9 / 125
2
⭐︎密室の二人2
しおりを挟む
「いやあのっ……やっぱり、後で自分でなんとかしますのでっ……すっ、すみません……!」
「おいまさか、下まで縛ってあんのか」
ほぼ臨戦体勢のそれを見た恒星は軽蔑しきった態度を隠そうともしない。辛すぎて背中に電流が走る。
恒星は長いため息をつくと、顎で視線の先を指した。
「脱げ」
「……はい?」
「聞こえなかったのか。脱いでそれ出せよ」
「っでも……」
「そんな格好でうちの社内を歩かせられるかってんだよ。流石に通報されっぞ。俺が元凶だって知れたら女子社員全員に半殺しにされるわ。今期のボーナスだってかかってるし……」
「……」
「おい、聞いてんのか」
最大限に同様した後で歯切れ良くテンポのいい彼の声を聞いているうちに呼吸が覚束なく朦朧となってくる。
「また泣いてんのかよ。くそ。俺が泣かせてるみてえじゃねえか」
恒星は毒づきながらもちょっと狼狽えた。
「仕方がねえ。悪く思うなよ。俺だって他人のなんて見たくもねえが」
恒星はそう吐き捨てると口にハサミをくわえて勢いよくしゃがみ、玄英のベルトを外し始めた。腹を括った男前の、いい面構えだ。
「い、いいんですか……」「今さら何恥じらってんだよ、馬鹿」
ほとほとあきれきった口調でそう言いながら、恒星が玄英のスラックスと下着を同時に、少し乱暴に降ろした。
「やっ……」
必死に抑えていた矯正が漏れた。
「おい、なんて声出して……」
身も蓋もない場所が縛られている様に、さすがの恒星も絶句した。が、あまりに常識の範囲外の出来事に出会うと、人というのはかえって冷静になるのかもしれない。
「……お中元の焼き豚みてぇ……」
恒星がそれを凝視したまま口の中でぼそりと呟いたのが聞こえた。顔に八割方集まっていた熱と血液がさらに脳まで駆け上る。
「!……ちょっと!……」
「ああ悪い。俺がしたんだよな……痛えだろ」
「こうなってしまうと……さすがに。自分が調子に乗り過ぎたせいなんですが、どうしていいか……」
「触ってもいいか」
「ど、どうぞ……って、か、え?や、そこまでしてくださるんですか?」
「馬鹿か、ヘンタイ野郎。支えてねえと切りづれぇんだよ」
「……」
玄英は一瞬、微かに身震いした。万一手元が狂ったらどれだけの惨劇になるか……恒星もそれを想像してしまったのかもしれない。
「ヘラヘラしてんなよ。別なモン切り落とすぞ」
狂い続けるパーソナルスペースの、息がかかりそうな場所に恒星の厳しい表情がある。冷ややかな怒りを湛えた瞳、対象物をとらえた硬い手のひらの熱、冷たい金属が触れ、微かにぞわりと動くーー
「……あっ……!すっ、すみません……」
短く叫んではっと気がつくと、絶叫して秒でドアを蹴り開けた恒星が、噴水のように水飛沫を辺りに飛ばしながら手洗い場で顔を洗っていた。
「クソっ!クソっ!ふざけんのも大概にしろよ!あんたが大事な取引先じゃなかったら、ソレごとミンチにしてやるのに!」
嗚咽に近い怒号が飛ぶ。逆上して刺されなかったのが奇跡なほどの激昂ぶりだ。
「ああっ……あのすいません……どうしようっ……あの本当に……わざとじゃ……」
我に返った玄英は必死で謝ったが余計、彼の怒りを沸点まで加速させてしまう。
「泣いてんじゃねえっつってんだよ!泣きたいのはこっちだっての!」
「慰めにならないかもしれないけど……昨夜は君、自分のと二人分だったから、それよりもっと凄い状態に……」
「うるさいうるさいうるさい!今それ以上一言でも何か喋ったら殺す!」
「おいまさか、下まで縛ってあんのか」
ほぼ臨戦体勢のそれを見た恒星は軽蔑しきった態度を隠そうともしない。辛すぎて背中に電流が走る。
恒星は長いため息をつくと、顎で視線の先を指した。
「脱げ」
「……はい?」
「聞こえなかったのか。脱いでそれ出せよ」
「っでも……」
「そんな格好でうちの社内を歩かせられるかってんだよ。流石に通報されっぞ。俺が元凶だって知れたら女子社員全員に半殺しにされるわ。今期のボーナスだってかかってるし……」
「……」
「おい、聞いてんのか」
最大限に同様した後で歯切れ良くテンポのいい彼の声を聞いているうちに呼吸が覚束なく朦朧となってくる。
「また泣いてんのかよ。くそ。俺が泣かせてるみてえじゃねえか」
恒星は毒づきながらもちょっと狼狽えた。
「仕方がねえ。悪く思うなよ。俺だって他人のなんて見たくもねえが」
恒星はそう吐き捨てると口にハサミをくわえて勢いよくしゃがみ、玄英のベルトを外し始めた。腹を括った男前の、いい面構えだ。
「い、いいんですか……」「今さら何恥じらってんだよ、馬鹿」
ほとほとあきれきった口調でそう言いながら、恒星が玄英のスラックスと下着を同時に、少し乱暴に降ろした。
「やっ……」
必死に抑えていた矯正が漏れた。
「おい、なんて声出して……」
身も蓋もない場所が縛られている様に、さすがの恒星も絶句した。が、あまりに常識の範囲外の出来事に出会うと、人というのはかえって冷静になるのかもしれない。
「……お中元の焼き豚みてぇ……」
恒星がそれを凝視したまま口の中でぼそりと呟いたのが聞こえた。顔に八割方集まっていた熱と血液がさらに脳まで駆け上る。
「!……ちょっと!……」
「ああ悪い。俺がしたんだよな……痛えだろ」
「こうなってしまうと……さすがに。自分が調子に乗り過ぎたせいなんですが、どうしていいか……」
「触ってもいいか」
「ど、どうぞ……って、か、え?や、そこまでしてくださるんですか?」
「馬鹿か、ヘンタイ野郎。支えてねえと切りづれぇんだよ」
「……」
玄英は一瞬、微かに身震いした。万一手元が狂ったらどれだけの惨劇になるか……恒星もそれを想像してしまったのかもしれない。
「ヘラヘラしてんなよ。別なモン切り落とすぞ」
狂い続けるパーソナルスペースの、息がかかりそうな場所に恒星の厳しい表情がある。冷ややかな怒りを湛えた瞳、対象物をとらえた硬い手のひらの熱、冷たい金属が触れ、微かにぞわりと動くーー
「……あっ……!すっ、すみません……」
短く叫んではっと気がつくと、絶叫して秒でドアを蹴り開けた恒星が、噴水のように水飛沫を辺りに飛ばしながら手洗い場で顔を洗っていた。
「クソっ!クソっ!ふざけんのも大概にしろよ!あんたが大事な取引先じゃなかったら、ソレごとミンチにしてやるのに!」
嗚咽に近い怒号が飛ぶ。逆上して刺されなかったのが奇跡なほどの激昂ぶりだ。
「ああっ……あのすいません……どうしようっ……あの本当に……わざとじゃ……」
我に返った玄英は必死で謝ったが余計、彼の怒りを沸点まで加速させてしまう。
「泣いてんじゃねえっつってんだよ!泣きたいのはこっちだっての!」
「慰めにならないかもしれないけど……昨夜は君、自分のと二人分だったから、それよりもっと凄い状態に……」
「うるさいうるさいうるさい!今それ以上一言でも何か喋ったら殺す!」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる