悪役令嬢は婚約破棄されて破滅フラグを回収したい~『お嬢様……そうはさせません』イケメンツンデレ執事はバッドエンドを許さない~

弓はあと

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 満員の会場が一斉にどよめいた。
 四角い舞台を取り囲むように設けられた観客席では、興奮したように立ち上がっている人がたくさんいる。

 大柄な騎士が数名、舞台の上から勢いよく弾き飛ばされて。
 観客席の最前列に座る女性の目の前へ落ちていった。
 女性の口から悲鳴が上がる。

 私の背丈ほどの高さがある舞台から落ち、受け身も取れず。
 身につけている鎧が地面とぶつかった。
 その上へ更に別の人が落ちてきてガギン、と重い音が響く。


 ぅわぁ、痛そうっっ


 私は表情を変えずに、心の中だけで叫ぶ。
 国を代表する者として、動揺している姿を見せるわけにはいかない。

 こちら側に落ちてきていたら巻き添えをくっていたかも。
 次が出番の私とサブルスは、舞台のそばで控えていた。

 舞台を挟んで反対側の上段に設けられた観覧席を、目線だけ動かして見上げる。
 一般観客席の奥にある、メルヴェイユ国王夫妻と王子のために作られた特別な観覧室。

 窓には幕がかけられていて、外から中の様子を窺うことはできない。
 あの中に、第一王子がいるのかもしれないけれど。
 これじゃいるのかいないのかさえ分からないじゃないの。

 ゆっくりと視線を舞台上へ戻す。

 いま目の前で繰り広げられているエスセナーリ王国の剣技は団体で行う激しいもので。
 戦争の一場面を表現するかのように、金色の武具を身につけた騎士たちと銀色の武具をつけた騎士たちの剣がぶつかり合っている。

 金色の騎士と銀色の騎士、それぞれ十数名はいそう。
 剣技を披露するための舞台はまあまあ広いとはいえ、これだけの人数だとさすがに小さく見える。

 メルヴェイユ王国の北西に位置する小さな国、エスセナーリ王国。
 私の住むアルアスラ王国とは接していない。

 来賓という立場にもかかわらずこんなに激しい剣技を見せるのは、小国だからといって舐められないようにするためにちがいない。
 他国から戦争を仕掛けられないように牽制しているのだと思う。

 エスセナーリ王国の剣技は金と銀のどちらが勝利という形はとらずに、剣をぶつけあうところで終わった。

 激闘で数名が舞台上から弾き飛ばされたのは、演出では無さそう。
 パッと見では分からないけれど、足を僅かに引きずって歩く人がいる。
 国の威信を保つため平然と退場していく騎士たち。でも、もしかしたら骨の折れている者もいるかもしれない。


 エスセナーリ王国が退場し、合図を確認してからサブルスに続いて舞台へ上がる。
 先ほどの豪華な武具を身につけた大勢の騎士によるエスセナーリ王国の剣技と違い、私たちはたったの二人。
 しかも二人とも防具を身につけていない、武具は腰に差した剣だけ。

 いったい何をするのかと、注目されたのだろう。

 シン、と場内が静まり返った。





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