本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
上 下
892 / 901
終章 本日のディナーは勇者さんです。

02

しおりを挟む


 あぁそうそう。
 それから、アマダたちの話だな。

 ライゼンさんに回復してもらったセファーと、その双子の弟らしいジファー。

 セファーは予想通り、アマダに恋していた。そのせいで、暴走思考になっていたのだ。それに精霊族至上主義でもあった。

 なぜそう俺たちの敵になりそうな要素が盛りだくさんだったのだろう。

 ジファーもアマダが好きだった。
 いつも共にいるからこそ、アマダの役に立たなければ自分は見てもらえないと思ったそうだ。

 だから魔界に侵入するのは良くないと思いつつも、タローは元々精霊族のものなので、取り返してもいいと結論づけたと言う。

 もう、もう。
 この困ったさんたちめ。

 俺は話を聞いて、レンガの広場に正座をする二人を前に、無言でビシビシッ! とデコピンをした。

『『いッ』』
『これはアゼルのぶん。これはタローのぶん。これはリューオのぶん。これはユリスのぶん。これはガドのぶん。これはライゼンさんのぶん。これはキャットのぶん。これはゼオのぶん……』
『『いっ、痛い、痛いですよ!』』
『そしてこれは、今回困ったみんなのぶんだ!』
『『ぐッ! じ、自分のぶんはいいのですか!?』』
『いい!』

 連続でビシビシすると、双子はカラーリングと性格は違うのに同じ表情でポカンとする。そんな顔をしても許さないぞ。

 しかしこの後の双子は、俺が思わず許してしまうような悲惨な末路を遂げる。

 リューオによってボコボコにされたセファーは、神霊を追い返したアゼルによって、十分の九殺しにされたのだ。

 つまり、魔族最強と人間最強のタッグ攻撃を受けたことになった。

 慌てた俺がリューオに理由を聞くと、こう。

『だってコイツ、この俺とついでにシャルと、そのまたついでに魔王をハメやがったんだぜッ? 俺は数々の嫌がらせを忘れてねェかンなッ! 真・勇者必殺バックドロップッ!』
『ぐぇッ!』
『あぁっ、アマダーっ!』

 リューオはそう言って唸り、ついでとばかりにアマダに見事なバックドロップをかましていた。

 こらこら、待て待て。
 同盟国の王様相手に、バックドロップはいけない。政治的にまずい。

 精霊族がどよめいたが、アマダ愛好団体のトップである双子がのびているので、手出しできず、である。

(……というか、離れの数々の不具合はセファーの嫌がらせだったのか……)

 俺は別にいいかと思っていたのだが、あれは明確に嫌がらせだったらしい。ビックリだ。

 それを聞いたアゼルがライゼンさんに回復を命じて、再度十分の九殺しにしていた。

 オーバーキルすぎる。
 やはり魔王、一番大人気ない。

 そしてそのアゼルはセファーどころかジファーまで十分の九殺しおかわり、と洒落こんだのだが。

 その理由は、こう。

『つまりこれまで大人しかったのは、我慢してただけだ。我慢してただけなんだよ、俺はな……。……先輩王様直々・教育的キックッ!』
『グハッ!』
『あぁっ、またかっ!』

 アゼルは思うところが山のようにあったのに、ずーっと我慢していただけだ、と言って、アマダに蹴りを入れた。

 またしても、ノックアウトアマダ。

 どうして二人とも必殺技のような名前を叫び、助走をつけて仕留めるのだろうか。

 そして魔王の愉快な仲間たち。
 そわそわと次は俺なとでも言いたげな顔で並ぶんじゃない。

 魔導具を構える非武闘派のユリスも驚きだが、ライゼンさんがその列を整えていたのが一番強烈だった。

 魔界のみんなは、やはり根が魔族である。



しおりを挟む
感想 215

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

処理中です...