【BL-R18】転生しても平凡な僕~前世で別れたスパダリが、双子に生まれ変わって溺愛過剰~

弓はあと

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雷鳴

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 暗い――

 ぃゃ、明るい?

 目が覚めて、真っ暗だと思った視界。
 けれどすぐに一瞬だけ光った。
 そしてほんの少し遅れて聞こえてきた、激しい破壊音。

 雷?

 苦手だ。
 前世から、ずっと。

 起き上がるために手を動かそうとしたけれど、動かない。
 横向きで寝転がったまま視線を足の方へ向ける。
 ロープで縛られている僕の足首……。

 手は背中の方にまわされているから分からないけれど。
 足の状態を見る限り、おそらく手首も縛られているのだろう。

 そうしている間もずっと、恐ろしさを感じるくらいの雷鳴が轟いていた。

 目隠しはされていなかったので、視線をキョロキョロと彷徨わせてみる。

 枠だけでガラスの無い窓の外から、何度も僕の視界を照らす稲光。
 枯れた葉が落ちている土の床。
 隅の方には壊れた農具が転がっていた。

 使っていそうな農具は、無い。
 ここは、もう使われていない農場の納屋とかだろうか……。

 僕はミチェーリ様の部屋にいたはず。
 フォッグ様も一緒だった。

 それなのに、どうしてこんな場所に……。

 手が使えないのは不便だったけれど、なんとか上半身を起こして座ることができた。

 ガタガタッ、と音がしたので咄嗟にバッとそちらへ顔を向ける。

 両開きの引き戸が片側だけ開いていた。

 そして、開いた戸の所に立っていたのは、フォッグ様。
 その背後では、激しい雨が降り続いている。

 でもフォッグ様が立っている所には屋根があるのかもしれない。
 フォッグ様の髪は濡れていなかった。
 
 表情もいつも通りで体調に変わりは無さそうだ。

 ホッと安堵の息を吐く。


「フォッグ様、よかったご無事で……」

「お前は馬鹿か? どこまでお人好しなんだ」

「ぇ……?」


 こちらへ近づいてきたフォッグ様は鼻先で笑うと、座っている僕を見下ろし目を細めた。


「お前には犯人になってもらう」

「犯人? いったい何の……?」

「ミチェーリ様を誘拐した犯人だよ」


 ……ミチェーリ様を誘拐?

 僕の馬鹿ッ、どうしてすぐに考えなかったんだ。
 小さなミチェーリ様の身が、危険にさらされている可能性を。


「ミチェーリ様はご無事ですか!?」

「人の心配をするなんて余裕だな」

「教えてくださいっ、それともフォッグ様はご存知ないのですかッ」


 ククッとフォッグ様が笑った。


「ミチェーリ様の事なら心配する必要は無い。お前の悪事に気付いた僕が助けたのだから」

「僕の悪事に気付いたフォッグ様が……?」

「今は外に停めてある馬車の中にいる 。ミチェーリ様は無事だ」

「馬車に……」


 ミチェーリ様、雷が怖くて泣いていないだろうか。


 馬車の中にいると言われ、外の様子が気になった。
 先ほどフォッグ様が入ってきた戸口の方へ視線を向ける。
 
 でも外を見る事はできなかった。
 戸口に屈強な男たちが数名いて、こちらへとやってくるところだったから。


「お前はミチェーリ様の誘拐に失敗して、仲間たちの怒りを買う」


 そう僕に告げるフォッグ様のうしろに、先ほど入ってきた男たちが無表情で立つ。


 男たちは四人……違う、五人?


「身代金を得られなかった仲間たちは腹いせに、お前を嬲るんだよ」

「なぶ……、フォッグ様、僕にそんな事をしても、何にもなりませんよ!」

「なるさ。僕はミチェーリ様を助けた英雄になれる」


 僕はフォッグ様を睨みつけた。

 フォッグ様の利益のためにミチェーリ様を巻き込むなんて、そんなこと絶対に許さない。


「僕は全部話します。ここであった事、全部」

「話せるなら、話せばいい」


 ニヤリとフォッグ様が笑った。

 何が楽しくて笑うのか、僕には分からない。





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