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人助け

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ヨツバにニーナへの説明は任せて別れることにする。

その際に昨日のウルフ討伐の報酬と肉を渡した。

「これニーナに渡しておいて。昨日の依頼の報酬なんだけど、ニーナにヨツバの事お願いしたから、そのお礼として受け取ってもらって。依頼の報酬ってことで渡すと、ニーナのことだから受け取らないかもしれないからね」

「うん、わかった」

「話をすることになると思うし、明日は僕が宿の部屋に行くよ。部屋で待ってて」

「うん、それじゃあね」

ずっとモヤモヤしていたけど、立花さんとちゃんと話をしてスッキリした。

スッキリはしたけど、昨日危ない目にあったばかりなので依頼を受けるのはやめておく。

森には入らずに、スライムを倒しつつ薬草を採取しようと思う。
レベルは上がらないだろうけど、お金は貯まるし危険はほとんど無いだろう。

僕は街の外に出て、街道沿いを散歩のように歩きながら生えている草を採取していく。
たまに見つけたスライムは魔法で倒す

街道沿いをウロウロしていただけなので、特に危ないこともなく疲れたところで街に戻ることにした。

薬草と毒草を買い取ってもらおうと冒険者ギルドに行くと、ギルドの中が騒がしくなっていた。

話を聞いてみると盗賊が近くで出て、商人の馬車が襲われたらしい。
幸いなことに死人は出ていないようだが、護衛の冒険者の1人が大怪我をし、積み荷が馬車ごと奪われてしまったので被害は相当なもののようだ。

護衛をしていた冒険者パーティが弱かったわけではなく、盗賊が強かったようだ。

今は討伐隊を組む為に、ギルド内が騒がしくなっている

この様子だと薬草の買取は後日にしたほうがいいな。

僕がギルドを後にしようとした時、ギルドの奥から声が聞こえた

「治癒士はまだ来ないのか?早くしないと死んじまう」

僕は立ち止まり、振り返る。男性が受付の奥にある部屋から出てきて叫んだところだった

盗賊に襲われて大怪我をしたって人の仲間の人だろうか

「誰か上級ポーションは持ってないか?普通のポーションだとこれ以上回復しないんだ。治癒魔法を使えるやつでもいい。誰でもいいからあいつを助けてくれ」

男性は周りに助けを求めるけど、周りの人は目を逸らしている
どのくらい希少なものかはわからないけど、上級ポーションを持っていないのだろう

僕は迷ったけど、男性の所に行き声を掛ける

「回復魔法が使えます。どのくらい効果があるかはわかりませんが、治癒士が来るまで持たせることは出来るかもしれません」

「本当か!頼む」

僕は奥の部屋に入る

そこには胸から脇腹にかけて大きく斬られて、血を流したまま横たわる男性がいた。
まだ息をしているけど、顔色がかなり悪い。血を流しすぎているんだと思う

僕は男性に回復魔法を掛ける

「ヒール!」

傷が癒えていく。でもまだ足りないようだ

僕はリキャストタイムが終わるのを待つ。

「魔力切れか?無理するな、おかげで治癒士が来るまで持ちそうだ。ありがとう」
仲間の男性に言われるが、魔力が切れたわけではない。リキャストタイムなんてものがあるのは、僕だけだろうから説明が出来ない。

「まだ魔力は大丈夫です。疲れただけなので、少し休めばまだ使えます」
なので疲れたことにした。

リキャストタイムが終わったのでもう一度回復魔法を掛ける
「ヒール!」

少し顔色が良くなったように見える。でもまだ傷は塞がっていないのでもう一回だな。MPも無いので使えるのは次で最後だ。

「おい!大丈夫か?ありがたいが本当に無理はしなくていいからな」
リキャストタイムの事を知らないので、魔法が途切れる度に心配される。

「大丈夫です。体力的に連続で使えないだけですので……」
貧弱キャラになってないか心配になる

少し待ってから再度回復魔法を掛ける

「ヒール!」

よし、なんとか傷は塞がったな。傷跡は残ってるけど、顔色も大分良くなったように見える。
まだ目を覚さないし、万全では無さそうだけど、峠は越えたように思える

もうMPがヒールを使えるだけ残っていない。
ヒールは1回発動するのにMPを7も使うので、燃費が良くない。

「魔力が切れたのでこれ以上は使えません」
僕は男性に言う。これ以上出来る事はないので、帰ろうするが、
「ありがとう!本当にありがとう」
そう言われながら、男性に抱きつかれた。

男に抱きつかれても嬉しくない。そして苦しい。
離れようとするが引き剥がせない。
くそ!もっとSTRを上げておけばよかった

「苦しいので離れてください」

僕はタップする

「あ、ああ。悪かった。本当にありがとう。君はすごい治癒魔法の使い手なんだな。傷口がほとんど塞がっている」

まだレベルが低いのでそんなに言うほどすごくないはずなんだけどなぁ。
自分にヒールを使っても、今はHPが10回復するだけなんだけど……
この人が大袈裟に言っているのか、それとも回復魔法はチートなのかわからない

男性にお礼を言われていると、治癒士の方が入ってきた。
ちょうどいいので、見させてもらおう。もしかしたら回復魔法がチートなのかどうかわかるかもしれない。
チートだとしたらあんまり人前で使わない方がいいし……

「患者はこの方ですか?聞いていたよりも軽症にみえますが……」
治癒士は少し困惑している

死にそうだと言われて急いで来たら、言うほど重症でなければこういう反応になるのも当たり前か。

治癒士は、横になっている男性に治癒魔法を掛ける。

しばらくの間、治癒魔法を掛け続けていると、残っていた傷跡が少し薄くなった

うーん、よくわからないな。もう一回ヒールが使えれば同じくらいになったかもしれないし、とりあえず大事にはしないでもらうように言っておくか。
後々面倒になっても困るし……

「ありがとうございました」
男性は治癒士にお礼を言っている

「いえ、お大事にしてください。私が来る前にほとんど治療は終わっていたようですので、治癒代は銅貨5枚で大丈夫です」
男性が治癒士に銅貨を渡す

治癒士は帰っていった。

僕も大事にしないように言って帰るとするか

「お願いがあるんですけど」
僕は男性に話しかける

「ああ、お礼だろ?もちろん払わせてもらう。払える額ならいくらでも払うぜ」

「いえ、そうじゃなくて、僕が治療したことは黙っててもらえますか?」

「なんでだ?黙ってて欲しいなら話はしないが…」

「あまり目立ちたくないだけです」

「……わかった。だが礼はさせてくれ」
お礼目的で助けたわけじゃ無いから、別に良いんだけどなぁ。
まあ、貰えるものは貰っておこうかな

「あのくらいの治療の場合、いくらくらい掛かるんですか?」
僕は相場が分からないので聞くことにする。普通にもらえればそれでいい。足元を見るようなことはしたくない

「大銀貨5枚くらいだろうか……。命が助かればいいと思っていたが、あそこまで治してもらえるならもっと払ってもいい」
大銀貨って何Gだ?500G?1000G?

「村から出てきたばかりでわからなくて恥ずかしいのですが、大銀貨って銀貨何枚分ですか?」
聞かないとわからないので、聞くことにする。
お金の価値がわからないってヤバい気がするけど、わからないものは仕方ない

「銀貨10枚だ。大銀貨10枚で金貨1枚だな」
なるほど、大銀貨が1000Gで金貨が10000Gなんだな。

これでわかった。回復魔法はチートだ!

「それじゃあ大銀貨5枚下さい」
労力的にはこんなにもらっていいのかわからないくらいだけど……

「いいのか?遠慮しなくていいぞ?」

「大丈夫です」

「…ありがとう、正直助かる。少し待っててくれ」
男性は部屋から出ていき、少しして戻ってきた

「もらってくれ」
男性から大銀貨を5枚もらう

「ありがとうございます」
所持金がホクホクだ

「お礼を言うのはこっちの方だ。そのくらいで恩を返せているとは思ってないから、何かあれば遠慮なく言ってくれ。俺はライオスだ、見ての通り冒険者をしている」

「ライオスさんですね。何かあれば頼らせてもらいます。それじゃあ帰りますね」
僕は部屋を出る

――[救護者]を獲得しました――

頭の中に機械音が流れた
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