バレンタインを救え!大作戦

武藤勇城

文字の大きさ
42 / 47
第八章 世界崩壊 -せかいほうかい-

39 バレンタインを救え!大作戦 その4 あとは頼んだよ

しおりを挟む
「いち、に。いち、に」
(目を覚ませ!)
(誰……ンゴ? 僕の中に誰かいるンゴ)
「ね! さっき告白してくれたでしょ? 実は私も。告白があるの」
(僕は高橋耕作だ)
(ンゴ……高橋耕作は僕ンゴよ)
(僕は未来から来た。時間がない。よく聞け)
「私の告白はね。あのチョコレートとサンドイッチ」
(栞奈は僕が邪魔で、僕を殺したいほど憎んでる)
(ンゴ……そんな気もしてたンゴ)
「実はあれ、私が徹夜で作ったの! おかげで寝不足!」
(僕を落とすつもりだ)
(栞奈に殺されるなら、それもいいンゴね)
(ダメだ! それじゃ栞奈を救えない!)
「この日のために大学で研究してきたんだ。ずっと待ってた、このチャンスを」
(橋の上を見ろ)
(ン~っゴ)
(あそこに防犯カメラがある)
(ンゴォ!?)
「人の体が動かなくなるおクスリ。睡眠薬とか、しびれ薬みたいなものね。少し動けなくなる程度なら、100均やドラッグストアで売っているものだけで作れるの」
(一部始終が録画されてる)
(ンゴ!?)
(栞奈は逮捕され、独房の中で看守や、他の死刑囚に酷い暴行を受け、犯され穢され……命を落とす)
(ンゴォ~!?)
「パンとチョコ。タオルにも沁み込ませてあったよ」
 初めて明かされる栞奈の未来。過去の僕は驚愕の表情を浮かべている。そりゃそうだ。
(僕はその未来を変えるために来た)
(どうすればいいンゴ!?)
(彼女がやる前に……)
(自分から落ちればいいンゴ? それで栞奈は助かるンゴね!?)

   ×   ×   × 

「全てが終わったら、離魂の術を使うんだ」
「うん」
「魂は入るべき器がなくなれば、四散し無に還る。完全な死だ」
「覚悟は出来てるよ」
「耕作様には、二つの選択肢がある」
「?」
「一つは、元の体から魂を切り離し、今この時代の依代へと帰る」
「戻れるの?」
「動物の帰巣本能って知っているかい? 自分の住処へと迷わず帰って来る能力だ」
「帰巣本能……」
「帰魂の練習をした時、離魂で魂を切り離し、そのまま先代の器に戻ったね」
「うん」
「その時の感覚を思い出せ! 勾玉も触媒もある。きっと帰って来れる! 朱雀の待つこの時代へ!」

   ×   ×   × 

「耕作様の御体は此処にあります! 使命を果たして、必ず御戻り下さいませ。私、ずっとこうして御待ちしております! ずっと、ずっと、御待ちしていますから!」

   ×   ×   × 

「もう一つは、過去の耕作様の魂を切り離す」
「えっと?」
「分かり易く言えばね、昔の自分を殺すんだ」
「は!?」
「そして今の耕作様が体を乗っ取ればいい」
「そんな選択……」
「耕作様にはその権利がある! 生きる権利だ。彼女を諦めて自分だけが助かる。そういう選択肢だってあるんだ」
「……」
「忘れないでくれ。逃げてもいいんだってことを」

   ×   ×   × 

 ものすごい高熱。体は限界だ。もうこの時代にはいられない。
(聞いてくれ。僕に栞奈を救う方法を教えてくれた人たちは、本当にすごい人たちだった。僕には到底真似出来ないよ……)
 使命に身を捧げた女がいた。日本を憂い持てる力全てを注いだ男がいた。片腕を失っても尚笑う男の背中があった。影に生き影に死ぬ男がいた。極限の生活。樹を齧り泥を啜って懸命に生きる人々。獰猛な獣に狩られる人類。今この世界がどれほど幸せに満ちているか。短い時間で伝えられるだけ伝えた。
(あとは頼んだよ。僕は栞奈のためなら喜んで命を捧げるって知ってるけどね!)

   ×   ×   × 

「誰か! 動ける者は?」
 薄闇に包まれた中庭に数名の男たちが倒れていた。みな髪の毛は真っ白で、顔も手も干乾びミイラのよう。
「誰も残っていないか……」
 呟いた男。皺だらけで齢100歳になろうかという風貌。しかし眼だけは爛々と輝いている。
「青龍。私は手が離せません」
「分かっているよ朱雀。君は君の仕事だけやりなさい」
 懐から取り出したのは、三種の神器が一つ。
「八尺瓊勾玉は砕けず残った。これも天照大神様の導きか。残り僅かな生命力、全てを預けよう。勾玉よ。彼女に伝えてくれ。耕作様がどれほど深く君を愛していたか。君のためにどれだけ努力したか。思い出させてあげてくれ。彼と過ごした楽しかった日々を」
 青龍の言葉に反応するかの如く、八尺瓊勾玉は淡い光を放つと、粉々に砕け散った。
「オパールよ。希望の石よ。彼の忍耐と、純粋な想いが彼女に届くように。僅かな幸運と、二人が歓喜の結末を迎えられるように。せめて祈らせてくれ……」

   ×   ×   × 

 ……それなのに。ただそれだけが出来なかった。心臓がドキドキする。濃紺の小箱が妙に熱い。なんでよ! ここまで来て……なんで出来ないの! 私の意気地なし!
「栞奈?」
 私どうしちゃったんだろう。海や川で一緒に泳いだ事。受験勉強の日々。あの夜の出来事。思い出がフラッシュバックする。
「栞奈が望むなら……」
 ブタが自ら鉄柵の方へ向かっていく。
「僕が邪魔なんだよね……」
 立てない足で。震える腕で。這いずるように鉄柵を掴んで登ろうとする。待って! ダメ! そこを乗り越えたら落ちちゃう!
「栞奈。大好きだよ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

処理中です...