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第五話(生者視点)
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「ですからっ!マリアベル様が現れたのですっ!」
そう言ってリリーが私の執務室に飛び込んできた。リリーは真っ青な顔でガタガタ震えている。
ショーンを産んでから、少し情緒不安定なところがあったが、今日の様子はかなり酷い。
側妃であるリリーを暗殺しようとした罪で処刑した、前王妃のマリアベルが部屋の鏡に映っていたなどと。
「なにかの見間違いだろう。」
「…間違いありません…!ロンバルト様!……あれは……」
私は執務机から立ち上がり、震えるリリーを抱きしめる。
「大丈夫だよ、リリー。マリアベルが現れるなんて有り得ない。」
「そうかしら……でも…」
「リリー。優しい君がマリアベルの事を未だに気にしてしまうのは仕方がないのかもしれない。
でも、マリアベルは自業自得だ。
私の子どもを孕っている大事なリリーを暗殺しようだなんて、普通に考えても王家に対する反逆罪だ。
王妃の地位についているからこそ許されることではない。」
ついつい力を込めてしまったのかリリーが腕の中で身動いだので、慌てて腕を緩めると色の戻った頬に口づける。リリーは恥ずかしそうにはにかみながら、私の頬に口づけると執務室から退室した。
いつまでも初々しいリリーに思わず口元が緩んでしまう。
それとなく目をそらしてくれていた側近たちを促して執務机に戻る。
「さぁ仕事だ」
マリアベルの姿を見たなどと、そんな馬鹿馬鹿しい。出産後、不安定になっていたリリーの気のせい事だろうと思っていた。
しかし、日に日に憔悴していくリリーを見ていると、なんとかしてやりたくて、宰相補佐官のリオルと騎士団第一小隊長になったバークの2人に相談してみた。
「疲れているんじゃないか?慣れない王妃の仕事を始めたばかりだからな。」
「急に王妃殿下の仕事を引き継がれましたから、慣れるまで少しペースを落としたらいかがでしょうか?」
リオルとバーク、そして今は地方に視察に出ているベルクは学生時代から私を支えていてくれた仲間だ。私とリリーが婚姻を結ぶのに手を貸してくれたのもこの3人だ。
私とリリーのことを最もわかってくれるのもこの3人だろう、ありがたいことだ。
心が軽くなったせいだろうか、少し時間ができたので、ショーンの顔を見に行こうと思い廊下を歩いていくと、ショーンの部屋の前にメイドがたむろっているのが見えた。
「そこで何をしている。」
慌てた様子でメイドたちが一斉に頭を下げる。
「ショーンに何かあったのか?」
「恐れながら陛下に申し上げます。ショーン王子殿下には健やかにおすごしいただいております。……ただ……」
「なんだ、はっきり言え。」
メイドたちはお互いに目配せすると、意を決したように進言した。
「………部屋が冷えているのです。」
「は?」
「ショーン殿下のお部屋が、陽が入っているのですが、有り得ないほど冷えているのです。」
「冷えているとはどういうことだ!お前たち職務を全うしていないのではないか!!」
「お許し下さい、陛下。」
許しを乞うばかりで話にならないメイドを置き去りに部屋へと入る。
南向きの窓からは陽が燦々と入ってくるのに、張り詰めたような空気にぞくりとする。
静かな室内には、まるで呪われた呻き声のようなものが聞こえる。身の毛もよだつような呻き声の合間に、小さなショーンの声が聞こえた私は、ベビーベッドにゆっくりと近寄る。
何かがいる!!
ベビーベッドの周りに、おぞましい気配を感じた私は、腰の剣に手をかけ、大声でその何かに怒鳴りつけた。「おのれ!化物!!我が子から離れろっ!!」
「ふぇえっ!ふえぇ~ん!!」
堰を切ったようにショーンが鳴き始めるのと同時に、その怪しい気配が消えた。
部屋の中を覗いていたのだろうか、メイドたちが慌てた様子で、泣いているショーンを抱き上げる。
部屋の中は柔らかな光と、温かな空気に満たされている。
………アレは、なんだ?…
そう言ってリリーが私の執務室に飛び込んできた。リリーは真っ青な顔でガタガタ震えている。
ショーンを産んでから、少し情緒不安定なところがあったが、今日の様子はかなり酷い。
側妃であるリリーを暗殺しようとした罪で処刑した、前王妃のマリアベルが部屋の鏡に映っていたなどと。
「なにかの見間違いだろう。」
「…間違いありません…!ロンバルト様!……あれは……」
私は執務机から立ち上がり、震えるリリーを抱きしめる。
「大丈夫だよ、リリー。マリアベルが現れるなんて有り得ない。」
「そうかしら……でも…」
「リリー。優しい君がマリアベルの事を未だに気にしてしまうのは仕方がないのかもしれない。
でも、マリアベルは自業自得だ。
私の子どもを孕っている大事なリリーを暗殺しようだなんて、普通に考えても王家に対する反逆罪だ。
王妃の地位についているからこそ許されることではない。」
ついつい力を込めてしまったのかリリーが腕の中で身動いだので、慌てて腕を緩めると色の戻った頬に口づける。リリーは恥ずかしそうにはにかみながら、私の頬に口づけると執務室から退室した。
いつまでも初々しいリリーに思わず口元が緩んでしまう。
それとなく目をそらしてくれていた側近たちを促して執務机に戻る。
「さぁ仕事だ」
マリアベルの姿を見たなどと、そんな馬鹿馬鹿しい。出産後、不安定になっていたリリーの気のせい事だろうと思っていた。
しかし、日に日に憔悴していくリリーを見ていると、なんとかしてやりたくて、宰相補佐官のリオルと騎士団第一小隊長になったバークの2人に相談してみた。
「疲れているんじゃないか?慣れない王妃の仕事を始めたばかりだからな。」
「急に王妃殿下の仕事を引き継がれましたから、慣れるまで少しペースを落としたらいかがでしょうか?」
リオルとバーク、そして今は地方に視察に出ているベルクは学生時代から私を支えていてくれた仲間だ。私とリリーが婚姻を結ぶのに手を貸してくれたのもこの3人だ。
私とリリーのことを最もわかってくれるのもこの3人だろう、ありがたいことだ。
心が軽くなったせいだろうか、少し時間ができたので、ショーンの顔を見に行こうと思い廊下を歩いていくと、ショーンの部屋の前にメイドがたむろっているのが見えた。
「そこで何をしている。」
慌てた様子でメイドたちが一斉に頭を下げる。
「ショーンに何かあったのか?」
「恐れながら陛下に申し上げます。ショーン王子殿下には健やかにおすごしいただいております。……ただ……」
「なんだ、はっきり言え。」
メイドたちはお互いに目配せすると、意を決したように進言した。
「………部屋が冷えているのです。」
「は?」
「ショーン殿下のお部屋が、陽が入っているのですが、有り得ないほど冷えているのです。」
「冷えているとはどういうことだ!お前たち職務を全うしていないのではないか!!」
「お許し下さい、陛下。」
許しを乞うばかりで話にならないメイドを置き去りに部屋へと入る。
南向きの窓からは陽が燦々と入ってくるのに、張り詰めたような空気にぞくりとする。
静かな室内には、まるで呪われた呻き声のようなものが聞こえる。身の毛もよだつような呻き声の合間に、小さなショーンの声が聞こえた私は、ベビーベッドにゆっくりと近寄る。
何かがいる!!
ベビーベッドの周りに、おぞましい気配を感じた私は、腰の剣に手をかけ、大声でその何かに怒鳴りつけた。「おのれ!化物!!我が子から離れろっ!!」
「ふぇえっ!ふえぇ~ん!!」
堰を切ったようにショーンが鳴き始めるのと同時に、その怪しい気配が消えた。
部屋の中を覗いていたのだろうか、メイドたちが慌てた様子で、泣いているショーンを抱き上げる。
部屋の中は柔らかな光と、温かな空気に満たされている。
………アレは、なんだ?…
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