〔仮〕悪役令嬢は婚約破棄で自由を謳歌する

ブラックベリィ

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088★赤ちゃんはまだ封印状態のようです

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 手を翳して赤子の状態を確認したライムの言葉に、シアは小首を傾げながら聞く。

 「ねぇーライム…この赤ちゃん
  もしかして不味い状態なの?」

 言外に、コウちゃんガッちゃんのまだ覚醒(めざ)めていない子達のように?と、シアは柳眉をへにょっと心配そうにひそめて赤子を見下ろす。
 そんなシアの不安そうな言葉に、ライムは首を振る。

 「うぅ~んそぉ~ねぇ………
  甦生の時を待つ神獣達とは
  ちょっと違う状態かな?

  こうしてこの赤ちゃんの持つ
  内包する魔力に触れて見た限りじゃ

  腕輪の中に居る子達に比べると
  まだまだ十分平気な状態よ

  魔力枯渇までは言って無いわ
  かなりギリギリだけどね

  それにね、この赤ちゃん
  どうやら、あの2人に

  この世界の神子としての
  役割を定められて創造された後

  その生命を維持する為に
  極限まで休眠状態にされて
  封印されたままだったみたいね

  役割の為の【理(=ことわり)】だとか
  そういうモノを存在自体に
  仕込まれているようだけど………」

 とここで言い淀み、続けるべき最適な言葉が見つからないライムに、シアはきょとんとした表情で首を傾げる。

 「えっ? 封印されているの?
  もう、あそこから出た時に
  封印はとかれているんじゃないの?」

 不思議そうに言うシアに、ライムは首を振る。

 「まぁ…そうね、例えるなら……
  第一の封印は解除されてるけど

  まだ封印は幾つもあるようね
  手応え的にそんな感じかな?

  封印解除の条件は判らないけど………
  この子の成長に合わせて
  封印が解放されるモノもありそうね

  じゃなくてね、残念なコトに
  どうやら、この赤ちゃんは

  この世界の為の調和を保つという
  役目は架せられてるけど

  それ以外は、見事にまっさらだから」

 「まっさらだから?」

 最後の言葉をオウムのように繰り返すシアに、ライムはちょっと戸惑いを浮かべつつ言う。

 「普通の赤ちゃんと一緒な状態」

 「普通な赤ちゃん状態ってことは
  普通に育てて良いのかな?」

 シアの言葉に、ライムは頷く。

 「たぶん、それで良いと思うわよ
  ただ、シアに育てられる?
  育児経験、前世である?」

 ライムの問いかけに、シアは困ったような表情で言う。

 「実は、無いんだよねぇ………
  引きこもりしてたし………

  犬や猫の子なら引き取って
  世話したコトあるけど……」

 と言いながら、シアは泣きもしない赤子の頭をそっと撫でる。
 そんな中、フリードが専用ワゴンにお茶を用意する。
 ふわりと華やかな香りがただよって来たコトでそれに気付き、視線をそちらに向ける………と。

 「まま、その子の名前どうする?
  僕の弟でしょ………

  色々な条件とか難しいコトは
  あとで考えれば良いでしょ

  取り敢えず、名前を付けようよ」

 そう言いながら、フリードはお茶セットを乗せたワゴンをソファアの側まで押して来る。

 「そうだな、何にしても
  その赤子には名前だな

  呼び名が無いのは不便だし
  そういうモノも必須だろう」

 ジオンもその意見に賛成する。

 「まぁ…ゲーム設定の最初は
  名前に職業に属性とかだから………

  まずは、名前ね
  職業はさしずめ、赤ちゃんね

  属性は、神子のようだから
  聖属性って感じかしら?

  でもって、貰ったのはシアだから
  その権利と義務はシアにあるわね」

 ライムが茶化すように言うと、なんとなく空気が柔らかくなる。

 「そうね、それじゃここは………
  ジオンも一緒に考えてね

  あの2人の元仲間だったんでしょ
  神子を解体した責任とってね

  あっと勿論、フリードは
  元神子のカケラということで

  この赤ちゃんにとっては
  お兄ちゃんなんだから一緒に考えてね」

 にこにこしながら言うシアに、ジオンは肩を竦めて言う。

 「そうだな、それじゃ………
  腰据えて考える為にも
  取り敢えず、座ろうか?」

 そう言って、シアをふわりと抱きあげて、ソッとソファアに座らせ、その隣りに当然のように座る。
 そう、室内に入ったあと、全員立ったままで話していたのだ。

 ジオンの行動に、ライムは肩を竦めて対面のソファアに座る。
 当然、コウちゃんガッちゃんもその左右に座るが、ちょっと気力を使いはたしているらしく、話しに加わる気ありませんという態度で、クルリンッと丸くなって寝てしまう。

 フリードは、シア、ライム、ジオンの順に花茶を置いて行く。
 そして、自分の分も入れて、ジオンとは反対側のシアの隣りにすわった。










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