22 / 29
ラブコメ短編バージョン(※長編版とは展開が異なります)
褒める
しおりを挟む「タジェロンなのか……?」
殿下……?
「タジェロンは優秀な男だ。口は悪いが性格は良いし。ミーネはタジェロンのどんなところが、素晴らしいと思う?」
タジェロン様の、素晴らしいところ……?
普段はすごく毒舌なタジェロン様。
だけど小さなことによく気がついて、人の長所を褒めることもできる方。
そのギャップが良いと言っているご令嬢もたくさんいた。
私も一度だけ勉強を教えてもらった時、答えに至るまでの過程もよく見てくれて、正解した場合だけではなく着眼点とかも褒めていただいて嬉しかったのを憶えている。
教会や孤児院への寄付を募る慈善事業のために私がクッキーを焼く時も、毎回味の感想を述べてくれて美味しいと褒めてくださるし。
「観察眼が鋭く、人のことをよく見て褒めることができるところでしょうか」
「俺も、ミーネの事はよく見ているよ」
「殿下は私の性格をよく褒めてくださいますね」
ありがとうミーネはやさしいね、と私が殿下のために何かをするといつも褒めてくださるので、嬉しいです。
「それだけでは足りなかったのか? 人のことをよく見て……か。ミーネは外見を褒められても、嬉しかったりするのだろうか?」
大好きな殿下に言っていただけるのなら、たとえお世辞であっても……
「可愛いとか言われたりしたら、もちろん嬉しいです」
「そう、か……」
シュル、と小さな音がした。
ハラリと何かが落ちた気配がする。
「え……?」
嫌な予感がして下を見た。
先ほどまで身につけていたはずの服が、腰のところでただの布になっているのは、なぜ?
信じられないことに、胸が空気に晒されている。
「ゃ!?」
慌てて背中を丸め、自分の身体を抱きしめるように腕をまわして胸を隠す。
今夜私が身につけている閨の服は、一枚の大きな布を身体に巻きつけて肩のところで結んだもの。
殿下と結婚してから、夜のために用意される服は実用性よりも脱ぎ易さが優先されている気がする。
だから朝起きると、いつの間にか乱れてしまっていることも。
けれど今は、そういった不可抗力で起きた事では無い。
殿下に、脱がされた……!?
良かった、殿下がうしろにいて。
胸は、見られずに済んだはず。
夫婦だから胸を見せるのは普通かもしれないけれど、やっぱり恥ずかしい。
そう思っていたら、つ――っと背骨をなぞられた。
「ひぁっ」
ゾクリと身体が震え、胸の前で腕をクロスさせたまま、丸めていた背中をグッと反らしてしまう。
ふ、と殿下が小さく笑った。
「可愛い。ミーネがこんなに敏感だなんて知らなかった」
「殿、下……?」
私が想定していた可愛いとは、なんだか違う気がする。
恥ずかしくて、顔が、熱い。
「ミーネは背中も、透きとおるような白い肌で、綺麗だ」
や、背中なんて褒めないで、殿下。
殿下に見られていると思うと、恥ずかしくてたまらない。
ふわりとうしろから殿下に抱きしめられた。
「可愛い。ミーネの肩は俺と違って華奢で、強く掴んだら壊れてしまいそうだな。儚げで可愛い」
殿下に可愛いと言われるたびに、身体の温度が上がっていく気がするのは気のせい?
「耳朶にある小さな薄いホクロ。控えめでなんて可愛いんだ」
殿下、褒めるポイントが、ずれてますっ
しかもどれだけ近くで、私の耳を見ているのですか!?
「可愛い、ミーネのすべてが可愛い」
耳元で、甘い声で囁かないでっっ
くすぐ、ったくて……も、ぅ……
「殿下、うしろから抱きしめるのは、やめてください……」
近すぎて、ドキドキしすぎて、心臓がつらいから。
「そうか……すまなかった」
「ひゃ!?」
クルリと身体が反転して、ポスッと背中に柔らかい感触。
お尻をついて転んだような姿勢に驚いて、思わずベッドに両手をついてしまった。
すると私の手にすぐに重ねられた殿下の手。
先ほどまで本を読む時に使っていた、クッションを背にしている。
そして正面に、殿下。
殿下……?
殿下と視線が合わない。
私の目よりも下の方に向けられた殿下の視線。
まるで珍しい蝶を見つけた少年のように、殿下の瞳が大きく開かれ輝いているような。
ゴクリ、と殿下の喉が鳴った。
殿、下……?
「ミーネ、きれいな胸だ……」
むむむむむね!?
咄嗟に手で隠そうとしたけれど、重ねられた殿下の手にぎゅっと力が入って動けない。
「殿下っ、胸なんて、褒めないでください!」
「タジェロンにも褒められ、愛でられているんだろう?」
「タジェロン様に、胸なんて見せたことありませんっ!」
ようやく殿下と視線が合う。
熱があるような潤んだ瞳。頬も少し赤い。
「タジェロンでも、無い? では誰なんだ、ミーネ……」
そう呟いた殿下は、私の胸にゆっくりと顔をうずめていった。
217
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。