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第3章
第12夜 初恋銀河網(5)
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「蛍くんには話したけど……ここは、もう地球じゃないの」
その声には、今まで聞いたことのない重みがあった。俺たちは息を呑んで先輩を見つめた。未来は目を丸くして、哲は眉をひそめていた。
「えっ? どういうこと?」
未来の肩がガクッと落ちるのが見えた。哲の目が少し大きくなる。先輩は深呼吸をして、話を続けた。
「ここは系外惑星『永遠の眠り』」
「でも、外の風景は……」
未来が窓の外を指さした。その指が少し震えていた。
「そう、わざと地球に似せてあるの」
先輩は小さく頷いた。哲は窓の外を眺めながら、感心したように何度も頷いていた。
「なるほど。地球から来た人たちが違和感なく暮らせるようにってことか」
「さすが哲くん。理解が早くて助かる」
先輩に褒められて、哲は少し照れたように頬を赤らめた。
俺の頭の中では、さっきからずっと、ある疑問がぐるぐる回っていた。心臓がドキドキして、耳まで響いてくる。
「あの、先輩……黒石って人が言っていた『キャリア』っていうのは、本当なんですか?」
俺は慎重に言葉を選びながら尋ねた。先輩はゆっくりと俺たちの方を向いた。その目には、今まで見たことのない強い決意が光っていた。まるで、宇宙の底を見つめているみたいだった。
「キャリア?」
哲が眉をひそめた。その声には、疑いと好奇心が混ざっていた。
「ええ、本当よ」
先輩は頷いた。その動きには、大事な秘密を話す人特有の緊張感があふれていた。
「私が、データを運ぶの。この星と地球の間をね」
俺は息を呑んだ。先輩の言葉の重みが、だんだん分かってきた。同時に、俺たちが巻き込まれている事態がどれだけヤバいか、痛いほど感じた。
「つまり、地球に送られる先輩の脳と体のデータに、他のデータをくっつけるってことですか?」
哲が真剣な顔で尋ねた。
「うーん、くっつけるっていうより、私の脳の情報の中に、送りたいデータが埋め込まれるって感じかな」
「じゃあ……内調がひかり先輩を追いかけてたのは、異星人だからじゃなくて、その能力が欲しかったからなんですね」
先輩は重々しく頷いた。その様子には、思いもよらない重荷を背負わされた人の苦しみが見えた。
「他の星との通信が軍事的に重要なのは簡単に想像できる。きっと国の安全のために独り占めしたいんだろうな」
哲が静かに言った。未来は怖そうに自分の肩を抱きしめた。
「怖い……。ひかり先輩を戦争の道具にしようとしてるってこと?」
「まだそうなるって決まったわけじゃないよ。それに、地球とこの星じゃ技術のレベルが全然違いすぎて、戦争にならないと思う」
哲が眼鏡を直しながら答えるのを、先輩は満足そうに見ていた。
「でも、なんか変だよね?」
未来が首を傾げた。
「何かって何が?」
「なんか、直感的に……」
こういうときの未来の直感は、なんとなくだけど、大体当たる気がする。
「ねぇ、ひかり先輩。地球とこの星の通信って、どうしてそんなに大事なの?」
未来が身を乗り出すようにして尋ねた。その目には、怖さと知りたい気持ちが混ざっていた。哲は腕を組んで、鋭い目つきで先輩を見つめていた。
「もしかして……」
俺の言葉が途切れた。なんて言っていいか分からないくらい、重い気持ちになっていた。
「先輩が地球に運ぶデータに、何か秘密が?」
窓の外を見つめていた先輩は、何かを決意したみたいに頷いてから振り返った。長い髪がさらりと柔らかな音を立てる。
「——地球の運命が、かかってるの」
先輩の声は、宇宙の秘密を明かすみたいに、静かだけど力強かった。
その声には、今まで聞いたことのない重みがあった。俺たちは息を呑んで先輩を見つめた。未来は目を丸くして、哲は眉をひそめていた。
「えっ? どういうこと?」
未来の肩がガクッと落ちるのが見えた。哲の目が少し大きくなる。先輩は深呼吸をして、話を続けた。
「ここは系外惑星『永遠の眠り』」
「でも、外の風景は……」
未来が窓の外を指さした。その指が少し震えていた。
「そう、わざと地球に似せてあるの」
先輩は小さく頷いた。哲は窓の外を眺めながら、感心したように何度も頷いていた。
「なるほど。地球から来た人たちが違和感なく暮らせるようにってことか」
「さすが哲くん。理解が早くて助かる」
先輩に褒められて、哲は少し照れたように頬を赤らめた。
俺の頭の中では、さっきからずっと、ある疑問がぐるぐる回っていた。心臓がドキドキして、耳まで響いてくる。
「あの、先輩……黒石って人が言っていた『キャリア』っていうのは、本当なんですか?」
俺は慎重に言葉を選びながら尋ねた。先輩はゆっくりと俺たちの方を向いた。その目には、今まで見たことのない強い決意が光っていた。まるで、宇宙の底を見つめているみたいだった。
「キャリア?」
哲が眉をひそめた。その声には、疑いと好奇心が混ざっていた。
「ええ、本当よ」
先輩は頷いた。その動きには、大事な秘密を話す人特有の緊張感があふれていた。
「私が、データを運ぶの。この星と地球の間をね」
俺は息を呑んだ。先輩の言葉の重みが、だんだん分かってきた。同時に、俺たちが巻き込まれている事態がどれだけヤバいか、痛いほど感じた。
「つまり、地球に送られる先輩の脳と体のデータに、他のデータをくっつけるってことですか?」
哲が真剣な顔で尋ねた。
「うーん、くっつけるっていうより、私の脳の情報の中に、送りたいデータが埋め込まれるって感じかな」
「じゃあ……内調がひかり先輩を追いかけてたのは、異星人だからじゃなくて、その能力が欲しかったからなんですね」
先輩は重々しく頷いた。その様子には、思いもよらない重荷を背負わされた人の苦しみが見えた。
「他の星との通信が軍事的に重要なのは簡単に想像できる。きっと国の安全のために独り占めしたいんだろうな」
哲が静かに言った。未来は怖そうに自分の肩を抱きしめた。
「怖い……。ひかり先輩を戦争の道具にしようとしてるってこと?」
「まだそうなるって決まったわけじゃないよ。それに、地球とこの星じゃ技術のレベルが全然違いすぎて、戦争にならないと思う」
哲が眼鏡を直しながら答えるのを、先輩は満足そうに見ていた。
「でも、なんか変だよね?」
未来が首を傾げた。
「何かって何が?」
「なんか、直感的に……」
こういうときの未来の直感は、なんとなくだけど、大体当たる気がする。
「ねぇ、ひかり先輩。地球とこの星の通信って、どうしてそんなに大事なの?」
未来が身を乗り出すようにして尋ねた。その目には、怖さと知りたい気持ちが混ざっていた。哲は腕を組んで、鋭い目つきで先輩を見つめていた。
「もしかして……」
俺の言葉が途切れた。なんて言っていいか分からないくらい、重い気持ちになっていた。
「先輩が地球に運ぶデータに、何か秘密が?」
窓の外を見つめていた先輩は、何かを決意したみたいに頷いてから振り返った。長い髪がさらりと柔らかな音を立てる。
「——地球の運命が、かかってるの」
先輩の声は、宇宙の秘密を明かすみたいに、静かだけど力強かった。
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