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2話 会う約束

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そして彼もまた今撮ったと言う写真を送ってくれた。
プロフの写真よりも少し老けて、強面に見えた。

「あり?なし?」
「あり」

そう聞かれて「なし」と答えたことは1度だけあったが、
彼はそこまでではないと思った。

彼は家でリモートワークをしているらしく
平日の昼間にラインで会話していた。

おはようからおやすみまでラインがマメなことは
好きな相手ならば嬉しいのかもしれないが
まだ会ってもいない相手にそこまでの肯定的な感情はなかった。

それでも平行案件で進めていたもう一人の新規案件、
50歳の筋肉バカの稚拙なラインに比べると彼のラインは心が癒された。

ラインのラリーがヒートアップしてくると彼は意を決したように送ってきた。

「突然だけど今度会わない?」

家がまあまあ遠いのでお互いの中間点となると電車で片道1時間ほどかかる。
平日の昼間に数時間会う関係の相手にしては
正直めんどくさくなる遠さだと思った。

しかし、ラインのやりとりはまあまあ楽しいし、
身長172cmは偽りがなさそうなので一度は会ってみたいと思い快諾した。

「うん、いいよ。中間地点だと、〇〇駅かなあ?
降りたことないけど田舎かなあ?」
「カフェはあるよ。」
「じゃあそこにしよう。」

日程を決めて会う約束をした。


待ち合わせ当日、さちこは15分前に到着した。
駅の改札口で立っていると待ち合わせの10分前にメッセージがきた。

「着いたよ。」

顔を上げるとそれらしき人物が向かいの柱の前で立っていた。

「着いてるよ。」

返信すると、彼も顔を上げ、さちこに気づいた。

目が合い軽く会釈して彼が近づいてきた。
マスク姿で写真とは全然同一人物には見えなかった。

「早いね。」
「うん、松くんも早いじゃん。」
「絶対俺のが早いと思ったのに。」
「私常に10分前行動心がけてるから。」
「へえ~えらいね。」
「いや別に。そうでもしないとすぐギリギリでバタバタしちゃうから。
もうそういう自分を変えたくて余裕をもって家出るようにしてるの。」
「ふーん。」

かなり事前にラインでやりとりしてたこともあり
なんのドキドキワクワク感もなく
世間話をしながらショッピングモールに歩いて行き、
彼がカフェに案内してくれた。

「ここでいい?」
「うん、すごい素敵なお店だね。
こんなお店こんな駅にあると思わなかった。」
「そうでしょ?
ここがこの地域で一番おしゃれなカフェだよ。」
「そーなんだ。よく来るの?」
「たまに車でね。」
「ふーん。」

北欧風の明るい店内で開放的な店であった。
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