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二人の再チャレンジ
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「だからさ。無理に俺に合わせなくたっていいんだよ。お互い一人暮らし長いし、できてしまったライフスタイルの差も無理に埋めなくていいと思う。しばらくはこのまま、お互いの時間が合う時に会ったり、一緒に出掛けたりして楽しく……」
「でもそれじゃ、いつまで経っても一緒に暮らせないし、結婚もできなくない?」
「ああ……それもそうか。まあ、あんただって本社と掛け持ちで何気に長期出張が多かったりするじゃん。俺は別居婚とか週末婚でも別に」
「僕が嫌なの!」
玄英が、まるで駄々をこねる子どものように首を左右に振った。
「恒星と暮らしたいの!家に帰ってきたら恒星に『お帰り』って言ってもらいたいし、朝起きたら隣にいてもらいたいし、グリーンティー淹れてあげて『行ってらっしゃい』って仕事に送り出したい。そのためにならいくらでも努力する!恒星。僕に家事を教えてくれ!」
そして珍しくスポ根的なガッツを見せたーー誰この超絶イケメン。惚れるだろ。
「指でツッて障子の桟なぞって、『こんなトコにまだホコリが』って罵ってくれてもいいし、『この役立たずが』って言いながら蔵に吊るして折檻してくれてもいい」
モチベーションの理由!
「結局そういうプレイなのかよっ!そもそもここん家、障子も蔵も無いだろ」
ツッコミどころ とは
そもそもこの人、こんなネタどこで拾ってくるんだろう……?謎。
「家事を覚えたいのは本気だってば。その代わり、僕も君に今度こそ真面目に英語を教える」
「おお……」
そう言えばそういう話もあったが諸事情(ええっと……)で長続きせず、俺の独学も挫折しかけている。
「それはいいな。俺もありがたい」
「二人で頑張ろうね。きっと両方叶うよ」
玄英の揺るぎなく未来を信じているような笑みに、俺はハッとした。
往年の名画「ラストエンペラー」の終盤、宮殿で何一つ不自由なく暮らしていた元皇帝が思想矯正所に送られ、粗末な監獄で惨めな思いをする……同居の話が出るたび、俺はそのシーンを思い出していた。
玄英が同居のために生活レベルを俺に合わせるということは、そういう事に思えて気が進まなかった。映画の元皇帝は全くできなかった身の回りの事を一つ一つ覚え、庶民として平穏に暮らすラストが待っている。だが、この人にはずっとD社の社長でいてもらわなきゃならないし。
が、適応力ならこの人、おそらく愛新覚羅溥儀以上にありそうだし、何と言っても好奇心と向上心の塊だ。趣味感覚で楽しみながら家事を覚えてもらったら、カクテルや茶みたいにハマるジャンルが見つかるかもしれない。空き家バンクで物件探してDIYしたら、綺麗さと広さだけは確保できるし自宅パーティだって続けられるかもしれないし……
とは言え道はかなり遠そうだけどな。ま、根気よくやるか。
「わかった。二人で頑張ろう。よろしくな」
「じゃ、さっそく今からこの家では日本語使用禁止ね?でも恒星の啖呵は聞きたいから、プレイの時だけは例外」
「……はああぁっ?」
あれ?何だかデジャヴが……
「ノー。スピーク イングリッシュ」
玄英は真顔でそう言い放つと俺の両頬を挟み、満面の笑みを見せた(クッソ可愛い)ーーこいつ、絶対めちゃくちゃドSの気あるだろ!
「Tell me how to wash,my knight。OK?」
「でもそれじゃ、いつまで経っても一緒に暮らせないし、結婚もできなくない?」
「ああ……それもそうか。まあ、あんただって本社と掛け持ちで何気に長期出張が多かったりするじゃん。俺は別居婚とか週末婚でも別に」
「僕が嫌なの!」
玄英が、まるで駄々をこねる子どものように首を左右に振った。
「恒星と暮らしたいの!家に帰ってきたら恒星に『お帰り』って言ってもらいたいし、朝起きたら隣にいてもらいたいし、グリーンティー淹れてあげて『行ってらっしゃい』って仕事に送り出したい。そのためにならいくらでも努力する!恒星。僕に家事を教えてくれ!」
そして珍しくスポ根的なガッツを見せたーー誰この超絶イケメン。惚れるだろ。
「指でツッて障子の桟なぞって、『こんなトコにまだホコリが』って罵ってくれてもいいし、『この役立たずが』って言いながら蔵に吊るして折檻してくれてもいい」
モチベーションの理由!
「結局そういうプレイなのかよっ!そもそもここん家、障子も蔵も無いだろ」
ツッコミどころ とは
そもそもこの人、こんなネタどこで拾ってくるんだろう……?謎。
「家事を覚えたいのは本気だってば。その代わり、僕も君に今度こそ真面目に英語を教える」
「おお……」
そう言えばそういう話もあったが諸事情(ええっと……)で長続きせず、俺の独学も挫折しかけている。
「それはいいな。俺もありがたい」
「二人で頑張ろうね。きっと両方叶うよ」
玄英の揺るぎなく未来を信じているような笑みに、俺はハッとした。
往年の名画「ラストエンペラー」の終盤、宮殿で何一つ不自由なく暮らしていた元皇帝が思想矯正所に送られ、粗末な監獄で惨めな思いをする……同居の話が出るたび、俺はそのシーンを思い出していた。
玄英が同居のために生活レベルを俺に合わせるということは、そういう事に思えて気が進まなかった。映画の元皇帝は全くできなかった身の回りの事を一つ一つ覚え、庶民として平穏に暮らすラストが待っている。だが、この人にはずっとD社の社長でいてもらわなきゃならないし。
が、適応力ならこの人、おそらく愛新覚羅溥儀以上にありそうだし、何と言っても好奇心と向上心の塊だ。趣味感覚で楽しみながら家事を覚えてもらったら、カクテルや茶みたいにハマるジャンルが見つかるかもしれない。空き家バンクで物件探してDIYしたら、綺麗さと広さだけは確保できるし自宅パーティだって続けられるかもしれないし……
とは言え道はかなり遠そうだけどな。ま、根気よくやるか。
「わかった。二人で頑張ろう。よろしくな」
「じゃ、さっそく今からこの家では日本語使用禁止ね?でも恒星の啖呵は聞きたいから、プレイの時だけは例外」
「……はああぁっ?」
あれ?何だかデジャヴが……
「ノー。スピーク イングリッシュ」
玄英は真顔でそう言い放つと俺の両頬を挟み、満面の笑みを見せた(クッソ可愛い)ーーこいつ、絶対めちゃくちゃドSの気あるだろ!
「Tell me how to wash,my knight。OK?」
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