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十皿目 ワンとニャー
04
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「という相談でな。リューオはリベンジするようだ。とはいえ、元々それほど変なことはしていないと思うが……」
「うぐっ……ま、まあな。そのくらいで変だと思うんなら、人間は淡白なんじゃねぇのか?」
その日の夜。
就寝前のフリータイムに今日の出来事を話すと、ベッド脇のロッキングチェアに座って明日の朝からあるらしい会議の資料を確認していたアゼルは、首をかしげた。
俺の様子をチラチラソワソワと見ながらなのはなぜかわからないが、アゼルが落ち着きをなくすことは、ままあることだ。
気にすることなくベッドの上で軽くヨガのポーズをとって体をほぐしつつ、人間の性事情について考える。
人間国にいた頃はそれどころじゃなかったが、現代でも俺は淡白だったからな。人間云々は正直よくわからない。
俺がこんなにも繰り返し体を重ねたのは、アゼルだけだ。経験不足は否めない。
素人な俺に引き換え、アゼルはモテる。
過去のそういう歴史を聞くのはよろしくないと思うので聞いていないが、俺よりは断然経験値を獲得しているだろう。
一応知っていることは、これまで城では女性関係の一夜の過ちすらなかったらしいということ。
けれどアプローチは数多あったはずだ。いくら前アゼルが他人不信だったとはいえ、どこかで桃色展開があったと思う。
現にアゼルは次から次へとあの手この手で、日々俺の体を開発調教している。
俺なんかはお遊戯にも等しいノーマルな性知識しかなかったのに、この差はもうスペシャリストで間違いない。きっと正解だ。
「俺は人間と暮らしていた頃、あまりそんなことがなくて……実は一般的な程度がよくわからない。でも経験豊富なお前が言うなら、やっぱり普通なんだな」
「ぐはっ!」
「どっどうしたっ?」
なんの気なしにそう言った途端、アゼルは突然グシャッ! と資料に顔を押し付けた。どうした。発作のバージョン違いか?
なにかあったのかと驚いてにじり寄ろうとすると、片手で制される。
「おうぇあひゃううぉひあひへへ……ッ!」
「大丈夫か、アゼル」
「ぷは、舐めんなよ無敵だぜ俺はッ!」
うん、百戦錬磨だな。
資料に顔を押し当てたままもごもごなにか呟いていたアゼルだが、すぐに復活して近くの棚の上に資料を置き、すっくと立ち上がった。
しかし凛々しいのも束の間。
ボフッとベッドの足元のあたりに倒れ込んで撃沈する。
どうしたことか、なかなかダメージが大きいようだ。もちろん理由は不明である。
「アゼル?」
「…………」
いつも隣同士で眠るのにふせったままの彼を呼ぶが、返事はなかった。
アゼルはベッドの頭側に待機している俺を倒れ込んだまま首だけを向けて捉えると、じとっと見つめてくる。
(んん……?)
なにかを訴えているようだが、よくわからないので手を振ってみた。
赤くなって顔をそらされる。
更に見つめるともう一度こっちを向いたので、今度は笑いかけてみた。悶え始めた。かわいいな。
言葉のないやりとりが楽しくて、クスクスと笑ってしまう。
そうするとむっとしたアゼルが復活し四つん這いで這い寄ると、ふてくされながら裸足の俺の足を掴んだ。
おっと、捕まった。
これは降参するしかないな。ふふふ。
「あはは、お手上げだ。捕まってしまったからには、身柄を差し出すしかないぞ。困った困った」
「うぅぅ……っ俺の純情を弄びやがって……ッ! そういうことするならな、食うぞッ!」
「んっ!? こら待て、っ、ふっこしょばいっ、っ!」
お手上げだと両手をあげて降参したのにも関わらず、足を掴んだアゼルがそのまま俺の足先をペロリと舐める。
不意にそんなことをされて俺が驚いた隙に、アゼルは足の親指をまるごと口に含んで、付け根をモグモグと甘噛みし始めてしまった。
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