カオスシンガース

あさきりゆうた

文字の大きさ
4 / 34

カツアゲ注意報!!

しおりを挟む
 ただいまカツアゲなるものをされている最中である。どうしてこうなったかは10分前の事である。

「はじめまして」

 食堂で一人で飯を食っている自分に対し、自分と同じ学生らしき人達三人程がやってきた。

「私達、秋田大学の学生さんの取材をやっているんですよ。食事の後でよろしいですのでご協力願えますか?」

「ああ、いいですよ。ご飯さっさと食うので少々お待ち下さい」

「お気遣いありがとうございます」

がつ がつ

 自分は極力早めに飯を終わらせ、外まで出られるようにした。



「金足りなくてさ~、善意で貸してくんないかな~?」

 マジで自分をお人好しのアホと思った。秋田大学というワードが出てうちの学生の新聞部だと思った。しかし、よくよく相手の顔を見ればAKT大学の学生の感じがしない。もう少し低脳そうなイメージ。名前を書けば入れそうな私立大学にいそうな奴のイメージがある。多分、自分が小さいからかもれると思ってターゲットにしたのだろう。

「えぇと、財布にはこれだけしかないですが……」

 財布には3万円と千円札が何枚か入っていた。それを相手に全て渡した。ここはおとなしくするのが正解と思った。なぜなら大学の食堂内には監視カメラがついているのだ。もしここで金を渡しても警察に被害届を出せば、自ずと解決してくれるだろう。

「よし、行こうか」

 カツアゲ連中はその場を立ち去ろうとした。

「おめえら、カツアゲしてんのか~?」

「あ゛ぁ゛?」

 カツアゲ男達の前に一人の男、いや、ボーイッシュな女が立ちはだかった。茶髪で、三白眼で、そばかすで、ショートカットで……つうか完全にスケバンだ。

「うっせえなブス! ひっこんでろよ!」

ゴン

 周りに鈍い音が響き、カツアゲメンバーの一人に女の子の拳がめりこんでいる。そして男は膝から落ちるように倒れた。完全に意識が飛んでいて、顔からは鼻血を出している。

「誰がブスだごるぁ!!」

 女の子はヤクザ顔負けの大きな怒声を浴びせ、カツアゲメンバー達は少しびびっているようだ。このシチュエーションはもしかして、自分は屈強な女の子に助けて貰っているのか? 非常にありがたい事であるが、怪我人出ているし大丈夫かこれ?
 さて、ちょっと遠目に人がこちらを見ている様子がある。女の子の怒声でこの騒ぎに気付いたのだろう。被害者の立場で貼るが、この場は早く逃げた方がいいかと思う。あの女の子は正直怖いが自分の恩人でもある。逃げるようにアドバイスする事を決めた。

「ちょっと、監視カメラにあいつらの顔ばっちり写っているし、逃げても警察に言えば金は戻ってくる。それに騒ぎに気付いた人もいるからさ」

「馬鹿野郎! お前それでも男か! プライドっていうのものはねえのか! ほれ! 相手はビビっているからお前でも倒せる! いけ!」

ドン

 自分の背中が勢いよく押されて、カツアゲメンバー達の前へと足が進んだ。

「え! ちょっと! そいつは無理だ!」

「るせぇ! お前が死んだらあたしが仇をとってやらぁ!」

 穏便にこのカツアゲ事件を解決しようと思ったのになんでこういう事になるんだよ!
 カツアゲメンバーもなりふり構わず、残りの2人で自分に迫ってきた。

「男の勝負はタイマンだろ、片方はすっこんでろ」

ゴン

 またも鈍い音が響く。ヤンキー娘の右のキックが男の頭部を刈り取るようにとらえた。これに、気をとられ、気付いた時にはもう一人の男との距離が近くなっていた。拳が俺の顔面に飛んでくる。

「うわっ!」

どす

 自分は無我夢中で膝の力を抜いて上半身全体を下げて、頭から相手の股間を突っ込んだ。結果的にそれは金的攻撃になったようだ。そして相手のバランスが後方に崩れ、結果的に自分がマウントをとる体勢となった。

「おっ、金的に頭突きを食らわし、総合格闘技のタックルくらわすとはやるじゃねえか」

「おい! 何をやっているんだお前ら!」

 その声のした方を見て絶望した。警察の方々だった。近場には倒れている男達が複数人、自分が一人の男に対しマウントポジションをとっている。この状況、完全に自分がやったと誤解されるよな……。



 近場の交番まで事情聴取でしょっぴかれた。とりあえず、警察にはありのままに起こった事を話した。自分は釈放され、お金も戻ってきた。一方、カツアゲメンバーと女の子はそれぞれ恐喝罪やら傷害罪やらで警察署の方へと向かったみたいだ。

「君も君で怪しい人についていかないように。我々の仕事が増えるんだから」

 被害者に対してこの態度かよ。警察はマジでクソだな。

「あの、女の子の方はどうなるんですか?」

「聞けば彼女から手をだしたそうだし、暴行・傷害罪あたりには普通なるだろう」

「自分を助けた人だし、それで無罪にはならないんですか?」

「駄目だ。恐らくあのカツアゲメンバーから被害届が出されるだろう。そうなれば我々のお仕事となる」

「そうですか……」

 警察とは法律通りに動くしかない。ゆえに納得いかない対応も多い。仕方のないものか……。

「ただ、彼女の家が少し特殊だからね……」

「ん? 特殊というと?」

「ここだけの話にするなら話すよ」

 好奇心は危険な者である。しかし自分の中で好奇心が勝ってしまった。

「彼女は左京建設の取締役のお孫さんでね。左京建設の取締役が元暴力団、警察の方にも圧力を効かせているから、彼女に喧嘩を売るならとんでもない事になるだろうね。左京建設は生コンのプラントも持っているからドラム缶に詰めるコンクリートぐらいはすぐに用意できるだろう」

「え?」

 そんなとんでもない人が自分の恩人になっちまったのか!?

「まあ君も大変だろうが頑張りたまえ。証拠の残る被害を受けたら警察も動けるからね」

「はぁ……」

 こうして今日のカツアゲ騒動は終了した。もう疲れた……。



「よう! 元気してるか!」

 食堂でぼっち飯を食べている自分に話しかけたのは昨日の娘だった。
「昨日はありがとうございます。自分はあの後すぐ解放されましたが、あなたは大変だったそうで」

「いや~昨日はまいったまいった~! 危うく前科人になりそうだったが、じいちゃんにまた助けて貰ったぜ~!」

 昨日の話から察するに、彼女のおじいちゃんにあたる元ヤクザさんが圧力をかけたんだろう。恐るべし。

「そういやあ自己紹介してなかったな! あたしの名前は左京恋奈さきょうれんな! 土木科の一年だ!」

 彼女は握手をしようと左手を出してきた。

「ああ、同じ工学部の一年だったか。自分は塩川聖夢。化学科の一年だ」

 数日前だったら名字だけで名乗っていただろう。しかし、或斗と出会ってからもはやそんな恥じらいはどっかへ行ってしまった。 
 彼女に応えるように自分も左手を出した。

ぐっきん ぐっきん

「ふぎゃあああ!!」

 自分の左手に強力な圧力がかかった。自分の叫び声を聞いて、彼女は力を緩めた。

「なんだ、男にしては握力足りねえな。」

「いや、君の力が非常に強すぎる」

「そうだな! あたし土方屋の娘だから腕力もめっちゃあるんだよ!」

「あらセームくん、珍しく女の子と食べているのね。こういう女の子が好みなの?」

 或斗が自分達の前に現れた。

「或斗か。この人は昨日知り合った人だ」

「ふぅむ、カツアゲとぱしりの関係にでもなったの?」

「……まぁ近からず遠からずな事はあったが……」

「私もご一緒させて貰うわね」

 しばしの間、互いの自己紹介、そして昨日あった出来事について話した。昨日の話には流石の或斗も驚いていた。

「恋奈ちゃん、どこかサークルに入っているかしら?」

 或斗が左京に質問した。

「ん? どこも入ってないぞ。ぴんとくるとこがなくてよ」

「私の合唱団に入らない?」

 おい或斗、こいつまで誘うのか。

「合唱? 歌は別に嫌いではないけど、真面目そうだしどうもな~」

「大丈夫、嫌だったら辞めて貰っても良いわよ。でも恋奈ちゃんとの会話で自分なりに恋奈ちゃんの歌人うたびととしての良さを把握したつもりよ」

「へぇ、聞かせて貰おうか」

「まず、声質は女性の低音であるアルト、声質は悪くない。そして声量もなかなかありそう。そして、根性のあるタイプ。さらには、あなたのおじいさまの力もなかなかのもの。合唱人としては是非とも欲しい人材だわ」

 不安になり、自分がぼそぼそと耳元で話しかける。

「おい、大丈夫かよ或斗。あいつはヤーさん絡みの人間だぜ」

「だからこそよ。色んな組織とパイプを作っておく。これもサークルを大きくするのに大事な事よ。それに表向きはゼネコンのようだし、彼女を入れても問題ないと思うわ」

 本当に大丈夫かな?

「それに、新しくできる団体を大きくする一員となる。これってあなた的にときめかないかしら?」

「はっはっは、いいじゃん! あたしという人間を良く観察できているようじゃないか! 気に入った! あんたのサークルに入ってやろうじゃないか!」

「よろしく!」

 或斗と左京は互いに強い握手を交わした。どうやら互いに握力は互角の模様である。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...