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3・茶道 探偵部(仮)と謎のキジネコ

3-2・拙にはネコの言葉がわかる

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 おれたちの学校は、リアルに存在している学校なので、クエストとか魔物退治とか薬草採取でレベル上がるわけではない。

 文部科学省が決めた学習要領のレベルが達成されていると、レベル1が2、じゃなくて、1年生が2年生になるだけである。

 もっとも、それは単なる文部科学省の判断だから、実際にはレベル99という、超高校級のランクまであるらしい。

 ちなみに、おれとミナセはレベル3の中ごろ、つまり行きたい大学があったら、そこと相談してみてもいいよ、っていう、高校生としては上の下レベルだろうか。

 しかしどうも、部長のミロクウはレベル6らしいので、この部室の学習レベルとしてはたいしたことはないのである。

 というのが余談で。

 前にも言った通り、学業とは別に各個人には「活動実績」というのがある。

 平たく言えば、徳を積む、ということですね。

 いいことをすれば善行ポイントがたまって、天国に行きやすくなる、というより、先生にほめられたり、部活の活動費が増えたりする。

 今回、ワタルが携帯端末で見せてくれたのは、生徒会の、なんだろ、特務班長みたいなのが、会長の司令で送られてたものである。

「ネコが迷子になりました、か」と、おれは言った。

 家飼いのネコが外に出てしまうのによくあるケースは、飼い主が家のドアを不用心に開けてしまうことである。

 そしてそれは、外で変な音がしていて、飼い主が気になったときである。

 玄関前にさくがあったとしても、ネコは平気で乗り越えて外に出るから、本気でさく作るなら、ドアの一番上ぐらいまでの高さのものでないと無理である。

「これは、どう考えてもミドリが、でっかい雷を落としたせいだろ!」と、おれは強い感情を持ったけれど、ミドリたちは聞いていない。

 わー、何これー、ころころしてる。こっちはぷるぷる、あっ、ぺたぺた、と、捜し物のネコの、複数の写真を、異世界人の3人は見ているだけだった。

 おれは、最初に添付された一枚の画像を見た。灰色の中にやや黒に近い灰色の毛が、縞模倣の感じできれいにそろっている。

 瞳の色は緑色が混じった灰色で、生後3年は経っていないな。

 ひょっとしたら、落雷のような自然現象を体験するのははじめてのことだったかもしれない。

「本当に、この迷いネコ、見つけられるの?」と、おれはワタルに聞いた。

 ネコの飼い主は、今晩中に見つからないともっと大規模な捜査を依頼することになり、その割に成果があがらない可能性が高い。

「大丈夫だ。拙にはネコの言葉がわかるし、知り合いもたくさんいる」

 ネコ探偵部(じゃないけど)、初の調査依頼ということになる。
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