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十二皿目 卵太郎、改め
08(sideアゼル)
しおりを挟むタローの猛攻から抜け出して、風邪疑惑について詳しい話を聞く。
どうやらシャワーを浴びさせてもらった時に、ちゃんと水気を拭かないと風邪を引いてしまうと教えられたらしい。
俺の頬を揉んでいたのは、頭に手が届かないからだ。
タローとしては、シャルの真似をしてタオルで拭いているつもりだったということである。タオルがまずねぇぞ。
「……ぐるるる……」
あぁクソ、よくわかんねぇな。行動が。子どもってこんなに子どもだったか?
ガドはしばらく竜の村に預けられていてもう少し育ってから来たので、生まれたてには会ってない。
アイツはもっと「魔王~登るぜ~」とか言いながら、第四形態の俺を登って遊んでいるようなタイプの子どもだった。
動いたら殺すかと思って冷や汗かいたぜ。
まぁシャルの教育とは言え、他人に心配されること自体は、悪くない気分だ。
実際風邪をひいていたらかっこわるいので心配されたくねぇけど、そうじゃないならなんとなく嬉しい。
しかしなんだか、絆されてきている気がする。それは悔しい。
「おいタロー。お前、卵の時に俺が言ったこと覚えてるか?」
『たまごのとき?』
「そうだぜ。シャルに一番愛される仕事は俺のもので、シャルに抱きしめられるポジションも俺のものだ。そう言った。それは今も有効だ。シャルは俺のものだから、ペットの筈が人型だったから成り行きで俺たちの娘になったからって、俺はお前に一番を譲る気はねぇ」
『?? まおちゃん、わかんない……』
「グルル……、つまり、俺はシャルが世界で一番大好きだ! 世界というのはタローの見えてるところと、見えてないところを足した全部だ! わかったか?」
『おぉ~! わかったよ!』
俺が拳を握って真剣に宣戦布告を言い聞かせると、タローは俺と同じように拳を握って、コクコクと頷いた。
ふふん。流石シャルの育てた卵、素直だぜ。素直でわかりやすいやつはイイ。機嫌よく鼻を鳴らす。
シャルは〝かわいがること〟が好きだから、かわいいものが好きだ。
動物も子どもも、特別好きじゃないとは言っていたがかなり弱い。
ユリスもよく頭をなでられている。
俺のこともすぐかわいいと言うが、できれば格好いいと思われてぇ。
でも、かわいいも格好いいも、シャルが褒める言葉の対象でナンバーワンは俺じゃないと駄目だ。そう決まってるんだよ。
その素直でかわいげのある性格と、動物と言う鳥の翼。そして自分の世話した卵から生まれた子ども。
──トリプル役満で俺のシャルを誑かしたことは、まだ根に持ってるからな……!
デレデレのシャルを思い出して、歯の奥がギリギリと軋む。
俺の嫉妬心はなんにでも湧きあがるんだよ。なんてったって俺だ。
物わかりのいいタローに一番の座は守られたと、ドヤ顔を晒す。
頷いていたタローは、俺のドヤ顔ににこにこと笑顔で返した。
『私もしゃるとまおちゃん、だいすき~! にへへへ、いつも外でしゃるの声、まおちゃんのはなししてたよ。だから私、はやくあいたいって、してた!』
「超光属性の英才教育じゃねぇか」
──あぁ……シャル。
タローが俺のような性格になって俺二号に成長したらどうすると言っていたが、それより先にシャル二号が出来上がってるぞ。
英才教育すぎて眩しいぜ。
そうだよな。
俺だって存在も顔も知らない親より、親と言えばライゼンだ。
黙ってオレンジジュースのおかわりをいれてやりながら、生みの親より育ての親を実感しているのだった。
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