42 / 50
第3章
第12夜 初恋銀河網(6)
しおりを挟む
「本当は誰にも言うつもりなかったんだけど、もう隠すわけにはいかないわね」
俺たちは息を殺して、先輩の言葉に耳を傾けた。部屋の空気が急に冷たくなったみたいに、シーンと静まり返った。
「私たちは長年、太陽を観測してきたの。沢山の惑星をもち、地球という知的生命の棲む惑星が周っていることも突き止めた。そこで、太陽に異常な活動が起きているのを発見したの」
先輩は大きく息を吐いて、また話し始めた。その顔には、大事なことを伝えなきゃいけないという責任感が出ていた。
「太陽で、すごく大きな爆発が起きそうなの。普通の太陽フレアよりもずっと大きくて、本当に怖いくらいの規模だって言われてる」
「太陽フレア?」
未来が小さな声で聞き返した。
先輩が少し下を向いたので、哲が説明を続けた。
「太陽表面での爆発だよ。太陽フレアが起きると、X線、ガンマ線、高エネルギー粒子が飛んできて、地球の人工衛星や電力網に障害が起こるんだ」
「私も詳しくは分からないけど……この星の科学者たちの多くが、そう思ってるの」
先輩が弱々しく言うと、哲が眉をひそめて聞いた。
「どれくらいの規模なんですか?」
「想像もできないくらい……」
先輩の声には重みがあって、俺たちの背筋が伸びた。
「地球の歴史の中で、今までに見たことがないくらい大きいって予想されてるの」
先輩の言葉に、俺は息を呑んだ。頭の中で、燃え上がる地球の姿が浮かんでくる。
「この爆発で大量の高エネルギー粒子が飛び出して、最悪の場合、地球のほとんどの生き物が死んじゃうかもしれないって」
部屋に重い沈黙が落ちた。まるで地球の最後が近づいてるみたいな、そんな感じがした。
「そんな……ウソでしょ」
未来が小さな悲鳴を上げた。その声には恐怖と悲しみが混ざっていた。
「でも、まだ少しだけ希望があるの」
先輩は続けた。その声には、真っ暗な中でも光を探そうとする強さがあった。
「今の地球は、潮汐ロックで片側が常に太陽を向いている状態。だから太陽からの放射線も高エネルギー粒子も地球で遮られるから、夜半球は比較的安全なの」
「地球からこの星への移民も進んでいますよね」
俺は先輩の顔をじっと見ながら言った。
「でも、それだけじゃダメなんですか?」
先輩はすぐに頷いた。その様子からは、現実がどんなに厳しくても、前を向こうとする強い気持ちが伝わってきた。
「そう。人類が生き残るには、それだけじゃ足りないの。でも、私たちの文明に希望があるの」
「希望?」
未来が小さな声で聞き返した。その目に、小さな希望の光が宿っているのが見えた。
「ええ、そう」
先輩の目に決意の色が浮かんだ。その瞳は、まるで未来を見通しているかのように輝いていた。
「私たちの文明には、恒星を安定化させる先端技術があるの。この技術を地球と共有できれば、フレア爆発を抑制し、被害を最小限に抑えられる可能性があるわ」
「なるほど。だからこそ、通信の確立が重要なのか」
哲が納得したように言った。その声には、科学が好きな人の興奮と、人類の一員としての希望が混ざっていた。
「そう」
先輩は頷いた。髪を耳にかきあげる細い腕が、少し震えていた。人類の運命を決める大事な役目を、先輩一人が背負ってるんだ。
「通信をつなげて、この技術を伝えないと、地球はものすごい被害を受けることになるの」
俺は、やっと全部のパズルのピースがつながった気がした。怖かったけど、同時に希望も感じた。
「つまり、先輩がいるってことが……」
「そう」
先輩は俺の目をまっすぐ見つめた。その瞳には、運命に選ばれた人の寂しさと強い決意が浮かんでいた。
「私がいることで、地球と私たちの星が通信できるようになるの。私が唯一の『キャリア』かもしれないのよ」
「でも、どうしてひかり先輩だけなの?」
未来が不思議そうに聞いた。その声には、先輩を心配する気持ちと、状況が分からない戸惑いが混ざっていた。
先輩は少し悲しそうな顔をした。その目には、自分の運命を受け入れようとしてるけど、その重さに押しつぶされそうな弱さが見えた。
「正直、私にもよく分からない。でも、この能力を持つ人がすごく少ないのは間違いないわ。少なくとも、今この瞬間に地球とこの星の通信ができるのは、私だけかもしれないの」
部屋にまた静けさが広がった。先輩の言葉の重さが、俺たち全員の心に沈んでいった。その静けさは、これから向き合う大変な試練の大きさを感じさせた。
「だから内調があんなに必死だったんだ」
哲が静かに呟いた。その声には、全部を理解した人の落ち着きと、事態の深刻さへの不安が混ざっていた。
「彼らは太陽の異変と地球が危ないってことを知っていて、この情報を独り占めしようとしてるんだと思う」
「パニックを防ぐため……ってことですか?」
未来が小さな声で聞いた。その声には、希望と不安が入り混じっていた。
「表向きはそうかもね」
先輩は苦笑いした。その表情には、複雑な思いが浮かんでいた。
「でも本当は、危機を乗り越える時の主導権を握って、自分たちの力を強めたいんじゃないかな」
「彼らなりのやり方で地球を救おうとしているのかもしれない。でも、その方法は間違ってる」
俺は深呼吸して、仲間たちの顔を見回した。先輩の覚悟に満ちた瞳、哲の冷静な表情、未来の不安げな様子。全てが胸に刻まれていく。ひかり先輩の儚げな横顔に目が釘付けになる。先輩一人にこんな重荷を背負わせるなんて、絶対に許せない。
「俺には、先輩を守る力がある」
そう心の中でつぶやいた瞬間、不思議と体中に力がみなぎってきた。怖いけど、仲間がいる。そして何より、先輩のためなら何だってできる気がした。
「よし」
俺は声を上げた。その声に、自分でも驚くくらいの力強さがあった。
「俺たちで地球を救おう。そして、先輩を守ろう」
その言葉に、みんなの目が光った。俺ばゆっくりと立ち上がり、先輩の前に膝をつく。震える手を取り、そっと握り締めた。
「先輩、一緒に頑張りましょう。絶対に……先輩を守るから」
先輩の目に涙が浮かんだ。その瞳に映る自分の姿を見て、俺は改めて誓った。
「きっと、俺たちなら乗り越えられる」
列車は朝焼けの街へと走り続けていた。窓の外の風景は地球そっくりだったが、もう二度と同じようには見えなかった。それは、知識がもたらす視点の変化、そして責任の重さを感じさせるものだった。
俺たちは息を殺して、先輩の言葉に耳を傾けた。部屋の空気が急に冷たくなったみたいに、シーンと静まり返った。
「私たちは長年、太陽を観測してきたの。沢山の惑星をもち、地球という知的生命の棲む惑星が周っていることも突き止めた。そこで、太陽に異常な活動が起きているのを発見したの」
先輩は大きく息を吐いて、また話し始めた。その顔には、大事なことを伝えなきゃいけないという責任感が出ていた。
「太陽で、すごく大きな爆発が起きそうなの。普通の太陽フレアよりもずっと大きくて、本当に怖いくらいの規模だって言われてる」
「太陽フレア?」
未来が小さな声で聞き返した。
先輩が少し下を向いたので、哲が説明を続けた。
「太陽表面での爆発だよ。太陽フレアが起きると、X線、ガンマ線、高エネルギー粒子が飛んできて、地球の人工衛星や電力網に障害が起こるんだ」
「私も詳しくは分からないけど……この星の科学者たちの多くが、そう思ってるの」
先輩が弱々しく言うと、哲が眉をひそめて聞いた。
「どれくらいの規模なんですか?」
「想像もできないくらい……」
先輩の声には重みがあって、俺たちの背筋が伸びた。
「地球の歴史の中で、今までに見たことがないくらい大きいって予想されてるの」
先輩の言葉に、俺は息を呑んだ。頭の中で、燃え上がる地球の姿が浮かんでくる。
「この爆発で大量の高エネルギー粒子が飛び出して、最悪の場合、地球のほとんどの生き物が死んじゃうかもしれないって」
部屋に重い沈黙が落ちた。まるで地球の最後が近づいてるみたいな、そんな感じがした。
「そんな……ウソでしょ」
未来が小さな悲鳴を上げた。その声には恐怖と悲しみが混ざっていた。
「でも、まだ少しだけ希望があるの」
先輩は続けた。その声には、真っ暗な中でも光を探そうとする強さがあった。
「今の地球は、潮汐ロックで片側が常に太陽を向いている状態。だから太陽からの放射線も高エネルギー粒子も地球で遮られるから、夜半球は比較的安全なの」
「地球からこの星への移民も進んでいますよね」
俺は先輩の顔をじっと見ながら言った。
「でも、それだけじゃダメなんですか?」
先輩はすぐに頷いた。その様子からは、現実がどんなに厳しくても、前を向こうとする強い気持ちが伝わってきた。
「そう。人類が生き残るには、それだけじゃ足りないの。でも、私たちの文明に希望があるの」
「希望?」
未来が小さな声で聞き返した。その目に、小さな希望の光が宿っているのが見えた。
「ええ、そう」
先輩の目に決意の色が浮かんだ。その瞳は、まるで未来を見通しているかのように輝いていた。
「私たちの文明には、恒星を安定化させる先端技術があるの。この技術を地球と共有できれば、フレア爆発を抑制し、被害を最小限に抑えられる可能性があるわ」
「なるほど。だからこそ、通信の確立が重要なのか」
哲が納得したように言った。その声には、科学が好きな人の興奮と、人類の一員としての希望が混ざっていた。
「そう」
先輩は頷いた。髪を耳にかきあげる細い腕が、少し震えていた。人類の運命を決める大事な役目を、先輩一人が背負ってるんだ。
「通信をつなげて、この技術を伝えないと、地球はものすごい被害を受けることになるの」
俺は、やっと全部のパズルのピースがつながった気がした。怖かったけど、同時に希望も感じた。
「つまり、先輩がいるってことが……」
「そう」
先輩は俺の目をまっすぐ見つめた。その瞳には、運命に選ばれた人の寂しさと強い決意が浮かんでいた。
「私がいることで、地球と私たちの星が通信できるようになるの。私が唯一の『キャリア』かもしれないのよ」
「でも、どうしてひかり先輩だけなの?」
未来が不思議そうに聞いた。その声には、先輩を心配する気持ちと、状況が分からない戸惑いが混ざっていた。
先輩は少し悲しそうな顔をした。その目には、自分の運命を受け入れようとしてるけど、その重さに押しつぶされそうな弱さが見えた。
「正直、私にもよく分からない。でも、この能力を持つ人がすごく少ないのは間違いないわ。少なくとも、今この瞬間に地球とこの星の通信ができるのは、私だけかもしれないの」
部屋にまた静けさが広がった。先輩の言葉の重さが、俺たち全員の心に沈んでいった。その静けさは、これから向き合う大変な試練の大きさを感じさせた。
「だから内調があんなに必死だったんだ」
哲が静かに呟いた。その声には、全部を理解した人の落ち着きと、事態の深刻さへの不安が混ざっていた。
「彼らは太陽の異変と地球が危ないってことを知っていて、この情報を独り占めしようとしてるんだと思う」
「パニックを防ぐため……ってことですか?」
未来が小さな声で聞いた。その声には、希望と不安が入り混じっていた。
「表向きはそうかもね」
先輩は苦笑いした。その表情には、複雑な思いが浮かんでいた。
「でも本当は、危機を乗り越える時の主導権を握って、自分たちの力を強めたいんじゃないかな」
「彼らなりのやり方で地球を救おうとしているのかもしれない。でも、その方法は間違ってる」
俺は深呼吸して、仲間たちの顔を見回した。先輩の覚悟に満ちた瞳、哲の冷静な表情、未来の不安げな様子。全てが胸に刻まれていく。ひかり先輩の儚げな横顔に目が釘付けになる。先輩一人にこんな重荷を背負わせるなんて、絶対に許せない。
「俺には、先輩を守る力がある」
そう心の中でつぶやいた瞬間、不思議と体中に力がみなぎってきた。怖いけど、仲間がいる。そして何より、先輩のためなら何だってできる気がした。
「よし」
俺は声を上げた。その声に、自分でも驚くくらいの力強さがあった。
「俺たちで地球を救おう。そして、先輩を守ろう」
その言葉に、みんなの目が光った。俺ばゆっくりと立ち上がり、先輩の前に膝をつく。震える手を取り、そっと握り締めた。
「先輩、一緒に頑張りましょう。絶対に……先輩を守るから」
先輩の目に涙が浮かんだ。その瞳に映る自分の姿を見て、俺は改めて誓った。
「きっと、俺たちなら乗り越えられる」
列車は朝焼けの街へと走り続けていた。窓の外の風景は地球そっくりだったが、もう二度と同じようには見えなかった。それは、知識がもたらす視点の変化、そして責任の重さを感じさせるものだった。
25
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】
S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。
物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。
夏の決意
S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。
今日の桃色女子高生図鑑
junhon
青春
「今日は何の日」というその日の記念日をテーマにした画像をAIで生成し、それに140文字の掌編小説をつけます。
ちょっぴりエッチな感じで。
X(Twitter)でも更新しています。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
普通の男子高校生である俺の日常は、どうやら美少女が絶対につきものらしいです。~どうやら現実は思ったよりも俺に優しいようでした~
サチ
青春
普通の男子高校生だと自称する高校2年生の鏡坂刻。彼はある日ふとした出会いをきっかけにPhotoClubなる部活に入部することになる。そこには学校一の美女や幼馴染達がいて、それまでの学校生活とは一転した生活に変わっていく。
これは普通の高校生が送る、日常ラブコメディである。
全体的にどうしようもない高校生日記
天平 楓
青春
ある年の春、高校生になった僕、金沢籘華(かなざわとうか)は念願の玉津高校に入学することができた。そこで出会ったのは中学時代からの友人北見奏輝と喜多方楓の二人。喜多方のどうしようもない性格に奔放されつつも、北見の秘められた性格、そして自身では気づくことのなかった能力に気づいていき…。
ブラックジョーク要素が含まれていますが、決して特定の民族並びに集団を侮蔑、攻撃、または礼賛する意図はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる