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終章 本日のディナーは勇者さんです。
02
しおりを挟むあぁそうそう。
それから、アマダたちの話だな。
ライゼンさんに回復してもらったセファーと、その双子の弟らしいジファー。
セファーは予想通り、アマダに恋していた。そのせいで、暴走思考になっていたのだ。それに精霊族至上主義でもあった。
なぜそう俺たちの敵になりそうな要素が盛りだくさんだったのだろう。
ジファーもアマダが好きだった。
いつも共にいるからこそ、アマダの役に立たなければ自分は見てもらえないと思ったそうだ。
だから魔界に侵入するのは良くないと思いつつも、タローは元々精霊族のものなので、取り返してもいいと結論づけたと言う。
もう、もう。
この困ったさんたちめ。
俺は話を聞いて、レンガの広場に正座をする二人を前に、無言でビシビシッ! とデコピンをした。
『『いッ』』
『これはアゼルのぶん。これはタローのぶん。これはリューオのぶん。これはユリスのぶん。これはガドのぶん。これはライゼンさんのぶん。これはキャットのぶん。これはゼオのぶん……』
『『いっ、痛い、痛いぞ!』』
『そしてこれは、今回困ったみんなのぶんだ!』
『『ぐッ! じ、自分のぶんはいいのか!?』』
『いい!』
連続でビシビシすると、双子はカラーリングと性格は違うのに同じ表情でポカンとする。そんな顔をしても許さないぞ。
しかしこの後の双子は、俺が思わず許してしまうような悲惨な末路を遂げる。
リューオによってボコボコにされたセファーは、神霊を追い返したアゼルによって、十分の九殺しにされたのだ。
つまり、魔族最強と人間最強のタッグ攻撃を受けたことになった。
慌てた俺がリューオに理由を聞くと、こう。
『だってコイツ、この俺とついでにシャルと、そのまたついでに魔王をハメやがったんだぜッ? 俺は数々の嫌がらせを忘れてねェかンなッ! 真・勇者必殺バックドロップッ!』
『ぐぇッ!』
『あぁっ、アマダーっ!』
リューオはそう言って唸り、ついでとばかりにアマダに見事なバックドロップをかましていた。
こらこら、待て待て。
同盟国の王様相手に、バックドロップはいけない。政治的にまずい。
精霊族がどよめいたが、アマダ愛好団体のトップである双子がのびているので、手出しできず、である。
(……というか、離れの数々の不具合はセファーの嫌がらせだったのか……)
俺は別にいいかと思っていたのだが、あれは明確に嫌がらせだったらしい。ビックリだ。
それを聞いたアゼルがライゼンさんに回復を命じて、再度十分の九殺しにしていた。
オーバーキルすぎる。
やはり魔王、一番大人気ない。
そしてそのアゼルはセファーどころかジファーまで十分の九殺しおかわり、と洒落こんだのだが。
その理由は、こう。
『つまりこれまで大人しかったのは、我慢してただけだ。我慢してただけなんだよ、俺はな……。……先輩王様直々・教育的キックッ!』
『グハッ!』
『あぁっ、またかっ!』
アゼルは思うところが山のようにあったのに、ずーっと我慢していただけだ、と言って、アマダに蹴りを入れた。
またしても、ノックアウトアマダ。
どうして二人とも必殺技のような名前を叫び、助走をつけて仕留めるのだろうか。
そして魔王の愉快な仲間たち。
そわそわと次は俺なとでも言いたげな顔で並ぶんじゃない。
魔導具を構える非武闘派のユリスも驚きだが、ライゼンさんがその列を整えていたのが一番強烈だった。
魔界のみんなは、やはり根が魔族である。
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