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第7話
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「ご心配はいりませぬ、弾正様」
治長は笑みを零した。
「心配ないとは何のことで?」
「猫の件です」
長政は、わざと首を傾げる。
「太閤殿下の猫をお捜しなのでしょう? 〝トラ〟ですよ」
「何のことやら」
と誤魔化した。
「弾正、隠し立てする必要はない。猫なら心配はいらぬ」
大蔵卿局が、はっきりと言った。
「ですから、猫など拙者は………………」
「猫なら、我らが預かっておる」
長政は、我が耳を疑った。
「いま、何と?」
「だから、猫は我らが預かっておる」
「ええぇぇ!」、長政は素っ頓狂な声をあげた、仰け反りすぎて、後ろに倒れそうになった、「猫を預かっていらっしゃるのですか? では、猫の件はよろしいので?」
「左様、猫捜しは無用じゃ」
長政は、肩の荷が下りたように溜息を吐いた。
何という幸運だろう。
厄介事がひとつ減った。
これは久々にツイている。
一件落着である。
早速屋敷に戻って、猫の狩り出しの準備をしている家臣たちに中止と伝えねば、と腰を上げた。
「まちゃれ、話はこれからじゃ」
長政は、訝しがりながら席に着いた。
「猫は良い。そなたには、猫よりも大切なものを捜してもらいたい」
また捜しものだ。
これも〝年の功〟であろうか?
「厄介事は、次から次へとやってくるものだ」
と、呟いた。
「何か?」
「いや、それで捜しものとは?」
大蔵卿局は淀を見る。
淀は殆ど放心状態だ ―― 三尺先をぼんやりと眺めていた。
大蔵卿局は、咳払いをして先を続けた。
「それは、天下の宝です」
「天下の宝ですと?」、長政は驚く、一方で面倒なことになってきたと思った、「して、その宝とは?」
「その宝にもしものことがあれば、天下は大乱となるでしょう」
「それほどすごい宝とは、いったい何でございますか?」
重ねて問いただすが、大蔵卿局は肝心なところを濁す。
「大蔵卿様」
と、声を荒げる。
と、治長が代わりに口を開いた。
「拙者がお話いたします。その宝とは、太閤殿下が御子、捨君にございます」
長政は、えっと両目を引ん剥いた。
治長は笑みを零した。
「心配ないとは何のことで?」
「猫の件です」
長政は、わざと首を傾げる。
「太閤殿下の猫をお捜しなのでしょう? 〝トラ〟ですよ」
「何のことやら」
と誤魔化した。
「弾正、隠し立てする必要はない。猫なら心配はいらぬ」
大蔵卿局が、はっきりと言った。
「ですから、猫など拙者は………………」
「猫なら、我らが預かっておる」
長政は、我が耳を疑った。
「いま、何と?」
「だから、猫は我らが預かっておる」
「ええぇぇ!」、長政は素っ頓狂な声をあげた、仰け反りすぎて、後ろに倒れそうになった、「猫を預かっていらっしゃるのですか? では、猫の件はよろしいので?」
「左様、猫捜しは無用じゃ」
長政は、肩の荷が下りたように溜息を吐いた。
何という幸運だろう。
厄介事がひとつ減った。
これは久々にツイている。
一件落着である。
早速屋敷に戻って、猫の狩り出しの準備をしている家臣たちに中止と伝えねば、と腰を上げた。
「まちゃれ、話はこれからじゃ」
長政は、訝しがりながら席に着いた。
「猫は良い。そなたには、猫よりも大切なものを捜してもらいたい」
また捜しものだ。
これも〝年の功〟であろうか?
「厄介事は、次から次へとやってくるものだ」
と、呟いた。
「何か?」
「いや、それで捜しものとは?」
大蔵卿局は淀を見る。
淀は殆ど放心状態だ ―― 三尺先をぼんやりと眺めていた。
大蔵卿局は、咳払いをして先を続けた。
「それは、天下の宝です」
「天下の宝ですと?」、長政は驚く、一方で面倒なことになってきたと思った、「して、その宝とは?」
「その宝にもしものことがあれば、天下は大乱となるでしょう」
「それほどすごい宝とは、いったい何でございますか?」
重ねて問いただすが、大蔵卿局は肝心なところを濁す。
「大蔵卿様」
と、声を荒げる。
と、治長が代わりに口を開いた。
「拙者がお話いたします。その宝とは、太閤殿下が御子、捨君にございます」
長政は、えっと両目を引ん剥いた。
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