているの?」
「そんな酔狂なのは僕くらいだよ。桜井君はみんなを探して一緒に帰る方法を探すって言ってたね。イロハはヨツバと一緒に行動してるってだけかな?ヨツバには自分で聞いて。僕からは説明しづらいから」
「会ったら聞いてみるわ。クオン君は知りたい情報を得たみたいだけど、私は謎が深まった気分よ」
「委員長は念話が使えるよね?それってどこまで届くの?」
委員長に会うに当たって鑑定のレベルは上げてある。
今は名前と種族、レベルとスキルまで分かる。
もう一つ上げるとパラメータの数値まで分かるけどそこまでは必要ない。
「なんで私が念話を使えるのを知ってるのかな?騎士団の人が勝手に話したりはしないと思うんだけど……」
「僕のスキルは万能なんだよ。それでどこまで届くの?」
「……目に見える範囲くらいよ。内緒話くらいにしか使えないわ」
「そっか。離れてても連絡を取れるかなって思ったけど、無理そうだね」
どこにいても届くくらいの範囲なら、全員集まった所で連絡をくれないかなと思ったけど、出来ないなら仕方ない。
たまに状況を確認しに行くしか無いな。
「あ、聞かないといけないことがあった。次に委員長と会いたい時はどうしたらいい?表向きに会おうとしたらまた断られるのかな?」
話も終わりみたいだし、今度こそ帰ろうかなって思ったけどその前に聞いておくことがあった。
あと言っておかなければならないことも。
「団長には事情が変わったって言っておくわ。一度会ってしまったのだから、神下さんが何を懸念していたのかはわからないけど、もう遅いでしょう」
「そうかもね。あと、委員長に覚えておいて欲しいことがあるんだよ」
「なに?」
「その時が来たら、僕に会いに来ないでほしいんだ。今はどの時のことか分からないと思うけど、その時が来たら分かると思うから」
「会いに行ったらどうなるの?」
「僕が困ったことになる。詰むかもしれない」
「……頭の片隅には入れておくわね」
よし、これで委員長を元の世界に帰しても僕の所に来ないだろう。
僕は委員長が泊まっている部屋をノックする。
この宿屋は現在騎士団で貸し切っているようで、店主を除けば騎士しかいない。
こうしてバレずに委員長の部屋の前まで来れるのだから、やはり幻影のスキルは使い勝手がいいな。
「ゴンズさん、こんな時間にどうされましたか?」
委員長が部屋のドアを開ける。
ゴンズという人の姿を幻影のスキルで自身に被せているので、委員長は訪ねてきたのが僕だと気づいていないようだ。
「内密に参謀にご相談したいことがありまして、少しお時間を頂けませんか?」
とりあえず、他の邪魔が入らないようにしたい。
「……入って」
少し間が気になったけど、部屋に入れてくれるようなので、入ることにする。
まずはっきりとさせないといけないことは、委員長が僕に会いたくないのか、それともアルマロスさんが僕と委員長を合わせたくないのか。
後者の方がいいのだけれど……。
「そこに座ってて。お茶を淹れるわ」
「ありがとうございます」
僕は委員長に言われた通りに椅子に座り、お茶を淹れてくれることにお礼を言う。
「どうぞ。それで相談があるのよね?斉藤君」
「……なんでわかったのか聞いてもいい?」
バレているようなので、幻影を解く。
大丈夫。いざとなったら逃げる準備は出来てる。
「ゴンズさんはあんな話し方をしないわよ。それに似せたみたいだけど声も違うわ」
「そっか。昼間に団長と話しているのを参考にしたんだけどね」
委員長と話す時は違ったのだろう。
ただ、これで一つ判明した。
委員長が嘘を言っていないなら、ゴンズさんでは無いことがわかったとしても、それが僕だとはならない。
そう考えると、委員長が僕に会わないようにしたということだ。
「それで、わざわざ変装してまで訪ねてきた目的を聞かせてもらえる?」
さて、どうしようか。
「昼間に騎士団を訪ねたら、参謀は王都にいるから不在だと言われちゃってね。会わせてもらえなかったから、仕方なくコソッと訪ねたんだよ。僕の方こそ会えなかった理由を聞いてもいいかな?僕が偽名を使ってることも知ってたみたいだし、その辺りを聞きたいな。元々は委員長がクラスの人を集めてるみたいだから、ちょうど近くにいるし会って話をしたいなくらいだったんだけどね」
委員長に騙し合いで勝てる気はしないので、正直にいくことにする。
「うーん。口止めされてないし言ってもいいのかな?斉藤君に会わないようにして欲しいって頼まれたから会わないようにしてただけよ。それが元の世界に帰る手掛かりになるみたいだからね。私としては斉藤君とも話をしたいと思ってたから、迷った結果、部屋に入れたわけだけどね。あ、今はクオン君って呼んだ方がいいのかな?」
委員長は顎に指を置いて考える素振りをした後、答える。
「クオンでお願い。それで、誰に頼まれたの?」
僕の知ってる人から聞いたのであればどちらかだとは思うけど……。
「……心当たりはあるみたいね。もしかしたらクオン君とも会ってるのかな?」
「ああ、神下さんに頼まれたんだね」
今の言い方でわかった。
僕が偽名を使っているのを知っている人で、委員長に言いそうなのは神下さんか神様を名乗る少年くらいだ。
「そうよ。神下さんと何かあったの?」
「何もなかったと言えば嘘になるんだけど、神下さんと対立してたりはしないよ。僕があることをしていて、それをやめてくれって言いにきただけだね。あることっていうのを話す気はないから聞かないでね。それで、神下さんは委員長に何か言ってた?」
「神下さんは元の世界に帰る方法を知ってるんだって。神下さんは帰り方が特殊で、帰るには私達の誰かの協力が必要だって言ってたよ。その誰かを特定出来たら、私達も元の世界に帰れるように動いてくれるみたい。どうやって帰るのかは教えてくれなかったけどね」
やっぱり神下さんは帰り方を知ってるよね。
だから僕の行動を知っても幻滅したりはしなかったわけだ。
「そうなんだね。それで、なんで委員長が僕と会わないことになる訳?」
「全く驚かないのね?元の世界に帰る方法を神下さんが知ってるっていうのに……」
「前に神下さんに会った時に、元の世界に帰る方法を知ってるんじゃないかとは思ったからね。やっぱり知ってたんだなくらいにしか思わないよ」
「ふーん。それで神下さんは私達がクオン君と出会うと帰れなくなるかもしれないから会わないようにして欲しいって」
「なんで帰れなくなるかは言ってなかったの?」
「教えてくれなかったよ。誰かと念話しているらしくて、許可が降りなかったみたいだね」
僕が委員長達を殺すかもしれないことは言ってないみたいだね。
でも、やっと神下さんが僕に何を言いに来たのかがわかった。
「………………」
どうせ聞いているだろうと、特定の人物とは僕の可能性が高いと言おうとしたら言えなかった。
神様はよっぽどハードモードにしたいらしい。
ただこれでほぼ確定だな。
神下さんは死んだら元の世界に帰れることを知っていて、天使だから普通の方法では死ねないから、天使を殺せる相手を探していると。
どうせあの神に、同じ異世界人にしか天使を殺せる人はいないとか言われたのだろう。
神下さんは誰が天使を殺せるのか分からないから、僕がその人物を殺してしまわないように、殺すのを待ってって言いに来たと。
実際は僕には殺せないなら、わざわざ神様が話せなくすることはないだろう……と思う。
殺せるのが僕なら待つ必要は無いな。
約束?の一ヶ月もとうに過ぎてるし、再開しよう。
「どうかしたの?」
口をパクパクした僕を不思議そうに委員長が見ている。
「いや、なんでもないよ。神下さんが言ってたのはそれだけ?」
「そうね。後はクオンくんが偽名を使ってることと、立花さんと中貝さんと桜井君と一緒にいるってことくらいね。そういえば立花さんと中貝さんはここにはいないの?」
「今は別行動中だよ」
さて、とりあえず知りたいことは聞けたし騒ぎになる前に帰ろうかな。
聞きすぎると色々と感づかれそうだし……。
「まだ帰らないでよ。私はクオン君の知りたいことを答えたんだから、次は私の番よ」
「もちろん答えられることなら答えるよ」
委員長にジッと見られる。
ヨツバといい委員長といい、なんで僕の思考が読めるのだろうか……。
「なんで神下さんは私達とクオン君が会わないようになんて言ったのかわかる?」
「委員長からさっきの話を聞いて神下さんの諸々の行動の理由はわかったけど、なんでかは言いたくないな」
「言えないんじゃなくて、言いたくないのね?」
「そうだね。いつかは言うかもしれないけど、今は言うつもりはないよ」
「……クオン君は元の世界に帰る方法に心当たりはある?」
「この世界から出る方法に心当たりはあるよ」
元の世界に帰る方法と同じ意味のようで、少し違う。
将来的に殺す前に敵対しないといけないことを考えると、元の世界に帰る方法を知っているとは言わない方がいい。
殺す=帰還だと委員長にバレた場合に、敵対するのが難しくなる。
「教えてくれる?」
「無理だね。これは言えない」
委員長と話していて一つ思うことがある。
神様は死んだら元の世界に帰れることを言ってはいけないと言っていたけど、さっき聞いているかもしれない神下さんに話しかけようとしたら声が出なかったことを考えると、声が出ることに関しては許容範囲なのではないだろうか……。
結果として僕がもたらした情報によって、死んだら元の世界に帰れることがバレたとしても。
……でも、確証がないから下手な賭けには出たく無いな。
現状だと言わない方が良さそうだし……。
「そう。言えないのね。神下さんについては?何か教えてくれることはあるの?」
別に口止めはされてないから言ってもいいか。
委員長から色々聞いたのに何も答えないわけにもいかないし……。
「神下さんは天使だよ」
「……別にクオン君の好みを聞いたわけではないわよ。クオン君から神下さんは天使だと告白されて私はなんて答えればいいのかしら?」
「天使のように可愛いみたいな比喩じゃないよ。神下さんは種族が天使なの。なんでそんなことになってるかは知らないけど、言葉通り神下さんは人間を辞めたんだよ」
「そっか、天使か。……変なこと言ってごめんね」
「別になんとも思ってないよ」
「クオン君は今まで何してたの?桜井君達と合流出来てるってことは一つの街にいたわけではないのよね?」
「そうだね。転々としているよ」
「目的は?」
「端的に言うなら旅行かな。このゲームみたいな世界を楽しんでるんだよ。他にも理由はあるけど、主な理由はこれかな」
「……そう。人それぞれよね」
なんだか哀れみの目を向けられた気がする。
「自分が変わってるって認識はあるから、気をつかわなくていいよ」
「桜井君達の他には誰かに会った?」
「何人かにはね。委員長は?何人くらい集まったの?」
「合流出来たのは7人ね。騎士団で保護してるのは5人だけだけど、あとの2人とも連絡は取れるわ」
思ったより集まってるな。
ということは、所在が不明なのは神下さんを入れずに8人か。
委員長からのメッセージに気づかないか、気づいても無視してるってことは、残りの人を探すのは苦労しそうだ。
「流石だね。僕の方を合わせれば全部で12人いるわけだから、後少しだね」
「まだ全然よ。半分も揃ってないわ。クオン君は?」
「委員長には残念な事を知ってはいるけど、聞く覚悟はある?」
「……聞いた方がいいことなんだと思うから聞くわ」
「田中君と堀田君は死んだよ」
他の人のことは秘密にしておく。田中君と堀田君に関しては桜井君も知ってることだから、後々怪しまれないように教えただけだ。
「……厳しい状況で放り出されたもの。全員生きている方が奇跡だから、覚悟はしてたわ」
「委員長は強いね。他には何か知りたいことはある?」
「そうね……桜井君達もクオン君と一緒で旅行気分で動いているの?」
「そんな酔狂なのは僕くらいだよ。桜井君はみんなを探して一緒に帰る方法を探すって言ってたね。イロハはヨツバと一緒に行動してるってだけかな?ヨツバには自分で聞いて。僕からは説明しづらいから」
「会ったら聞いてみるわ。クオン君は知りたい情報を得たみたいだけど、私は謎が深まった気分よ」
「委員長は念話が使えるよね?それってどこまで届くの?」
委員長に会うに当たって鑑定のレベルは上げてある。
今は名前と種族、レベルとスキルまで分かる。
もう一つ上げるとパラメータの数値まで分かるけどそこまでは必要ない。
「なんで私が念話を使えるのを知ってるのかな?騎士団の人が勝手に話したりはしないと思うんだけど……」
「僕のスキルは万能なんだよ。それでどこまで届くの?」
「……目に見える範囲くらいよ。内緒話くらいにしか使えないわ」
「そっか。離れてても連絡を取れるかなって思ったけど、無理そうだね」
どこにいても届くくらいの範囲なら、全員集まった所で連絡をくれないかなと思ったけど、出来ないなら仕方ない。
たまに状況を確認しに行くしか無いな。
「あ、聞かないといけないことがあった。次に委員長と会いたい時はどうしたらいい?表向きに会おうとしたらまた断られるのかな?」
話も終わりみたいだし、今度こそ帰ろうかなって思ったけどその前に聞いておくことがあった。
あと言っておかなければならないことも。
「団長には事情が変わったって言っておくわ。一度会ってしまったのだから、神下さんが何を懸念していたのかはわからないけど、もう遅いでしょう」
「そうかもね。あと、委員長に覚えておいて欲しいことがあるんだよ」
「なに?」
「その時が来たら、僕に会いに来ないでほしいんだ。今はどの時のことか分からないと思うけど、その時が来たら分かると思うから」
「会いに行ったらどうなるの?」
「僕が困ったことになる。詰むかもしれない」
「……頭の片隅には入れておくわね」
よし、これで委員長を元の世界に帰しても僕の所に来ないだろう。
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