ぼくらの秘密ー大好きな人に真の姿をさらけ出す薬を盛ってみた

音無野ウサギ

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番外編 2-3 犬はご主人さまのことを全部知りたい

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 ☆☆☆



 儀式の終わった後、ルーディアはいつものように公務をこなした。神殿での彼の様子が気になっていたが俺も今日は忙しく一緒に過ごす時間が取れずじまい。やっと夜になり二人で話せると思っていたのだが断られてしまった。



 もう寝るところだし、というルーディアにせめて茶だけでもと粘ると、いつもと違い俺を部屋へ入れることをひどくためらう。今日は自分の部屋で寝るとカリンに約束させられて、やっと招き入れてくれた。



 だが二人きりになり茶を飲んでいる間もルーディアの様子は明らかにおかしかった。少し疲れたからと長椅子に横になりながら、時折俺に向ける瞳がいつも俺に向けてくれる甘さではない。何かを考え込んでいるようだ。



(カリンに叱られたことだけではなさそうだ)



「何か悩みでも?」



「ううん」



「本当に?」



「大丈夫だよ。なんでもないよ」



 そういいながら視線を合わせようとしないルーディア。明らかに何かを隠している。



 『大丈夫だよ』という人間が大丈夫だったことはない。父からも女性の言う『大丈夫』は『大丈夫ではない』、『私のせいだから』は『お前のせいだ』という意味だと教え込まれてきた。家庭円満にするためには知っておかなければならない常識だと。ルーディアは男だけれど、これは家庭円満のためのルールが適用されると思われた。



 俺はルーディアの本心を聞き出すために心を鬼にすることにした。もちろん嘘だ。ルーディアに触れる理由がまた増えたと内心小躍りしていた。



 我慢強くわがままを言わないルーディアが俺に心の内をさらけ出すようになる可愛い瞬間。愛撫に応え彼の中がきゅうきゅうと俺を締め付ける瞬間。



 俺は真面目な顔をしてルーディアを見つめた。



「この国では嘘つきには神様からのバツが当たるっていうらしいが?」



 俺がそう言うとルーディアはビクリと体をすくめた。そろりと俺と目をあわせる。けれどその口はすねた子供のように結ばれていた。視線が俺に『絶対言わない!』と告げている。



(へぇ?教えてくれないのか?じゃあ素直にしてあげなくては)



 少し楽しくなってきた俺は長椅子の上のルーディアを抱き上げその額に軽くキスして寝台へと運ぶ。いつもふたりで眠る寝台にころりと彼を転がした。



(今朝どんな夢をみて俺のことをいじわると詰ったのかも聞かなくてはいけないしな)



「もうっ!だめだってば!!」



 慌てたルーディアは寝台の上で俺のことを押しのけようとする。その弱い力で押しのけられるほど俺の体は軽くない。軽くいなし彼の体の上で馬乗りになり両腕で囲いを作る。細い腕で何度も俺を押しのけるようとするうちにルーディアの顔が赤くなってきた。



 絹糸のような艶のある豊かな黒髪が寝台に広がる様はそれだけで淫靡に見える。その寝台で繰り広げてきた二人の痴態を思えばなおさらだ。重たくないように腰を浮かしてはいるが俺の尻の下にあるルーディアの棒だってだんだんと熱を持ち始めているのがわかる。



 初めて体を重ねた日からとろとろに甘い夜を重ねてきたおかげで俺がルーディアに触れれば彼の体は発情するようになってしまっている。



(俺のルーディア。かわいいな)



 普段なら透けてしまうんじゃないかと思うほど色白の肌が上気して桃色に染まっているさまは当代一の絵師がかきあげた官能的な絵のようで現実味がない。



 細身の体はルーディアの本来の性別を忘れさせるほど中性的で俺の体と比べると今にも消えてしまいそうで心配になる。



「ルーディア、本当に人間か?妖精のように消えそうで怖いんだが。本当に俺のルーディアなのか確かめさせて欲しい」



 そういって耳元に囁くとふるふると首を振って抵抗された。



「ほんとうに!怒るよ!!今日はもうしないって言ったでしょう。約束守れないなら今すぐ自分の部屋に戻って!!」



 きっと俺のことをにらみつけるけど俺のルーディアはどんな表情をしてもかわいい。



「しないとは言ってない。自分の部屋で寝るとは約束したけれど」



「え、そうだっけ?」



「そうだ」



 一瞬虚をつかれたルーディアの顎をとり、だから…と唇を重ねる。



「まっっっへぇらぁんん…ん゛ん゛っあ゛っふうん」



 もがもがと何か言っていたけれど言葉ごと食み、柔らかい舌を見つけてすり合わせるとそれはかわいい鼻濁音へと変わっていった。



(あまい。やわらかい。愛おしい…)



 部屋には俺とルーディアの立てる甘い吐息だけがひろがる。



 何度重ねてもルーディアとの口づけは甘くて気持ちいい。砂糖菓子というよりは酩酊するのがわかっている酒の甘さに近い。舌をすり合わせるたびにぞくぞくとした興奮が体の中心に溜まっていく。



 腹の奥に残った熾火が本格的な炎に変わる。凶暴な欲望に変わりそうな予感がしていったん口をはなした。



(時間をかけてとろけさせなくては)

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