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ゲーセン荒らしガール
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え、キスだと? あいつの口から「冗談よ」と言うことを予想しているが、しばらくたっても或斗は一向にその態度を崩さない。
ここは自分が折れるべきか? いやいや、普段からやられっぱなしなんだ。ここは自分がマジでやってやるぞというところを見せてやる。
「いいのか? 後悔はなしだぞ」
「後悔? むしろして欲しいのはセーム君じゃないかな?」
互いの顔が近づく。
この流れ、本当に或斗とキスしてしまうのか!?
自分は男だけど、ファーストキスがいくら可愛いとはいえ同性でいいのか!?
「スト――――――ップ!!」
ぐいっ
意外や意外、聖が両手で自分と或斗の距離を離すように押した。
「アルちゃんとセーム君をキスさせたくないもん!」
「あらあら、まさかの三角関係かしら?」
「誰がなってたまるか、キスするってのは冗談だよ」
「セーム君は冗談でアルちゃんの唇を頂こうとしたの! 最低な野郎だよ!」
聖が自分の服の襟首を掴んできた。
「おい、落ち着け聖」
「落ち着けと言われて素直に落ち着ける人はいないもん!」
「どうすればいいんだよこれ……」
「あらかじめ言ったけど、デートは私だけとするわけじゃないわ。じゃあ聖ちゃんをよろしくね♪」
そう言って或斗は目の前の自分の災難を見て見ぬ振りしてスタスタと立ち去った。
「ちょっと待て! 聖にこんな状態でデートしろってのか!」
「デートはしなさいね。これはセーム君のためを思って皆協力しているのよ。ちなみ監視の目はあるから、デートしてなきゃばれるわよ」
こうして、機嫌最悪な状態の聖とともに次のデートスポットへと向かった。
市内のバスを利用して駅前まで着いた。バスに座るシートは互いに別々、しばらく両者の間に無言の状態が続いた。
この重々しい空気耐えられねえ、早く次の奴来てくんないかな……。
るん♪ るん♪ るん♪
あれ、聖の機嫌がいつの間にか良くなっている。一体どういうことだ?
「兄メイト~~♪」
付近に置いてある看板に、アニメキャラのイラストと共に兄メイトの文字があった。そういえば指定されたスポットがAKT唯一のおたくの聖地だった。だから聖が喜んでいる訳か。兄メイトの入っているおんぼろビルの中へと入った。
一階はUFOキャッチャーのコーナーのようだ。このてのやつって一回もとれた経験がないし、やるだけ無駄だよな。昔は箱の隙間にアームの爪をひっかける戦法を見たことあるけど、それを想定済みなのか、箱系の景品は、セロテープで箱の隙間を狭めているのだ。
「あっ! あれ欲しい! よ~し、目標は1000円でフィギィア一個!」
聖はやる気満々のようだった。
「どうせとれないようにアームの力を弱めにしているし、とれないんじゃないかな?」
「セーム君、この台は何回かプレイしているけど、アームのそこそこ強くなるタイミングが数回に一回あるの。つまり100円だけではとれない!」
聖がいつの間にかインベーダーキャップと出っ歯のアクセサリーをつけている。こいつなりのコスプレだろうが、一体何を意識しているんだ。
チャリン
聖は迷いなく五百円玉硬貨を投入した。
「もしかしたらこれ、引っかけるようにすれば……」
なにやら独り言を言っている。もう自分はおかまいなしのようだな。聖が狙ったのはフィギィアの入ったパッケージだ。平たい厚紙にフィギィアとプラスチックのカバーをしたものである。聖は厚紙にアームをひっかけてすくう作戦のようだ。
「セーム君、両手を激しくこすり合わせて」
「え? なんで?」
「激しい静電気で、良い感じにエラーを起こして商品をゲットできるようにしたいの」
「できるか! つうかお前自分より地頭良いんだからそれぐらいできないって分かるだろ!」
「えぇ~、私への愛のパワーでこれぐらいの奇跡を起こしてよ」
「お前にこれっぽっちも愛なんてあるか!」
ゴトリ
何かが落ちる音がした。どうやら景品が一発でとれたようだ。
「こんなことなら百円玉にしておけばよかったな~」
残ったプレイ回数は消化戦となり聖は適当にプレイして費やした。
「はい、セーム君荷物持ちね」
特に許可無く勝手に荷物持ち認定された。
「お次はと……あれいけそうかな」
聖が次に狙いをつけたのはティッシュカバーの景品のUFOキャッチャーだ。ビニールで平らに包装されており、ギリギリいけそうかなとは思うが、アームの隙間からすっぽ抜けるのが目に見えている。
「これは難しいんじゃないかな?」
「セーム君、君の目は節穴かな? 私が狙うのはこれだよ」
聖がアームを落とした先は展示品のティッシュカバーの方だった。ティッシュに装着された状態なので、もちろんティッシュの穴にひっかけて一発で難なくとれた。幾分かずるい気もするが、このやり方はとても賢いと思った。
「すげええ!! 天才か聖!!」
「でしょでしょ♪」
そしてまたも外道なプレイを重ねていく。
今度のUFOキャッチャーはアームを制限時間内であれば自由に動かせるタイプのものだ。
「うりゃ!」
ぱたん ぱたん ぼとり
アームを展示品の並んでいるフィギィア本体に直接ぶつけ、ドミノ倒しのように倒れていき、一個だけ穴へと落ちたのだ。
「見たか! これがアデルちゃん直々の裏技だ――――――っ!!」
さらにさらに、聖はとんでもない発見をした。
「ん? これってもしや……」
横長の穴がいくつか開いたプラスチックのパネルが垂直に置かれている台であった。棒を横、上と動かし上手く横穴に突っ込めば商品を手に入れられる台だ。
「私のカンがこれはとんでもない台と言っているよ!」
「え? ぱっと見正攻法でしかいけなくないか?」
聖がプレイすると、上手く横穴に棒をつっこんだ。
ぽとり
見事に景品を落としてゲットした。
「ここまで来ると流石だな」
ガキ
何かが引っかかる音がした。横長穴に棒が途中ではまって抜けなくなったのだ。
「面倒だが、店員さん呼ぶか」
「待って、これが狙いなんだよ」
そういって聖が更に100円を投入した。そのままプレイし棒を横に動かす。
すー
プラスチックのパネルが横に水平移動した。この台のプラスチックパネル自体がふすまのようになっており横に移動できるようだ。本来なら鍵がついており横に移動できないはずなのだが、どうやら鍵がかかっていない状態だったようだ。
「なに!?」
景品を遮るプラスチックパネルが無い状態となり、難易度がものすごく低くなった。百円玉をいれて、景品を棒でついたら景品が出るだけのゲームとなったのだ。
ぽとり ぽとり ぽとり
「取り放題~~♪」
幸い前の店で大きめのビニール袋を貰っていたので、景品の持ち運びはできるが、やばくないかこの状態? 一階には店員さんはいないようだが、そろそろ引き時を見極めた方が……。
「セーム君行くよ! エレベーター!」
「えっ?」
階段から店員さんらしい人が降りて来たようだ。それに気付き自分も聖についていく。エレベーターは幸い見つかりやすい場所にあった。
ぽーん
エレベーターの扉が開き、自分達はすぐに乗って扉を閉めた。行き先は六階である。
がくん がくん
「ここのエレベーターはいつ壊れるか分からないような代物なんだよね。でも兄メイトへ行く方法はこれしかないの」
このビルにある兄メイトは六階にあり、階段で行こうにも4階、5階に店が入っていないので、階段が途中で閉鎖されているのだ。ちなみに二階と三階にはリサイクルショップが入っているとのことだ。
がこん
エレベーターの動きが止まった。よし、扉が開くかと思ったが開かない。そして扉の上にあるランプがついていない。
「ん、どうなってんだ?」
「ねえ、これってもしかして閉じ込められたんじゃ?」
「……」
しばらく二人の間に沈黙が続く。しかし状況は一向に変化しない。ようやく二人は共通の結論にたどり着いた。
「閉じ込められた――――――っ!!」
聖への天罰に自分も付き合うことになったようだ。
ここは自分が折れるべきか? いやいや、普段からやられっぱなしなんだ。ここは自分がマジでやってやるぞというところを見せてやる。
「いいのか? 後悔はなしだぞ」
「後悔? むしろして欲しいのはセーム君じゃないかな?」
互いの顔が近づく。
この流れ、本当に或斗とキスしてしまうのか!?
自分は男だけど、ファーストキスがいくら可愛いとはいえ同性でいいのか!?
「スト――――――ップ!!」
ぐいっ
意外や意外、聖が両手で自分と或斗の距離を離すように押した。
「アルちゃんとセーム君をキスさせたくないもん!」
「あらあら、まさかの三角関係かしら?」
「誰がなってたまるか、キスするってのは冗談だよ」
「セーム君は冗談でアルちゃんの唇を頂こうとしたの! 最低な野郎だよ!」
聖が自分の服の襟首を掴んできた。
「おい、落ち着け聖」
「落ち着けと言われて素直に落ち着ける人はいないもん!」
「どうすればいいんだよこれ……」
「あらかじめ言ったけど、デートは私だけとするわけじゃないわ。じゃあ聖ちゃんをよろしくね♪」
そう言って或斗は目の前の自分の災難を見て見ぬ振りしてスタスタと立ち去った。
「ちょっと待て! 聖にこんな状態でデートしろってのか!」
「デートはしなさいね。これはセーム君のためを思って皆協力しているのよ。ちなみ監視の目はあるから、デートしてなきゃばれるわよ」
こうして、機嫌最悪な状態の聖とともに次のデートスポットへと向かった。
市内のバスを利用して駅前まで着いた。バスに座るシートは互いに別々、しばらく両者の間に無言の状態が続いた。
この重々しい空気耐えられねえ、早く次の奴来てくんないかな……。
るん♪ るん♪ るん♪
あれ、聖の機嫌がいつの間にか良くなっている。一体どういうことだ?
「兄メイト~~♪」
付近に置いてある看板に、アニメキャラのイラストと共に兄メイトの文字があった。そういえば指定されたスポットがAKT唯一のおたくの聖地だった。だから聖が喜んでいる訳か。兄メイトの入っているおんぼろビルの中へと入った。
一階はUFOキャッチャーのコーナーのようだ。このてのやつって一回もとれた経験がないし、やるだけ無駄だよな。昔は箱の隙間にアームの爪をひっかける戦法を見たことあるけど、それを想定済みなのか、箱系の景品は、セロテープで箱の隙間を狭めているのだ。
「あっ! あれ欲しい! よ~し、目標は1000円でフィギィア一個!」
聖はやる気満々のようだった。
「どうせとれないようにアームの力を弱めにしているし、とれないんじゃないかな?」
「セーム君、この台は何回かプレイしているけど、アームのそこそこ強くなるタイミングが数回に一回あるの。つまり100円だけではとれない!」
聖がいつの間にかインベーダーキャップと出っ歯のアクセサリーをつけている。こいつなりのコスプレだろうが、一体何を意識しているんだ。
チャリン
聖は迷いなく五百円玉硬貨を投入した。
「もしかしたらこれ、引っかけるようにすれば……」
なにやら独り言を言っている。もう自分はおかまいなしのようだな。聖が狙ったのはフィギィアの入ったパッケージだ。平たい厚紙にフィギィアとプラスチックのカバーをしたものである。聖は厚紙にアームをひっかけてすくう作戦のようだ。
「セーム君、両手を激しくこすり合わせて」
「え? なんで?」
「激しい静電気で、良い感じにエラーを起こして商品をゲットできるようにしたいの」
「できるか! つうかお前自分より地頭良いんだからそれぐらいできないって分かるだろ!」
「えぇ~、私への愛のパワーでこれぐらいの奇跡を起こしてよ」
「お前にこれっぽっちも愛なんてあるか!」
ゴトリ
何かが落ちる音がした。どうやら景品が一発でとれたようだ。
「こんなことなら百円玉にしておけばよかったな~」
残ったプレイ回数は消化戦となり聖は適当にプレイして費やした。
「はい、セーム君荷物持ちね」
特に許可無く勝手に荷物持ち認定された。
「お次はと……あれいけそうかな」
聖が次に狙いをつけたのはティッシュカバーの景品のUFOキャッチャーだ。ビニールで平らに包装されており、ギリギリいけそうかなとは思うが、アームの隙間からすっぽ抜けるのが目に見えている。
「これは難しいんじゃないかな?」
「セーム君、君の目は節穴かな? 私が狙うのはこれだよ」
聖がアームを落とした先は展示品のティッシュカバーの方だった。ティッシュに装着された状態なので、もちろんティッシュの穴にひっかけて一発で難なくとれた。幾分かずるい気もするが、このやり方はとても賢いと思った。
「すげええ!! 天才か聖!!」
「でしょでしょ♪」
そしてまたも外道なプレイを重ねていく。
今度のUFOキャッチャーはアームを制限時間内であれば自由に動かせるタイプのものだ。
「うりゃ!」
ぱたん ぱたん ぼとり
アームを展示品の並んでいるフィギィア本体に直接ぶつけ、ドミノ倒しのように倒れていき、一個だけ穴へと落ちたのだ。
「見たか! これがアデルちゃん直々の裏技だ――――――っ!!」
さらにさらに、聖はとんでもない発見をした。
「ん? これってもしや……」
横長の穴がいくつか開いたプラスチックのパネルが垂直に置かれている台であった。棒を横、上と動かし上手く横穴に突っ込めば商品を手に入れられる台だ。
「私のカンがこれはとんでもない台と言っているよ!」
「え? ぱっと見正攻法でしかいけなくないか?」
聖がプレイすると、上手く横穴に棒をつっこんだ。
ぽとり
見事に景品を落としてゲットした。
「ここまで来ると流石だな」
ガキ
何かが引っかかる音がした。横長穴に棒が途中ではまって抜けなくなったのだ。
「面倒だが、店員さん呼ぶか」
「待って、これが狙いなんだよ」
そういって聖が更に100円を投入した。そのままプレイし棒を横に動かす。
すー
プラスチックのパネルが横に水平移動した。この台のプラスチックパネル自体がふすまのようになっており横に移動できるようだ。本来なら鍵がついており横に移動できないはずなのだが、どうやら鍵がかかっていない状態だったようだ。
「なに!?」
景品を遮るプラスチックパネルが無い状態となり、難易度がものすごく低くなった。百円玉をいれて、景品を棒でついたら景品が出るだけのゲームとなったのだ。
ぽとり ぽとり ぽとり
「取り放題~~♪」
幸い前の店で大きめのビニール袋を貰っていたので、景品の持ち運びはできるが、やばくないかこの状態? 一階には店員さんはいないようだが、そろそろ引き時を見極めた方が……。
「セーム君行くよ! エレベーター!」
「えっ?」
階段から店員さんらしい人が降りて来たようだ。それに気付き自分も聖についていく。エレベーターは幸い見つかりやすい場所にあった。
ぽーん
エレベーターの扉が開き、自分達はすぐに乗って扉を閉めた。行き先は六階である。
がくん がくん
「ここのエレベーターはいつ壊れるか分からないような代物なんだよね。でも兄メイトへ行く方法はこれしかないの」
このビルにある兄メイトは六階にあり、階段で行こうにも4階、5階に店が入っていないので、階段が途中で閉鎖されているのだ。ちなみに二階と三階にはリサイクルショップが入っているとのことだ。
がこん
エレベーターの動きが止まった。よし、扉が開くかと思ったが開かない。そして扉の上にあるランプがついていない。
「ん、どうなってんだ?」
「ねえ、これってもしかして閉じ込められたんじゃ?」
「……」
しばらく二人の間に沈黙が続く。しかし状況は一向に変化しない。ようやく二人は共通の結論にたどり着いた。
「閉じ込められた――――――っ!!」
聖への天罰に自分も付き合うことになったようだ。
応援ありがとうございます!
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