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勝手に休ませないで!
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「またの時に伸ばしたっていいんだけどさ。お盆なんかだと私は仕事のシフトが入るし、しーちゃんは家族優先だろうし都合が合うかどうかわからないでしょ。この分だと再会するの、また二十年先かもよ」
まさか……とは思うが、咲恵ちゃんの言う事にも一理ある。身近なリアルタイムのママ友でもない限り、大人同士の「いつか」「また今度」がお化け以上に実体化しないのはこれまでの経験で身を持って知っている。
「確かにそうだね。ちょっと相談してみて、また連絡するね」
帰宅して一息ついた後で、自宅の電話に掛けてみたのだが繋がらない。月曜日だから豊の実家からは帰って来ているはずなのだが。
豊の携帯に掛けてみると、まだあちらの実家にいるのだという。まさか悠也にてんてこまいの義母がダウンしたのかと心配していたら、
「いや、今日休みだしさあ」
と呑気なものだ。義母を実家に残して自宅に戻ると、自分が家事をしなければならないので楽に逃げただけなんだろう。
いや、それにしても。
「あなたは有休かもしれないけど、今日は月曜日で悠也は学校だったでしょう?まさか休ませたの?」
百歩譲って通級とか療育までは期待しない事にしたものの、まさか自分が楽したいがために悠也に学校をサボらせるなんて思わなかった。
「悠也だって忌引きでいいだろ。颯也も休んでるんだし」
「颯也と悠也は別。あのね、『義務教育』の『義務』は子どもじゃなく、子どもに教育を受けさせる大人にに掛かっているの。悠也には教育を受ける『権利』があるんだから、あなたの都合や気分で勝手に休ませないで」
絶望感と沸々と湧く怒りを抑えながら、ひたすら淡々と話す。別に世間から称賛されて子どもが自然と尊敬するような立派な父親になれなんていうんじゃなく、子育てに責任感を持って、自分事として向き合って欲しいだけなのにーーこんな調子でもう十年以上経っている。
未熟で欠点だらけで不完全ながら、それでもより良くあろうとーー私は常に必死で「母親」をやっている。あなたは一体いつ、「父親」になるの?
大声でそう叫びたい気分で、毎日をどうにかこなしながら生きている。
「わかった、わかった。これから家に帰るからさ。葬式終わって、明日帰ってくるんだろう?何か美味い魚でも買ってきてよ」
これにはカチンときた。
「帰るのは明後日だって言ったはずでしょ!どうしていつもそうやって私の話をろくに聞かずに、自分の都合のいいように解釈するの!」
スケジュールの正確な日付けとか、「報告・連絡・相談」の意志疎通ーーそんなのは社会人の基本中の基本だと思うのに、それが絶望的に通じない。それが豊と父の不思議な共通点だ。
こんなんでよく社会で通用するな……と呆れるが、外に出て仕事絡みだとそれがちゃんとできるのだろう。それがまた苛立ちの種だ。家族こそ社会の最小単位だとは思わないのか。
「でも俺、明日から仕事で……」
「知らない。あなただって親でしょう。悠也に代わって」
ところが電話口に出た悠也から意外なことを聞いた。
まさか……とは思うが、咲恵ちゃんの言う事にも一理ある。身近なリアルタイムのママ友でもない限り、大人同士の「いつか」「また今度」がお化け以上に実体化しないのはこれまでの経験で身を持って知っている。
「確かにそうだね。ちょっと相談してみて、また連絡するね」
帰宅して一息ついた後で、自宅の電話に掛けてみたのだが繋がらない。月曜日だから豊の実家からは帰って来ているはずなのだが。
豊の携帯に掛けてみると、まだあちらの実家にいるのだという。まさか悠也にてんてこまいの義母がダウンしたのかと心配していたら、
「いや、今日休みだしさあ」
と呑気なものだ。義母を実家に残して自宅に戻ると、自分が家事をしなければならないので楽に逃げただけなんだろう。
いや、それにしても。
「あなたは有休かもしれないけど、今日は月曜日で悠也は学校だったでしょう?まさか休ませたの?」
百歩譲って通級とか療育までは期待しない事にしたものの、まさか自分が楽したいがために悠也に学校をサボらせるなんて思わなかった。
「悠也だって忌引きでいいだろ。颯也も休んでるんだし」
「颯也と悠也は別。あのね、『義務教育』の『義務』は子どもじゃなく、子どもに教育を受けさせる大人にに掛かっているの。悠也には教育を受ける『権利』があるんだから、あなたの都合や気分で勝手に休ませないで」
絶望感と沸々と湧く怒りを抑えながら、ひたすら淡々と話す。別に世間から称賛されて子どもが自然と尊敬するような立派な父親になれなんていうんじゃなく、子育てに責任感を持って、自分事として向き合って欲しいだけなのにーーこんな調子でもう十年以上経っている。
未熟で欠点だらけで不完全ながら、それでもより良くあろうとーー私は常に必死で「母親」をやっている。あなたは一体いつ、「父親」になるの?
大声でそう叫びたい気分で、毎日をどうにかこなしながら生きている。
「わかった、わかった。これから家に帰るからさ。葬式終わって、明日帰ってくるんだろう?何か美味い魚でも買ってきてよ」
これにはカチンときた。
「帰るのは明後日だって言ったはずでしょ!どうしていつもそうやって私の話をろくに聞かずに、自分の都合のいいように解釈するの!」
スケジュールの正確な日付けとか、「報告・連絡・相談」の意志疎通ーーそんなのは社会人の基本中の基本だと思うのに、それが絶望的に通じない。それが豊と父の不思議な共通点だ。
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「知らない。あなただって親でしょう。悠也に代わって」
ところが電話口に出た悠也から意外なことを聞いた。
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