『ダンジョンdeリゾート!!』ダンジョンマスターになった俺は、ダンジョンをリゾートに改造してのんびりする事にした。

竹山右之助

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第二章 エンドレスサマー

第二章14 〈移転?〉

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「ヤキメン! ヤキメン!」
「アンタ本当に好きねー」

 アルモンティアに着いた俺は、早速マルチナさんの店に行こうと思ったんだけど、タロに約束を果たせと言われ、仕方なくヤキメンを買いに行く事になった。

 ジロにもお土産買ってやりたいけど、土産もヤキメンでいいか。


 大通りを進み、アイラさんのヤキメン屋台に近くなるといつもの香ばしい香りが辺りに漂い始める。

「フワァ……イイ匂い。鼻が良いオイラには堪らないよ~」
「そっか、忘れがちだけどアンタ狼だったわね」
「狼種の頂上に君臨するオイラを捕まえて、忘れがちとは失礼しちゃうぞ」
「俺はタロがフェンリルである事を疑ってるけどな」
「ユウタまで~」
「キャハハハ」


 おっ!? ラッキー! 今日はそんなに屋台に並んでないぞ。

 屋台の列の最後尾に並び、順番が来るのを談笑して待つ。
 前にジョルジュが言っていたけど、知らない人が見たら確かに独り言を話している変な人に見られても仕方ないかもね。
 俺は気にしないけど。


「おーいユウター!」

「おっ?」

 声のする方を見ると、俺が依頼した冒険者三人組が手を振りながら近づいて来た。


「こんな所で会うなんて偶然ね」

「こっちの台詞よ」

 レナに対して答えたリリルだが、リリルの言葉に三人は反応しない。

「リリル、ここじゃリリルの言葉理解出来るの、俺とタロだけだから」
「あ、そっかぁ」

「リリルちゃん話してくれてた!? ごめんね、あのダンジョンじゃないと……」

 リリルはジェスチャーで「気にしないで」と伝える。

「それで今日はどうしてアルモンティアに?」

「ああ、町外れの人形店に用があって」

「マスコの新しい身体?」

「そうそう。オーダーしてあったんだけど、そろそろ出来たかなって。みんなはヤキメン?」

「それがさ……」

 バンチがアイラさんの屋台が移転しなくちゃならない事と、それならとエンドレスサマーを勧めたら、詳しい話が聞きたいと言っている事を教えてくれた。

 もしアイラさんのヤキメン屋台が、エンドレスサマーに出店してくれるのなら、こんな願ったり叶ったりな事はない。
 皆んなヤキメン大好きだし、全く知らない人より多少でも知ってる人の方が、俺もやりやすいしね。


「それでユウタがいつアルモンティアに来るんだろって話してて……」
「連絡手段を決めてなかったから、とりあえず俺達だけで話しようと思ってさ」
「それで店の行列が落ち着くのを待ってたら、どこぞのメルヘンテイマーが並ぶのが見えたった話さ」
「「ジョルジュ~」」
「ケッ」

 相変わらず斜に構えるジョルジュは気にせず、話しやすいバンチとレナと話を進める。

「こんな大勢で押し掛けても、迷惑だよね?」

「そうね。はじめに声を掛けたバンチとユウタ達だけの方がいいと思うわ」
「なっ……」
「ジョルジュは私とギルドで待ちましょう」

 ジョルジュのテンションが明らかに下がったな。

「バンチよ。絶対アイラさんを引き込むんだぞ」
「はいはい。じゃあ後でギルドでね」

 何度も屋台を振り返って見るジョルジュを、レナが引き剥がすようにして連れて行った。


「お店の話もいいけど、ヤキメンちゃんと買うんだぞ」
「わかってるって。約束したもんな」
「私は早くマスコの新しい身体が見たいな~」

 俺たちが会話しているのを、じっと見ていたバンチがニヤッと笑いながら、

「こうやって傍から見てると、確かに会話してる様には見えないね。事情を知らなかったジョルジュがメルヘンって言ったのもわかる」

 そりゃ関係ない人から見たら、本当に会話しているのは分からないわけだもんな。
 今後は人目が多いところでは、仲間内の会話も気を付けた方がいいかもしれないな。

 そんな事を話していると、ついに俺達の順番が回って来た。


「いらっしゃい! お、お兄さん達また来てくれたんだね、バンチと知り合いなのかい?」

 今回も俺達の顔を覚えていてくれて、顔を確認した瞬間に声を掛けてくれる。
 相変わらず素晴らしい接客だ。

「とりあえずヤキメン3つで、一つ玉ねぎ抜きで」

「いつもと同じだね! 毎度あり!」

「アイラさん、さっき話してた店出したい人探してるのって、ここにいるユウタなんです」

 バンチの口から出た言葉が、想像もしてなかったことのようで、アイラさんが目を見開いて固まってしまった。
 数秒後、慌てて動き出す。


「まさか、たまに来てくれてた狼とピクシー連れの兄ちゃんが、その人だったとはね……世界は狭いね~」

「アイラさんも、ゆっくり話聞きたいですよね? どうしましょう?」

 注文したヤキメンを受け取り、お金を支払いながら相談する。

「とりあえず私は店が終わるまでは動けないからな~」

「じゃあ俺マルチナさんの店に用事があるんで先済ませて来ます。アイラさんのお店終わる頃に、冒険者ギルドの酒場で集合でいいですか?」

 アイラさんとバンチの同意を得て、ひとまず解散する事になった。

「じゃ、またあとで」

 アイラさんとバンチに手を振って別れ、マルチナさんの店に向かう。


「アイラが来てくれたら、ヤキメン食べ放題だな!」
「……お金は払えよ」
「タロは本当バカね」
「でも来てくれるといいな」

「見えてきたわよ。マスコの身体楽しみね~」

 アルモンティアの東の外れにあるマルチナの店『フランソワ』に入ると、俺達に気付いたマルチナさんが、相変わらずのテンションで話しかけてくる。

「やだぁ、ちょっと何~? 急に来ないでよ~」

「……急にしか来れないですよ……」

「わかってるって~! あ~ん今日もワンコとピクシーちゃん超絶可愛いじゃん!」

 狼なんですけどね……イチイチ訂正しないけど。

「それで例の物出来てます?」

「出来てる出来てる! さすがの私も、あんなおっきい人形作るの初めてだから、楽しかった~!」

 そう言いながら店の奥に消えて行く。
 そして戻ってきた時には、俺のオーダー通りの人形を持っていた。

「うんしょ……と。どう? 君の新しい恋人だぞ!」

 恋人ではない。まだ変な性癖の持ち主と勘違いしているな。
 だがわざわざ訂正はしない。

「完っ璧です!」

 俺がマルチナさんにオーダーしたのは、セミロングの黒髪で茶色の瞳のメイド服を着た人形だ。
 肌の色からメイド服の色合いまで、全ては色味が完璧に俺の要求を満たしていた。

「手直しとかはいい?」

「大丈夫です。このまま貰って行きます」

 俺は人形を【四次元的なアレアイテムポケット】に仕舞ってから、代金の残金を支払った。
 マスコにプレゼントするのが、今から待ち遠しい。
 喜んでくれるといいけど……。


「この後どこか行くの~?」

 支払ったお金を仕舞いながらマルチナさんが尋ねてきた。

「冒険者ギルドでアイラさんと待ち合わせしてるんです」

「なんでアイラと? 冒険者ギルド?」

「実は……」

 俺はこれまでの経緯をマルチナさんに話した。
 アイラさんのお店の事を他人に話すのはどうかとも思ったが、アイラさんの親友のマルチナさんなら知る権利はあるかなと思って……そんな心配をよそに、マルチナさんはアイラさんのお店が移転の危機に晒されている事を承知していた。
 むしろ、エンドレスサマーに出店する事に賛成のようだ。

「決めた! 私もその話し合いに参加しちゃうぞ!」

「へ?」

 そっからのマルチナさんの動きは早く、手早く『フランソワ』を閉店して、一緒に冒険者ギルドに行く事になった。

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