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第18話
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ヤヤが酒を持ってきた。
「随分熱心ですね、大きな声をあげて。そんなに難しいのですか? 猫1匹捜すのが」
「ただの猫ではない。天下人の〝猫〟だ」、長政は煩そうに云った。
「城内をよくよく捜したんですか? 猫は縄張りを持ってますから、そんなに遠くには行かないはずですよ。もしかしたら、誰かが隠してるのかもしれませんよ。例えば、太閤殿下とか」
「なぜ太閤殿下が、ご自分の猫を隠さねばならぬのだ?」
長政は、妻の幼稚な考えに苦笑した。
「太閤殿下はお好きではありませんか、むかしから人を驚かすのが。今回も猫を隠して、近習たちが右往左往するのを楽しんでいるのでないですか? 太閤殿下の部屋を捜してみなさい、案外、ヒョッコリ出てきますよ」
「そんなバカな」と、長政は鼻で笑った。
次の瞬間、囲炉裏の中で薪がパチリとはじけた。
火の粉がぱっと飛び散り、すっと消えていった。
「あっ!」と思い当たった。治長に向き直る、「修理殿、先ほど城内をくまなく捜したと申されたな」
「くどい、武士に二言はござらん」
「本当でござるか? 隅々まで? 淀様の部屋まで捜されたか?」
治長は、うっと唸ったまま、しばらく動かなかった。
「淀様のお部屋はいかに?」
「し、調べる理由がありません」
「なぜでござる?」
「そ、それは奥方様ですし……、捨丸君の母君ですので……、いや、そんな、ありえない」
治長は荒々しく首を振った。
ヤヤは、何の事かと興味津々で2人の男を交互に眺めていた。
「随分熱心ですね、大きな声をあげて。そんなに難しいのですか? 猫1匹捜すのが」
「ただの猫ではない。天下人の〝猫〟だ」、長政は煩そうに云った。
「城内をよくよく捜したんですか? 猫は縄張りを持ってますから、そんなに遠くには行かないはずですよ。もしかしたら、誰かが隠してるのかもしれませんよ。例えば、太閤殿下とか」
「なぜ太閤殿下が、ご自分の猫を隠さねばならぬのだ?」
長政は、妻の幼稚な考えに苦笑した。
「太閤殿下はお好きではありませんか、むかしから人を驚かすのが。今回も猫を隠して、近習たちが右往左往するのを楽しんでいるのでないですか? 太閤殿下の部屋を捜してみなさい、案外、ヒョッコリ出てきますよ」
「そんなバカな」と、長政は鼻で笑った。
次の瞬間、囲炉裏の中で薪がパチリとはじけた。
火の粉がぱっと飛び散り、すっと消えていった。
「あっ!」と思い当たった。治長に向き直る、「修理殿、先ほど城内をくまなく捜したと申されたな」
「くどい、武士に二言はござらん」
「本当でござるか? 隅々まで? 淀様の部屋まで捜されたか?」
治長は、うっと唸ったまま、しばらく動かなかった。
「淀様のお部屋はいかに?」
「し、調べる理由がありません」
「なぜでござる?」
「そ、それは奥方様ですし……、捨丸君の母君ですので……、いや、そんな、ありえない」
治長は荒々しく首を振った。
ヤヤは、何の事かと興味津々で2人の男を交互に眺めていた。
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