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猫に好かれる

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 さて、今日は〇月〇日。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。以前、動物は癒されますよねなんて話をしましたが、皆さんはどんな動物がお好きですか? ワンちゃんや猫ちゃん、飼っているよという方も多いことでしょう。私の一風変わった友人は、爬虫類が好きだそうで。蛇に巻きつかれたい、グリーンイグアナは可愛いと、そりゃもう嬉々として言うんですね。人の好みはそれぞれですし、蛇ちゃんもグリーンイグアナちゃんも、ワンちゃんや猫ちゃん、そして私たち人間と同じように、この世界で共に生きているわけですから、個人の感想をあえて無視すれば何らおかしなことではありませんね。かくいう私は月並みですが、猫ちゃんが好きです。つい先日も、猫カフェならぬ猫ちゃんがいるカフェに行ってきました。皆さんが想像する猫カフェは『猫ちゃんと戯れるカフェ』だと思いますが、そこは『猫ちゃんがいるカフェ』であって、自由気ままな猫ちゃんが自由気ままにお客さんに甘えたり寄り添ったりするという、なんとも珍しいところでした。従来の猫カフェもそうだといえばそうですが、そちらは人間が積極的に猫ちゃんと遊ぼうとしますよね。でも、私のいう『猫ちゃんがいるカフェ』は、私たち人間は普通の喫茶店のごとくお茶をするだけです。そこに気が向いた猫ちゃんがたまに「こんにちは」しに来るんですね。まぁこれがまた可愛いのなんのって。とはいえ、従来の『猫ちゃんと戯れるカフェ』も大好きですよ。爬虫類好きの友人は猫を飼っていて、猫ちゃんの扱いにも慣れたものですが、一緒に行った猫カフェでも本領発揮といった具合でした。私は猫ちゃんを昔飼っていたことがありますが、何せ物心つく前後のことであまりよく覚えていません。ですが、なぜか猫ちゃんに好かれる体質らしく、その猫カフェに行ったら床に正座した私の足の上に乗ってきて、肩に手を置いて、私の顔をひたすら舐め始めたのです。意外にも力が強く、体重をかけてくるものですから、思わず猫ちゃんの体を支えようにも、柔らかすぎてむんずと掴むわけにもいかず、危うく猫ちゃんに押し倒されるところでした。なんとか解放された私でしたが、その後は全く見向きもせず。そういうところが可愛いんですけどね? ともあれ、他の猫ちゃんたちとも猫じゃらしなんかを使って遊んでいたら、私たちより後に来たカップルの男の子のほうが羨ましげに私と猫ちゃんの戯れを見つめていたんです。女の子との会話の中で、「俺もああいうふうに仲良くしたい!」なんて言っているのが聞こえてきて、仮にもデートだとしたら、女の子を蔑ろにしているようにも取れます。そんなんじゃ嫌われちゃうぞ、と余計なお世話を堪えつつ、女の子をふと見てみると、少々不機嫌そうな表情で。ほら、言わんこっちゃないとまたもやお節介を引っ込めて、得意の愛想笑いでやり過ごすしかありませんでした。
 その後のカップルの仲はわかりませんが、なんとか和解して、ふたりで猫ちゃんと一緒に暮らして幸せな日々だといいななどと想いを馳せてみたところで、じゃあ私自身が猫ちゃんを飼わないのかという話なんですが。正直に言うと、考えたことは数え切れないくらいあります。ですが、ある人には「結婚できなくなるよ」と言われ、またある人には「出かける時どうするの?」と聞かれ、またまたある人が言うことには「いなくなったら嫌じゃない?」と。どれも一理ありますよね。『結婚』についてはもうこの際どうでもいいですが、猫ちゃんが可愛すぎて他のことに集中できなくなるのは困ります。出かける時、猫ちゃんを独りでお家に置いていくのも忍びないですよね。どれだけ危険を排除したとしてもやっぱり家に帰るまでずっと気になってしまうと思いますし。仕事柄、家にいることも多いとはいえ、一人暮らしですから寂しい思いをさせることもあるでしょう。いえ、どちらかというと寂しい思いをするのは私のほうでしょうか。そして何より、「いなくなったら嫌だ」という気持ちも痛いほどわかりますね。共に過ごす時間が長ければ長いほど、喪った時の喪失感って計り知れないものです。仲良しの先輩も20年近く家族として生活した猫ちゃんを亡くした時、強くて優しいあの先輩が涙を流していたほどです。ですから、ショッピングセンターのショーウィンドウで猫ちゃんを見かけると、いいなぁ一緒にいたいなぁという衝動に駆られるのですが、毎度そういう懸念材料を思い出して、毎度踏みとどまってしまいます。私と一緒にいて幸せならいいのですが、私のせいで猫ちゃんを不幸にしてしまったらと思うと、居た堪れませんから。
 それって猫ちゃんやワンちゃんに限らず、人間同士でもそうですよね。だって、今の3つの条件は、等しく人に対しても当てはまりますから。だから私は結婚ができないのかもしれませんね。私はどちらかというと、結婚してもお互いの個性は尊重したいタイプなので、趣味も仕事も干渉しない生活が理想です。趣味が同じならそれに越したことはありませんし、そうだとしたら一緒に楽しみたいと思いますが、違うことをわざわざ同じにしなくてもいいのです。お子さんがいらっしゃると、きっとそうも言っていられないのでしょうが、まぁそういった事情で元々、結婚には不向きな性格なのかもしれません。出かける時だって、別にどこに行くとか何をするとか誰々に会うとか、言いたくなければ言わなくていいんです。もちろん言ってくれたほうが安心するし、嬉しいですけど。気を遣って嘘を吐かれるくらいなら、黙っていてもらったほうがまだマシです。そんなことよりも、その間、私は家で独り寂しい思いをするのかななんて考えてくれたら、そっちのほうが胸がきゅんとしますね。でも、この場合、逆は逆でして。私がひとりで出かける時、もしも「ラッキー」なんて思われていたら嫌だなぁとか。「ゆっくりしてきてね」が嘘だったらどうしようとか。いろいろ考えてしまうんですよねぇ。まぁそんな人と結婚しなきゃいいだけといえばそうなんですが。そして、やっぱり何より苦しいのは、相手が『いなくなった時』ですよね。自分よりも大切な人がいなくなった時の哀しみや寂しさといったら、想像を絶するものがあります。だからこそ一緒にいる時間を長くしたいし、そのための結婚なのでしょう。でも、じゃあ結婚そのものをしなければ万事解決では? なんて最近の私は思っているので、思いの外重症ですよね。
 そろそろお別れの時間です。結婚観や死生観というのは可愛いの基準と同じように人それぞれだと思います。ですが、きっと皆さん意識していないだけで皆さんなりの信念があることでしょう。たまに私は私の性格を鬱陶しく感じることもあります。こんなことで悩む性格じゃなかったら、もう少し楽に生きられるのかもなぁなんて。けれど、きっとあなたもそうですよね。自分の人生が楽だと思っている人は世の中におそらくひとりもいないでしょう。楽かそうでないかは主観でしかありませんから、他人が見ればイージーモードでも、自分の視点ではどんな人生も等しくハードモードなのです。自分の人生をほんの少しでもイージーに近づけてくれる、皆さんがそんな人といつか出会えることを願って。また来週お会いしましょう。深見小夜子でした。



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