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第一生 子猫とジャガーとドリンク無双
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しおりを挟む「くく、愛い愛い! そ~らイッサイ、ワシの膝に乗るがよい」
掴まれていた手を引かれて、逆らうことなく皇帝の膝に横抱きに乗る。
年齢に反して固く引き締まった皇帝の膝は、一斉を難なく受け止めた。物理的にも強そうな皇帝だ。
「イッサイ、ん~イッサイ。イッサイは良いのう。実に愛い男じゃ。ワシの息子たちはこの素直さがない。遊び心にも欠けておる。優秀な堅物じゃろうが臆病な本の虫じゃろうがおのが心に素直でない生き物などほんにつまらんのう……そう思わんか? イッサイ。ん?」
「さぁ、わかんね。陛下の息子に、会ったことねぇし」
「あははっ! それはそうじゃな!」
「はぁ……陛下、そろそろ話を進めていただけぬか……」
「おっと」
見るに見兼ねて子猫の飼い主であるジェゾが、渋い顔をして進言する。
皇帝はすぐに一斉をからかうのをやめた。逞しいジャガーの尾がユラユラと落ち着きなく揺れているからだ。
これを無視するとマズいとわかっているらしい。抜け目のない皇帝である。
「面白いところじゃったのじゃが、堅物過ぎるのう……くく。さ~て、イッサイはジェッゾをどう思う?」
「!」
「ジェゾ?」
そう言うと皇帝はニヤリと口角を上げ、一斉の顔をのぞきこんだ。
揺れていたジェゾの尾がピン! と立つ。一斉はジェゾの反応を見つつも、当初のルール通り素直に答えた。
「好きだ」
「……ぐ……」
「ほーう?」
皇帝の目を見つめ返し、悩むことなく伝える。嘘偽りのない本心だった。
それを聞いたジェゾが目元に手を当てて呻く。皇帝はニヤニヤと愉快に三日月を作った。個性的な二人だ。
一斉には読めない反応である。
「ジェッゾが恐ろしくないのか。お主なぞ頭からバリバリと食らえる獣じゃぞ?」
「いや……? 食われたことねぇ。し、助けてくれただろ」
「ならそのジェッゾがお主に不吉をもたらすとしたら?」
「もたらす……あぁ、不吉。ゴミに捨てる。……あと、ジェゾのこと、不吉って言うのは、よくねぇな」
ボソボソと思うがまま答えていた一斉だが、最後ばかりは元々剣呑とした目付きの鋭さを増して訴えた。
不吉をもたらすなんて、根拠もなく言われても気分はよくない。根拠があったとしても気分はよくない。
今後もしそうジェゾを言い表したいのなら、自分の前ではやめてくれ。
そういう気分からスッ……と目を細めて、一斉は強者である皇帝の瞳を、獲物を狙う鷹のように射抜く。
するとジェゾは無言で目元を抑えたまま俯き、皇帝は笑いをこらえて震え始めた。
なにが面白いのやら。こちらは面白くなかったのだが。
「くっ、ふふふ、くく……」
「…………」
「くく、わかったわかった。イッサイ、そう睨むでない。お主の顔つきはまるで鷹じゃ。ワシが悪かった。ワシはジェッゾを不吉だと思ったことなどただのひとひらもない。愛い男じゃよ。竹馬の友と思うておる」
一斉が睨むのをやめると、皇帝はほっほっほと笑いながらジェゾにも「悪かったのう」と声をかけた。
ジェゾは構わないと頷く。
ちくばのとも。無二の友人。
二人の仲には、そういう関係の名前があるらしい。
不吉という言葉もちくばのともの皇帝の口から出たものなら、ジェゾには別の意味に聞こえるようだ。
仕組みとしてはわからないが、なんとなくで一斉はとっくり二人のいい感じな関係を理解する。
そんな一斉の手をなでながら、クククと喉奥を鳴らす皇帝。
「イッサイ、お主の召喚獣としての能力を見せてくれ」
「……[ドリンクバー]」
キュ、と眉間にシワが寄った。
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