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鮮烈なデビュー③
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アイドルグループの
"HEY!you!jump"が歌い踊る中、スタジオの隅から志村達が出演者席のど真ん中に座るヤモリに身ぶり手振りでアピールする。
今日の放送は生放送。
ヤモリが自由になる時間はCMタイム位だ。
先ずはヤモリと話をしないと始まらない。
秒刻みで進行する音楽番組で、急な予定変更はまずあり得ないのだが、志村はヤモリの柔軟さや、ミュージックスタイルのスタッフの臨機応変な瞬発力を信じていた。
最近ではクレッシェンド出演時の事件が世の中の人々の記憶に新しいが、志村が若かりし頃、歌手としてヤモリ司会の
"young カモン カモン!"という歌番組に出演した時に、バックバンドのギターとベースの男女が演奏中に喧嘩を始めて中断してしまった事があった。
あの時も、ヤモリは自らがギターを持ち演奏して志村を助け、その場面の視聴率は42%を叩き出した。
志村はヤモリの気を引こうとその場でアイドルグループの曲に合わせて踊り始めた。
キレキレの動きに真理達は目を丸くするが、由清につつかれる。
「ほら、真理もどうにかしてヤモリさんにアピールしないと!」
「えっ……うう……そうだな!よーし!」
真理は何を思ったかその場で上着を脱ぎ、シャツも脱ぎ捨てると、ドヤ顔でボディービルのポーズを決めた。
「何してんの!」
「……ヤモリさんにこっちを見てもらう為の作戦だろーがよ!
ふんっ!見よ!この上腕二頭筋――!」
「筋肉なら俺も負けないです――!」
暗黒も脱いで、バキバキに鍛えた上半身を晒すと真理ににんまりと黒塗りの笑顔を向けた。
「むっ……中々の素晴らしい胸筋っ……
だが俺も負けねえ――」
真理と暗黒の火花を散らしながらの筋肉美対決が始まる中、瞬と狐面も志村に倣って踊り始めた。
ヤモリから目を離さずに口をパクパクさせながら必死に動くが、ヤモリは笑いながらこちらを見て拍手をするだけだ。
そこへやって来た美名は、皆の異様な雰囲気にギョッとした。
「な……なんだか楽しそうですね」
「美名ちゃん!見なさい!この私の動きを!
脚なんかこんな所まで上がるのよ――!
若者には絶対に負けないわ――!おほほほ」
志村は頭の位置まで脚を高々と上げてクルクル回る。
瞬と狐面は何故か三点倒立を始めて真っ赤な顔をしていた。
「さあ……どちらがより長く我慢できるか……勝負だぞ瞬!」
「ぬぬぬ――!
狐面!運動音痴な僕も……これだけは負ける訳には!」
「皆……なんか違う方向に行っちゃってるってば!早くヤモリさんに気付いて貰わないと――!」
髑髏川が小さな目をキョロキョロしながらオロオロする中、由清が冷静に側に居るスタッフに声をかけた。
「すいません、カンペの紙とマジック貸して下さい」
「ハッ!その手があったか――!」
髑髏川が掌を拳でバチンと叩いた。
由清は呆れ顔で大きな画用紙にサラサラと
『緊急なお願いがあります!お話をさせて下さい』
と書くと、ヤモリの方へ向いて高々と両手で上げて見せた。
ヤモリは僅かに眉を上げると、女子アナに
「水野ちゃん、悪いけどこっから頼むよ……すぐ戻るから」
と言うと、呆気に取られる水野アナを残してこちらへ歩いてくる。
HEY!you!jumpの演奏が終わった所でCMに入った。
「あ――っ!ヤモリさんっ!」
志村が声を上げると、皆それぞれの奇妙な対決を止めてヤモリを見た。
「一体、これはどういう騒ぎなんだい?」
呆れた様に言うヤモリの前に美名がズイッと出てきて真っ直ぐに見つめた。
「ヤモリさん……
先程は申し訳ありませんでした……」
「おっ。もう大丈夫かい?」
ヤモリの口元が緩む。
「あ、あの……
お願いです!
私を、プリキーを、ミュージックスタイルに今夜もう一度出させて下さい……!
あんな失敗をしてご迷惑をかけた上、図々しいお願いをしているのはわかってます……
でも……どうかお願いします!」
「お願いします!」
「頼むぜ――!神様仏様、ヤモリさんよ――!」
美名がく深く頭を下げると、真理と由清も頭を下げた。
「ヤモリさん!私からもお願い!」
「ヤモリさんお願いします!
俺らの時間を削って構いませんから!」
「ヤモリさん!」
「ヤモリさん――!」
「ヤモリさんっ!
志村と髑髏川達も一斉に頭を下げると、何秒かしてヤモリは深く溜め息をついた。
「……で、どんな風にすればいいのかい?」
「ヤモリさん!」
美名は弾かれた様に顔を上げた。
「ああ――!やっぱりヤモリさんはこうでなくちゃ!
大好きよ――!」
志村は狂喜してヤモリをギュウと抱き締める。
「志村ちゃ……
く、苦しいんだがね」
屈強な肉体の志村に強く抱き締められてヤモリは目を白黒させる。
「ヤモリさんっ!ありがとうございます――ありがとうございます!」
美名が手を広げて抱き付つこうとすると、ヤモリが
「おっ!
大歓迎だよ――!おいでおいでっ」
と言うが、涙で顔をグシャグシャにしながら真理が走り寄ると、志村と共にヤモリを胴上げし始めた。
「ちょ……君達っ!
俺は胴上げより女の子にギューして貰ったほうが……ヒエエエ」
「ワッショーイワッショーイ!流石ヤモリさんは芸能界一の司会者――!
ありがとう――!
ありがとう――!
ウワアアア」
志村と真理は涙を流しながらヤモリを胴上げし続けた。
その光景を、西野は冷ややかな目で見ていた。
(ふん……
今さら何をしたって無駄よ……
せいぜい大失敗して恥をかくがいいわ……)
番組は、残すところボンバーダイアモンドを入れてあと五組の演奏の予定だった。
ヤモリは急遽スタッフを呼び、ボンバーダイアモンドのトークをカットして、演奏が終わったら直ぐにプリキーの演奏を始める事、番組のエンドロールの映像は本日の出演者を一通り写す予定だったがそれを止めて、最後までプリキーを映す事を打ち合わせした。
スタッフは最初驚いたが、「無理」「できない」
という言葉は言わず、皆本気の表情でヤモリの言わんとする事を汲み取り、「自分達に出来る最善を尽くします」
と言って各々の仕事に戻って行った。
「さて……
最高のパフォーマンスを頼むよ!プリキーちゃん!」
ヤモリはニッコリ笑う。
「ヤモリさん……本当になんて御礼を言ったらいいか」
美名は声を詰まらせる。
「いやいや、感激するのは演奏を成功させてからだよ!
俺も楽しみにしてるからね?
……さて、そろそろ戻ってやらないと……水野ちゃんが持たないな」
水野は一人奮闘して、女性アイドルグループのメンバーに段取り通りトークを振っていた。
「さて、じゃあそういう事で!」
ヤモリはCMのタイミングでまた戻って行った。
髑髏川が屈伸をして呟いた。
「さて、僕らも向こうに戻ろうかな!」
「猫八さん……」
目を潤ませる美名に、髑髏川は親指をビシッと立てる。
「男は度胸!女は愛嬌なのだよ!
……大丈夫!何とかなるよきっと!」
「頑張ろうね――!」
「また後で!」
ボンバーダイアモンドのメンバーは口々に美名に声をかけながら、暗黒は投げキッスをして戻って行った。
美名は胸が一杯になり、目を閉じて深く息を吐いた。
早く、早く歌いたい。
力になってくれた皆の気持ちに、応えたい。
身体の奥底からメロディーが溢れだして、今にも叫び出したくなる位に心が震えていた。
「つまり……俺らが……本日のトリ?」
由清が、今気付いたかの様に絶句する。
「……!」
「よっ……由清――!
サラリととんでもない事を言うなよ――!」
美名は息を呑み、真理が声を上擦らせた。
「まあ、そう言う事よね……
あなた達のデビューに相応しい舞台よ!
ああ……私のデビューを思い出しちゃうわ……
私も初めてテレビで歌った時、いきなりのトリだったのよ~!」
志村は頬を紅潮させている。
今、ステージではベテランのアカペラグループが美しいハーモニーを響かせている。
刻一刻と、自分達の出番が近付いている――
「さて、出番前にお化粧ちゃっちゃと直しましょうか!」
「あ、あの!」
美名はある事を思い出した。
「なあに?」
「少しだけ、電話してきていいですか?」
「良いわよ~!」
急ぎ足で楽屋に向かい、ドアを開けてスマホを取る。
二回呼び出し音が鳴り、向こうが出た。
「……美名?」
美名に取って、世界の何よりも甘く心地よい恋人の声が聞こえると、一瞬うっとりと呆けてしまいそうになる。
スマホを握り締め、美名は小さく囁いた。
「剛さん……
さっき……言えなかったから、言うね?」
「……ああ。言えよ……何でも」
「剛さんを……
愛してます」
電話口で、キスをするようにチュッと音を響かせて直ぐ様切ってしまった。
今さら、猛烈に恥ずかしくなり身体中が燃える様に熱い。
会ったら、もっと恥ずかしいかも知れない。
「……電話でキスしろ、なんて……剛さんが言うから……」
唇を尖らせながら、頬が暖かく緩む。
歌う前に、綾波の声を聞いておきたかったのだ。
もう、今の美名に迷いや恐れは無かった。
鏡の中の自分に魔法をかけるが如く語りかける。
「私は出来る……
私はやってみせる……」
正真正銘の、プリキーのデビューの時がすぐそこまで迫っていた。
"HEY!you!jump"が歌い踊る中、スタジオの隅から志村達が出演者席のど真ん中に座るヤモリに身ぶり手振りでアピールする。
今日の放送は生放送。
ヤモリが自由になる時間はCMタイム位だ。
先ずはヤモリと話をしないと始まらない。
秒刻みで進行する音楽番組で、急な予定変更はまずあり得ないのだが、志村はヤモリの柔軟さや、ミュージックスタイルのスタッフの臨機応変な瞬発力を信じていた。
最近ではクレッシェンド出演時の事件が世の中の人々の記憶に新しいが、志村が若かりし頃、歌手としてヤモリ司会の
"young カモン カモン!"という歌番組に出演した時に、バックバンドのギターとベースの男女が演奏中に喧嘩を始めて中断してしまった事があった。
あの時も、ヤモリは自らがギターを持ち演奏して志村を助け、その場面の視聴率は42%を叩き出した。
志村はヤモリの気を引こうとその場でアイドルグループの曲に合わせて踊り始めた。
キレキレの動きに真理達は目を丸くするが、由清につつかれる。
「ほら、真理もどうにかしてヤモリさんにアピールしないと!」
「えっ……うう……そうだな!よーし!」
真理は何を思ったかその場で上着を脱ぎ、シャツも脱ぎ捨てると、ドヤ顔でボディービルのポーズを決めた。
「何してんの!」
「……ヤモリさんにこっちを見てもらう為の作戦だろーがよ!
ふんっ!見よ!この上腕二頭筋――!」
「筋肉なら俺も負けないです――!」
暗黒も脱いで、バキバキに鍛えた上半身を晒すと真理ににんまりと黒塗りの笑顔を向けた。
「むっ……中々の素晴らしい胸筋っ……
だが俺も負けねえ――」
真理と暗黒の火花を散らしながらの筋肉美対決が始まる中、瞬と狐面も志村に倣って踊り始めた。
ヤモリから目を離さずに口をパクパクさせながら必死に動くが、ヤモリは笑いながらこちらを見て拍手をするだけだ。
そこへやって来た美名は、皆の異様な雰囲気にギョッとした。
「な……なんだか楽しそうですね」
「美名ちゃん!見なさい!この私の動きを!
脚なんかこんな所まで上がるのよ――!
若者には絶対に負けないわ――!おほほほ」
志村は頭の位置まで脚を高々と上げてクルクル回る。
瞬と狐面は何故か三点倒立を始めて真っ赤な顔をしていた。
「さあ……どちらがより長く我慢できるか……勝負だぞ瞬!」
「ぬぬぬ――!
狐面!運動音痴な僕も……これだけは負ける訳には!」
「皆……なんか違う方向に行っちゃってるってば!早くヤモリさんに気付いて貰わないと――!」
髑髏川が小さな目をキョロキョロしながらオロオロする中、由清が冷静に側に居るスタッフに声をかけた。
「すいません、カンペの紙とマジック貸して下さい」
「ハッ!その手があったか――!」
髑髏川が掌を拳でバチンと叩いた。
由清は呆れ顔で大きな画用紙にサラサラと
『緊急なお願いがあります!お話をさせて下さい』
と書くと、ヤモリの方へ向いて高々と両手で上げて見せた。
ヤモリは僅かに眉を上げると、女子アナに
「水野ちゃん、悪いけどこっから頼むよ……すぐ戻るから」
と言うと、呆気に取られる水野アナを残してこちらへ歩いてくる。
HEY!you!jumpの演奏が終わった所でCMに入った。
「あ――っ!ヤモリさんっ!」
志村が声を上げると、皆それぞれの奇妙な対決を止めてヤモリを見た。
「一体、これはどういう騒ぎなんだい?」
呆れた様に言うヤモリの前に美名がズイッと出てきて真っ直ぐに見つめた。
「ヤモリさん……
先程は申し訳ありませんでした……」
「おっ。もう大丈夫かい?」
ヤモリの口元が緩む。
「あ、あの……
お願いです!
私を、プリキーを、ミュージックスタイルに今夜もう一度出させて下さい……!
あんな失敗をしてご迷惑をかけた上、図々しいお願いをしているのはわかってます……
でも……どうかお願いします!」
「お願いします!」
「頼むぜ――!神様仏様、ヤモリさんよ――!」
美名がく深く頭を下げると、真理と由清も頭を下げた。
「ヤモリさん!私からもお願い!」
「ヤモリさんお願いします!
俺らの時間を削って構いませんから!」
「ヤモリさん!」
「ヤモリさん――!」
「ヤモリさんっ!
志村と髑髏川達も一斉に頭を下げると、何秒かしてヤモリは深く溜め息をついた。
「……で、どんな風にすればいいのかい?」
「ヤモリさん!」
美名は弾かれた様に顔を上げた。
「ああ――!やっぱりヤモリさんはこうでなくちゃ!
大好きよ――!」
志村は狂喜してヤモリをギュウと抱き締める。
「志村ちゃ……
く、苦しいんだがね」
屈強な肉体の志村に強く抱き締められてヤモリは目を白黒させる。
「ヤモリさんっ!ありがとうございます――ありがとうございます!」
美名が手を広げて抱き付つこうとすると、ヤモリが
「おっ!
大歓迎だよ――!おいでおいでっ」
と言うが、涙で顔をグシャグシャにしながら真理が走り寄ると、志村と共にヤモリを胴上げし始めた。
「ちょ……君達っ!
俺は胴上げより女の子にギューして貰ったほうが……ヒエエエ」
「ワッショーイワッショーイ!流石ヤモリさんは芸能界一の司会者――!
ありがとう――!
ありがとう――!
ウワアアア」
志村と真理は涙を流しながらヤモリを胴上げし続けた。
その光景を、西野は冷ややかな目で見ていた。
(ふん……
今さら何をしたって無駄よ……
せいぜい大失敗して恥をかくがいいわ……)
番組は、残すところボンバーダイアモンドを入れてあと五組の演奏の予定だった。
ヤモリは急遽スタッフを呼び、ボンバーダイアモンドのトークをカットして、演奏が終わったら直ぐにプリキーの演奏を始める事、番組のエンドロールの映像は本日の出演者を一通り写す予定だったがそれを止めて、最後までプリキーを映す事を打ち合わせした。
スタッフは最初驚いたが、「無理」「できない」
という言葉は言わず、皆本気の表情でヤモリの言わんとする事を汲み取り、「自分達に出来る最善を尽くします」
と言って各々の仕事に戻って行った。
「さて……
最高のパフォーマンスを頼むよ!プリキーちゃん!」
ヤモリはニッコリ笑う。
「ヤモリさん……本当になんて御礼を言ったらいいか」
美名は声を詰まらせる。
「いやいや、感激するのは演奏を成功させてからだよ!
俺も楽しみにしてるからね?
……さて、そろそろ戻ってやらないと……水野ちゃんが持たないな」
水野は一人奮闘して、女性アイドルグループのメンバーに段取り通りトークを振っていた。
「さて、じゃあそういう事で!」
ヤモリはCMのタイミングでまた戻って行った。
髑髏川が屈伸をして呟いた。
「さて、僕らも向こうに戻ろうかな!」
「猫八さん……」
目を潤ませる美名に、髑髏川は親指をビシッと立てる。
「男は度胸!女は愛嬌なのだよ!
……大丈夫!何とかなるよきっと!」
「頑張ろうね――!」
「また後で!」
ボンバーダイアモンドのメンバーは口々に美名に声をかけながら、暗黒は投げキッスをして戻って行った。
美名は胸が一杯になり、目を閉じて深く息を吐いた。
早く、早く歌いたい。
力になってくれた皆の気持ちに、応えたい。
身体の奥底からメロディーが溢れだして、今にも叫び出したくなる位に心が震えていた。
「つまり……俺らが……本日のトリ?」
由清が、今気付いたかの様に絶句する。
「……!」
「よっ……由清――!
サラリととんでもない事を言うなよ――!」
美名は息を呑み、真理が声を上擦らせた。
「まあ、そう言う事よね……
あなた達のデビューに相応しい舞台よ!
ああ……私のデビューを思い出しちゃうわ……
私も初めてテレビで歌った時、いきなりのトリだったのよ~!」
志村は頬を紅潮させている。
今、ステージではベテランのアカペラグループが美しいハーモニーを響かせている。
刻一刻と、自分達の出番が近付いている――
「さて、出番前にお化粧ちゃっちゃと直しましょうか!」
「あ、あの!」
美名はある事を思い出した。
「なあに?」
「少しだけ、電話してきていいですか?」
「良いわよ~!」
急ぎ足で楽屋に向かい、ドアを開けてスマホを取る。
二回呼び出し音が鳴り、向こうが出た。
「……美名?」
美名に取って、世界の何よりも甘く心地よい恋人の声が聞こえると、一瞬うっとりと呆けてしまいそうになる。
スマホを握り締め、美名は小さく囁いた。
「剛さん……
さっき……言えなかったから、言うね?」
「……ああ。言えよ……何でも」
「剛さんを……
愛してます」
電話口で、キスをするようにチュッと音を響かせて直ぐ様切ってしまった。
今さら、猛烈に恥ずかしくなり身体中が燃える様に熱い。
会ったら、もっと恥ずかしいかも知れない。
「……電話でキスしろ、なんて……剛さんが言うから……」
唇を尖らせながら、頬が暖かく緩む。
歌う前に、綾波の声を聞いておきたかったのだ。
もう、今の美名に迷いや恐れは無かった。
鏡の中の自分に魔法をかけるが如く語りかける。
「私は出来る……
私はやってみせる……」
正真正銘の、プリキーのデビューの時がすぐそこまで迫っていた。
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