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十皿目 ワンとニャー
03
しおりを挟むパチパチと瞬きして思案する。
リューオが紅茶に口をつけた。
俺の唯一のお相手──アゼルは変態スキルを持っているので一般より変態さんだが、それを引いてもそのくらいは一般的な気がする。
ちゃんと変態プレイだ、という自覚があることをねだる時は、バツが悪そうにそーっとさりげなくねだってくるのだ。
しかし一度すると基本的に枯れ果てるまで搾られるし、興奮しすぎると我慢ならずに噛み付いてくる。血を吸うからな。
あちこち縛るし言葉責めもするぞ。焦らされもする。それをするのはもう初めてした時からで、本人も変態プレイだと思っていない。
故に、リューオの言うことは問題ないと思う。
理論と経験に基づいた結論である。
(ああでも、この間公開自慰をさせられたんだが……あれは恥ずかしかったな)
あれをしたらユリスは怒ってしまうと思う。俺は構わないが。
それから尿道に……、いや、これはやめておこう。うん。
高速で思考を巡らせて結論を出した俺は、リューオに倣って紅茶を飲み、コクリと一つ頷いた。
「魔界だと、初めてでも噛むのは普通だろう。縛るのは聞いてほしいな。全身細めの紐でくくられた時は、若干びっくりした。それから、もう無理だと思っても意外とイケるものだ。この程度なら、怒られないと思うぞ?」
「ま、マジでかッ?」
自分が受身の当事者なので感じたことを参考になるように告げる。
リューオの目がギョッ! と丸くなった。マジでだ。
「じゃあむしろ控えめすぎてつまんねェから嫌がってんのかッ? 魔族ってンな感じなのかよ……ッ!?」
「過激な種族だからな。少しぐらい激しいのがいいんじゃないか?」
「嘘だろ魔族ッ! ド変態じゃねェかまじかァァァ……ッ! そのぐらいやんねぇとだめだったのか……ッ!」
事実を知ったリューオが感心してズズイと身を乗り出してくるのを前に、肯定を返しながら親指を立てる。
「うっし、参考までにテメェのイチオシを教えてくれ」
「イチオシ……はわからないが、最近したのはあれだ。声を出したらいけない制限をつけて、破るごとにアゼルが魔力で作った丸い塊を、俺の中に入れるというヤツだったかな……アゼル案だ。とても楽しそうだった」
「なぁ、やっぱりド変態じゃねェか?」
「そうか? 制限をかけるぐらい、その後させられたことより全然普通だ」
「ハッ? なんだよ気になるわ、教えろよ」
「う……ちょっと、口にできない」
「あぁんッ? ド変態の口にできないことってなんだよ余計気になるわ。教えろよシャルッ!」
「無理だ、許してくれ」
食い気味に詰め寄るリューオに、口の前でバツを作ってノーコメントを貫いた。
あれは確かに変態気味だな。ユリスにしたら怒りを通り越して絶縁されると思う。
──そうしてリューオのいろんな質問に答えると、リューオはユリスを満足させるプレイを練り直して、万全の態勢で誘いをかけてみると意気込んだ。
俺は健闘を祈ると再び親指を突き出して応援する。
大丈夫だ。ユリスは俺のところにまだ相談にも愚痴にも来ていないから、特にセックス自体が嫌なわけではないはずだ。
二人がうまくいくと俺も嬉しい。
内心でエールを贈った、朗らかな午後だった。
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