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よろず屋のおじさんと私 5
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夏には途中の田圃や畑のそこここにあった人の気配が全く無い。早く用事を済ませて帰りたいと思いながら稲刈りを終えた後の寒々とした田圃の一本道を、唇をぎゅっと真一文字に結んで小走りに突っ切る。
半下ろしにしのシャッター越しに店の明かりが見えると心底ほっとした。思えばおじさんの方も毎晩シャッターを閉める前に、道の向こうから走り込んでくる子どもがいないか、気をつけて見てくれていたのだろう。
おばさんも夕飯を作りに奥に引っ込んでしまっていて、蛍光灯だけが明るく妙に静かな店の中の空気を今も覚えている。
思春期を迎える頃、町中にはスーパーマーケットだけではなく若者向けのブティックや雑貨屋がちらほら出店し始めた。
私も晃夫も駄菓子の年齢を卒業すると、CMで宣伝された新商品や若者向けの流行品を求めて自転車で町中に繰り出すようになった。
「あぃや、しーちゃん、しばらく」
「今、中学何年?はぁ二年?大きぐなったやぁ」
よろず屋に集まっていたおばさん達ーー昔はおそらく初々しい新米ママ達だったーーはこの地域で過ごす風雪とともに貫禄と風格が増し、よろず屋夫婦ともども道ですれ違うたびにこちらが小さい頃と変わらない調子で声をかけてきた。
その時は内心、気恥ずかしいとか面倒臭いと思ったりしたものだが、自分で子育てをするようになってからいかにありがたい環境だったか気づく。
私の青春時代は全国的に「荒れる学校」が問題となり、「ツッパリ」「スケバン」ブームの真っ只中であった。気性の荒い漁師町ならなおのことだ。
若い時期にルールを逸脱することに憧れを抱く時期があったり、それを自己表現とする子どもが一定数現れるのはあり得る事だ。しかし、幼少の頃から「背が伸びた」「年を重ねた」というごく当たり前の事をこの上なく素晴らしい事であるかのように喜び、無条件の好意を示してくれる人達が身近に多いと、おいそれとは裏切れない。
半下ろしにしのシャッター越しに店の明かりが見えると心底ほっとした。思えばおじさんの方も毎晩シャッターを閉める前に、道の向こうから走り込んでくる子どもがいないか、気をつけて見てくれていたのだろう。
おばさんも夕飯を作りに奥に引っ込んでしまっていて、蛍光灯だけが明るく妙に静かな店の中の空気を今も覚えている。
思春期を迎える頃、町中にはスーパーマーケットだけではなく若者向けのブティックや雑貨屋がちらほら出店し始めた。
私も晃夫も駄菓子の年齢を卒業すると、CMで宣伝された新商品や若者向けの流行品を求めて自転車で町中に繰り出すようになった。
「あぃや、しーちゃん、しばらく」
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その時は内心、気恥ずかしいとか面倒臭いと思ったりしたものだが、自分で子育てをするようになってからいかにありがたい環境だったか気づく。
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