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夢の冒険

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夢の中では、誰もが好き放題できる。
青い空を自由に空を飛んだり、キラキラした広い海の上を走り回ったり、山ほどのご馳走をおなかいっぱい食べたり、はたまた悪い怪獣をやっつけるヒーローになったり。
夢の中では、みんながみんな主人公です。


ふかふかお布団ですやすや眠っているのは、7歳の男の子、ゆめとくん。
ゆめとくんは眠る時に見る夢が大好き。
夢の中のゆめとくんは、悪い怪獣をやっつけて、いつだってみんなを助けるヒーローです。

むふふ。むふふ。

ゆめとくんはすやすや眠りながら笑っています。


ある日、ゆめとくんは怖い夢を見ました。
それは、いつもみたいにヒーローになる夢じゃなく、空を飛ぶ夢でもなく、とても現実的な夢。
なんと、ゆめとくんは昨日のテストで0点を取ってしまい、先生に怒られてしまいます。
ハッと起きたゆめとくんは、夢か、とひと安心。

その日、学校へ行くと、ゆめとくんのテストは0点。
先生に怒られてしまいました。

「これ、今日の朝夢で見た!」

ゆめとくんはすぐ気が付きました。夢で見た出来事が現実でも起きてしまったのです。
ただ、この時はまだ気のせいだろうと済ませました。



その日の夜、ゆめとくんはまた怖い夢を見ました。
朝学校へ行こうと登校すると、後ろから車が猛スピードで向かってきます。
ゆめとくんはすぐに気が付き、車を避けました。
車はゆめとくんの横をギリギリのところで通り過ぎ、電柱にぶつかってしまいました。

ゆめとくんはそこで目が覚めました。


朝、ゆめとくんは登校すると、昨日の夢が頭から離れませんでした。
ずっと考えながら歩いていると、後ろから、

「危ない!!」

と、交通安全のおばさんの叫び声でハッとしました。
ゆめとくんは振り返ると、猛スピードで車が向かってきます。ゆめとくんは急いで道の端に寄り、車を避けました。
車はゆめとくんの横をギリギリ通過して、目の前の電柱にぶつかってしまいました。

ゆめとくんは、怖くなって泣いてしまいました。


その日の夜、ゆめとくんは寝るのが怖くなりました。

「やっぱり夢で見た事が本当に起こるんだ…」

ゆめとくんはふかふかの布団の中で、怯えていました。
すると、いつの間にか眠りに落ちてしまい、すっかり夢の中へ。

夢の中では、お父さんとお母さんがゆめとくんを抱っこしています。
辺りは真っ暗で、周りはおおきな木がいっぱいありました。
ゆめとくんは抱っこをされて、スヤスヤ眠っています。
すると、お父さんとお母さんはおおきな木の前で立ち止まり、木の根っこにそっとゆめとくんを置きました。

「さよなら、ゆめと」

お父さんとお母さんは、ゆめとくんを置いてどこかへ行ってしまいます。

(まって!お父さん!お母さん!置いていかないで!)

ゆめとくんは1人で置いてかれ、寂しくなり泣きました。


そこで、目が覚めました。まだ真夜中です。
ゆめとくんはお母さんに会いたくなり、リビングに行きました。
リビングではお父さんとお母さんがなにやらお話していました。
ゆめとくんはお母さんに抱きつき、怖い夢を見たと言いました。

「お父さん、お母さん、僕を置いていったりしないでね」

「何言ってるのよ。当たり前でしょ。さあ、もうおやすみ」

「ゆめと、よく寝るんだぞ。また明日な」


お父さんとお母さんは泣いているゆめとくんをなだめ、寝室へと連れていきました。

お母さんに寝かしつけられ、ゆめとくんはぐっすりと眠ってしまいました。




「もうねた?」

「ええ。寝たわよ」

「じゃあ、行こうか」


お父さんは車のエンジンをかけました。
こんな真夜中に、どこへ行くんでしょうか。
お母さんは寝ているゆめとくんを抱き抱え、車に乗せました。
ゆめとくんはぐっすりと、すやすや眠ったままです。



「お父さん、お母さん、大好き…」


ゆめとくんは寝言を言っています。

お父さんは前だけを向き、ゆっくりと車を走らせました。
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