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十四皿目 おいでませ精霊王

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 しかし本音を言えば、ここまでされたらやはりちゃんと抱いてもらいたい。

 だから早く、アゼルには人型に戻ってほしいのだ。

 できれば酔いの覚めた正気の人型に。

 けれど前回飲んだ時も、たった一本のワインで一晩は酔いが覚めなかったので、可能性は薄いだろう。

 それに何度も要求を訴えているのに、アゼルはなにが不服なのか、頑なに人型に戻らない。

 言葉の大切さを痛感する一幕だ。
 言葉が通じると言うのは、奇跡的だな。

「ふぁ……ッ」

 許してくれアゼルっ、と泣きついてしまいそうな心情の最中。

 不意にチュプ、と襞をまさぐっていた舌を引き抜かれ、無防備な声を出してしまった。

 もしかして、ようやく俺の言葉が届いたのかもしれない。

 眉をハの字にし、微かな希望を持って上目遣いにアゼルの様子を伺う。

 持ち上げられていた背中を床におろしてもらえると、未だに恥ずかしい格好だが、羞恥心は少しマシになった。

「あ、アゼル……?」
「ウォン」
「ぁえ……っ?」

 アゼルは俺の身体をくるりとひっくり返し、うつ伏せにして浮かれた吠え声をあげる。

 モフモフだが重たい巨体を用い、俺を気遣いつつもしっかりと乗り上げた。

 そのまま背後から後頭部に鼻先を擦り付けられる。これは甘えているのだ。

 あぁ、闇魔力の拘束がいつの間にやら腕を確保しているな。

 俺の腕は自分の背中で一纏めじゃないか。身動きが取れないぞ。

「……。……ええと」

 完全にまな板の上の鯉状態にされた俺の下肢に、覚えのある熱が充てがわれた。

 ヌルリと滑る、滑らかな凶器。

 尻の割れ目を伝って、透明な液体がポタ、とマットに落ちる。

 そうだな、周到過ぎるくらい解したもんな。ちゃんと俺を感じさせたしな。

 未来を思って少し縮んだぞ。
 だけどそれも、二人で本懐を遂げるためには必要なこと。

 ──で、だ。

 アゼルと言えば、アレも魔王級でお馴染みの俺の尻に優しくない一物の持ち主である。

 それはもちろん、人型の時と同じ様に俺を抱こうとしている、この酔っぱらい魔王様のアレにも当てはまる訳で。

 そしてアゼルは現在、人型より大きな狼なのだ。

 サァ、と青ざめる。
 一瞬で血の気が引くとは、このことか。


「ぜ、絶対に無理だ! それを挿れるには肉体改造が必要だ! に、ニリットルペットボトルは本当に無理だぞ!?」

『ん~? いつもしてるだろ……うんん、だいじょうぶ、しゃるはがんじょう……』

「あぁぁアゼルっ、みっ認めるからっ、俺はヒョロガリの貧弱男だっ! 白状するっ! 筋トレの成果は、タローが生まれてから停滞中で……っ!」

(正直普段の時間の殆どをタローと一緒に遊んだりしているから、ヒョロくなったぞ──!)


 濡れて緩んだ後孔を滑る凶器の挿入を、どうにかして回避したい。

 俺は断固として認めなかった貧弱宣言を、初めて受け入れたのだった。



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