【BL-R18】転生しても平凡な僕~前世で別れたスパダリが、双子に生まれ変わって溺愛過剰~

弓はあと

文字の大きさ
7 / 45

騎士団長登場

しおりを挟む


 怜にそっくりな宰相、ナチュール侯爵が立っているのは僕たちがいるところより少し高い場所。

 そしてそこには、曲線のデザインが美しい椅子が二脚配置されていた。

 背もたれに使用されている革は柔らかそう。
 ここからは見えないけれどおそらく座面に使われている革も上質なもので、長時間座っていても疲れ知らずに違いない。

 そんな事を考えていたら、ナチュール侯爵が話し始めた。

 声まで怜にそっくりだ。
 本当に、よく似ている。

 ナチュール侯爵が発する言葉を、一言も聞き逃すまいと耳をそばだてた。

 この声、懐かし過ぎて聞いているだけで涙が出そう。

 怜とそっくりな声でナチュール侯爵が僕たち受験者に伝えたのは――

 このあと試験のために、王太子殿下、王太子妃殿下、および第一騎士団長がいらっしゃる事。

  一名ずつ名前が呼ばれ、別室で五分程度面談し志望動機などの確認を行う事。
 面談をするのは、宰相のナチュール侯爵と第一騎士団長のふたり。

 それ以外の者は広間に残り子どもたちのお世話をする。
 その様子を王太子殿下と妃殿下のお二人が少し離れた壇上から見ているらしい。

 ガチャリ、と音を立てて広間の扉が開く。

 開いた扉の方を見て、僕は彫刻のように固まり動く事ができなくなってしまった。

 先頭で入ってきた男性の顔が、怜と瓜二つだったから。
 それはもちろん、宰相のナチュール侯爵とも同じ顔で……

 宰相と同じ美しい青い瞳。
 でも、髪は違う。

 怜のような黒い髪じゃないし。
 長い銀髪をうしろで束ねている宰相とも違って。
 先頭で入ってきた男性は、金色の短髪。
 
 彼は、いったい何者――

 金縛りがとけた瞬間のようにハッと我に返った。

「せ、先頭にいるのは、誰!?」

 先ほど宰相のことを教えてくれた男性の肩を、再び掴んでしまう。

『いい加減にしろよお前、騎士団長のナチュール侯爵だろ。モスフィア王立第一騎士団の』

 さっきよりもさらに眉間に皺を寄せた男性が、小声で答えてくれた。

 彼が騎士団長だということはわかったけれど……
 ナチュール侯爵??
 宰相の事も、ナチュール侯爵だって言ってなかった??

 頭に浮かんだ疑問を解消したかったけれど。
 これ以上話しかけるなオーラを出されてしまい、聞く事はできなかった。

 王太子殿下と妃殿下が、壇上に用意されていた椅子へ座っている。

「では、これより試験を開始する」

 宰相の声に、少しざわついていた受験者たちの声はシンと静かになった。

 子どもの泣く声だけが、広間で響いている。

「名前を呼ばれた者は私と一緒に来るように。別室へ移動して面談を行う」

 デュオン、と。
 怜と同じ声で、宰相に呼ばれた。






しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...