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第一話 ある老人の死
ミドウからの挑戦 その3
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「昨日、話したろう。ミドウはどうしたらもっと事件が起きないように出来ないかと考えてるって」
「そういえば」
「アイツの行動原理は[犯罪を未然に防ぐ]だ。だから加担は絶対しない。するとすれば、最悪の結果にならないようにするためだ」
「え、でも実際に無理心中幇助してませんか」
「奥さんは無事だろ」
(そういえばそうだ。ということは、ミドウさんは無理心中──つまり奥さん殺しを未然に防いだということなの?)
マキが悩んでいると、クロは残ったレモン酎ハイを飲み干し、店を出ようとうながした。
※ ※ ※ ※ ※
帰り道、クロとマキは無言だった。クロが険しい表情をしていたのでマキが話しかけられなかったのだ。
「ここまでだな。マキくん、気をつけて帰るんだぞ」
「はい、班長。今日はご馳走さまでした」
「ま、勝負に勝ったご褒美だ。それと明日は早めに出てきてくれ、カドマ達にも伝えておくから」
「了解しました」
ぺこりと頭を下げると、マキは帰途につく。クロもある程度見送ってから自宅へと向かった。
(正しいのは分かる。でも、それでいいのだろうか……)
マキは胸のもやもやが、まだ消えてなかった。
※ ※ ※ ※ ※
翌朝、少し早めに出勤すると、入口付近でミツがうろうろしていた。
「ミッツ先輩、おはようございます」
「お、おはよう。今来たところなんだ、さ、行こうか」
絶対誰か来るのを待っていたとバレバレなのに、そうじゃないフリをするので、マキは朝からため息が出る。
案の定、刑事課にはカドマとタマがもう来ていた。
「遅いぞ、ふたりとも。先輩を待たせるもんじゃない」
体育会系丸出しの言葉でタマが叱る。
さっそく顔面蒼白となるミツと、だんだん慣れてきて図太く挨拶するマキを見て、カドマはクスクスと笑う。
「昨夜、班長から連絡があってな。詳しいことはマキくんに訊いてくれとのことだった。何かあったのかい」
「じつはですね……」
マキは昨夜の出来事をメンバーに話した。
※ ※ ※ ※ ※
話を聞いてカドマはため息をつき、タマは憤り、ミツは困惑する。
「内外氏による無理心中の可能性が出てきたとはなぁ。班長はなんと?」
「証明のしようがないと」
「だよなー。けど、面白くねぇなぁー」
タマが大きな声で言いながら伸びをする。
「そうなると、ミドウさんの行動が変わってきますね」
ミツの意見に、カドマがほほぅと感心する。
「さすがミッツ先輩だ。どう変わるか説明してくれないか」
「なんだよカドマ、そのミッツ先輩って」
「マキくんがミツのことそう呼んでるんだよ、カッコいいから私もそう呼ぼうかなってな」
「やめてくださいよカドマさん、ミツでいいです」
「じゃあミツ、どう変わるかマキくんに説明してやってくれないか」
「わかりました」
ミツは左隣に座るマキに向いて話しだす。
「事の起こりは、ミドウさんからの通報だった。そこに班長とマキくんが行くと、内外氏のご遺体と奥さんの弘美さん、それにミドウさんがいた」
「はい」
「内外氏は病死、奥さんは不安障害でまともに話せない。もしミドウさんが入り込んでいなかったら、状況判断すらできなかったでしょう。だから説明役としてしゃしゃり出たと僕達は判断した、ミドウさんのいつもの事だからと」
「いつもそうなんですか」
「あー、マキくんは知らなかったか。ミドウ案件は概ねそうなんだ」
ミツは頭を掻きながらこたえた。
「しかし、内外氏と知り合いで、依頼を受けていた。それも無理心中幇助のだ。となると見方が変わってくる。鍵は芳香剤とミドウさんの行動原理、犯罪を未然に防ぐだ」
ミツはちょっとだけ考えたあと、話を続ける。
「内外氏はもう助からないと判断したミドウさんは、奥さんだけでも助けようとした。内外氏の計画に乗るフリをして口出し、もしくは変更できるスキマをつくったんだ。マキくん、芳香剤はどのくらいの頻度で買うんだい」
「え? えっと半年か短くてもひと月かな」
「ケースでかい?」
「まさか。一つでじゅうぶんてす」
「だろ? けど、ケース買いしているんだ、おかしいと思わないかい」
「そういえばそうですね。内外氏はそう思わなかったんでしょうか」
「多分そこがミドウさんのトリックなんだろうね。おそらく──」
ミツが言葉に詰まったところで、タマが口を挟む。
「俺にも喋らせろ。たぶん、自分が死んだあとの死体の臭いがガマンできなくて出てかないよう、誤魔化すようにミドウさんが唆したんだろう。それが合図になるとも知らずにな」
続いてカドマが口を出す。
「じゃあ私も。ミドウさんは毎日確認するわけにはいかなかったから、芳香剤が窓の外に出たら合図になるようにしたんだな。そして通報して突入、そうやって弘美さんを無理矢理外に出せる状況をつくったんだ」
「そこ言いたかったですぅ」
いちばんいいトコロを言われてミツは拗ねる。
「そういえば」
「アイツの行動原理は[犯罪を未然に防ぐ]だ。だから加担は絶対しない。するとすれば、最悪の結果にならないようにするためだ」
「え、でも実際に無理心中幇助してませんか」
「奥さんは無事だろ」
(そういえばそうだ。ということは、ミドウさんは無理心中──つまり奥さん殺しを未然に防いだということなの?)
マキが悩んでいると、クロは残ったレモン酎ハイを飲み干し、店を出ようとうながした。
※ ※ ※ ※ ※
帰り道、クロとマキは無言だった。クロが険しい表情をしていたのでマキが話しかけられなかったのだ。
「ここまでだな。マキくん、気をつけて帰るんだぞ」
「はい、班長。今日はご馳走さまでした」
「ま、勝負に勝ったご褒美だ。それと明日は早めに出てきてくれ、カドマ達にも伝えておくから」
「了解しました」
ぺこりと頭を下げると、マキは帰途につく。クロもある程度見送ってから自宅へと向かった。
(正しいのは分かる。でも、それでいいのだろうか……)
マキは胸のもやもやが、まだ消えてなかった。
※ ※ ※ ※ ※
翌朝、少し早めに出勤すると、入口付近でミツがうろうろしていた。
「ミッツ先輩、おはようございます」
「お、おはよう。今来たところなんだ、さ、行こうか」
絶対誰か来るのを待っていたとバレバレなのに、そうじゃないフリをするので、マキは朝からため息が出る。
案の定、刑事課にはカドマとタマがもう来ていた。
「遅いぞ、ふたりとも。先輩を待たせるもんじゃない」
体育会系丸出しの言葉でタマが叱る。
さっそく顔面蒼白となるミツと、だんだん慣れてきて図太く挨拶するマキを見て、カドマはクスクスと笑う。
「昨夜、班長から連絡があってな。詳しいことはマキくんに訊いてくれとのことだった。何かあったのかい」
「じつはですね……」
マキは昨夜の出来事をメンバーに話した。
※ ※ ※ ※ ※
話を聞いてカドマはため息をつき、タマは憤り、ミツは困惑する。
「内外氏による無理心中の可能性が出てきたとはなぁ。班長はなんと?」
「証明のしようがないと」
「だよなー。けど、面白くねぇなぁー」
タマが大きな声で言いながら伸びをする。
「そうなると、ミドウさんの行動が変わってきますね」
ミツの意見に、カドマがほほぅと感心する。
「さすがミッツ先輩だ。どう変わるか説明してくれないか」
「なんだよカドマ、そのミッツ先輩って」
「マキくんがミツのことそう呼んでるんだよ、カッコいいから私もそう呼ぼうかなってな」
「やめてくださいよカドマさん、ミツでいいです」
「じゃあミツ、どう変わるかマキくんに説明してやってくれないか」
「わかりました」
ミツは左隣に座るマキに向いて話しだす。
「事の起こりは、ミドウさんからの通報だった。そこに班長とマキくんが行くと、内外氏のご遺体と奥さんの弘美さん、それにミドウさんがいた」
「はい」
「内外氏は病死、奥さんは不安障害でまともに話せない。もしミドウさんが入り込んでいなかったら、状況判断すらできなかったでしょう。だから説明役としてしゃしゃり出たと僕達は判断した、ミドウさんのいつもの事だからと」
「いつもそうなんですか」
「あー、マキくんは知らなかったか。ミドウ案件は概ねそうなんだ」
ミツは頭を掻きながらこたえた。
「しかし、内外氏と知り合いで、依頼を受けていた。それも無理心中幇助のだ。となると見方が変わってくる。鍵は芳香剤とミドウさんの行動原理、犯罪を未然に防ぐだ」
ミツはちょっとだけ考えたあと、話を続ける。
「内外氏はもう助からないと判断したミドウさんは、奥さんだけでも助けようとした。内外氏の計画に乗るフリをして口出し、もしくは変更できるスキマをつくったんだ。マキくん、芳香剤はどのくらいの頻度で買うんだい」
「え? えっと半年か短くてもひと月かな」
「ケースでかい?」
「まさか。一つでじゅうぶんてす」
「だろ? けど、ケース買いしているんだ、おかしいと思わないかい」
「そういえばそうですね。内外氏はそう思わなかったんでしょうか」
「多分そこがミドウさんのトリックなんだろうね。おそらく──」
ミツが言葉に詰まったところで、タマが口を挟む。
「俺にも喋らせろ。たぶん、自分が死んだあとの死体の臭いがガマンできなくて出てかないよう、誤魔化すようにミドウさんが唆したんだろう。それが合図になるとも知らずにな」
続いてカドマが口を出す。
「じゃあ私も。ミドウさんは毎日確認するわけにはいかなかったから、芳香剤が窓の外に出たら合図になるようにしたんだな。そして通報して突入、そうやって弘美さんを無理矢理外に出せる状況をつくったんだ」
「そこ言いたかったですぅ」
いちばんいいトコロを言われてミツは拗ねる。
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