ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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初七日済んで、日が暮れて

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 咲恵ちゃんが本家の酔っ払いの回収……もとい、従兄弟おじ達の迎えに来た。長内さんが最終のバスと新幹線で盛岡に帰ると言うので、ついでに駅まで回ってくれると言う。

長内さんは数十年前に脱サラし、盛岡郊外で農園を営んでいるのだと言う。長年、三陸の海が見えるお墓にいたご先祖様は今、岩手山のよく見える陽当たりのいい丘で、子孫達の生業を見守りながら眠っている。
 ふるさとの山を遠景に「Born to Be Wild」をBGMにしながら、トラクターを駆る長内さんの姿がなんとなく浮かんだ。

「いい時期に一度、ご家族で遊びにいらっしゃい」

「はい。ぜひ」

 私は喜んで答えた。父や晃夫、や颯也も招待されていたから、今年の夏は長内農園争奪戦になるかもしれない。早めに計画を立てないと。

 それはそうと、咲恵ちゃんとも一緒にご飯くらい食べたかったな。

 お礼かたがた、少し残念な気持ちでそう話したら、

「しーちゃんこそ、せっかく来たのに本当に明日帰っちゃうの?一日くらいどこか遊びに行かない?私も明日休みだし」

 と返された。そうか、咲恵ちゃん休みなのかあ。

「そうしたいんだけどさ……夫と二男が向こうで待ってるんだよね」

「ああそうか……まあ、夫さんはどうでもいいとして」

 いいんかいっ(笑)まあ、そうだけど。

 実は事後の作業があった時のために、明後日帰る予定で仕事のシフトを調整してあるし、夫と悠也、義母にもそう言ってある。
 だが、義母一人に実質何もかも任せきりなのが心配で、明日にでも帰ろうかと思っていたところだ。
 これがもし逆で滞在を延期した場合、悠也を納得させるのに骨が折れるだろうし、本人にも無駄に気の毒な思いをさせてしまう。だがサプライズ的に早く帰る分には問題ないだろうと思っていたのだが。

 咲恵ちゃんは「せっかく会えたのになあ」と、心底残念そうに言った。

「しーちゃん、昔から真面目だけどさ。気晴らしだって必要だよ?こんな時だから仕方ないけど、颯也君だって家にばかりいるよりはいいと思う」

 私自身、このまま実家に戻ったらブッツリ切れてワンワン泣いちゃうんじゃないか、北関東の自宅に戻ったら燃え尽きててサラサラと灰になってしまうんじゃないか……と確信できるくらいには疲れ果てていた。
 幸いどこでもぐっすり眠れる質だし、一晩寝て起きたら案外回復するのかもしれないけど。
 家に帰れば帰ったで、まず悠也のフォローに仕事や当番関係の穴埋め、義母が手が回らず豊に先送りされた家事ーーそれこそ夫は後回しで(笑)ーーと、こちらで過ごした日々にも増して大忙しになるだろう。
 できれば心がカサついてオイル切れのままエンジンを空吹かしさせ続けるんじゃなくて、一旦どこかでリセットしたい。私の中の生存本能がそう叫んでいる。それこそ何にも考えず、咲恵ちゃんと昔話でもしながらケタケタ笑い合えたら……心はそちらにググっと動くんだけど。
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