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201.紋章と可能性

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 エンシェントドラゴンおじさんも、アルフォンスさんも、この紋章に似ている物を、ずっと前に見た事がありました。そう、それは、エンシェントドラゴンおじさんやアサヒさん、アルフォンスさん達が戦っていたあの頃に。

 この世界の人々や生き物を全て巻き込んだ、あの昔の戦い。その時の敵が、この紋章に似ている紋章を付けていたんだ。月の絵が似ているんだって。

 まず、今回の敵、コースタスク達が使っている紋章。月と花と蛇が描かれていて、詳しくいえば、月が1番濃い黒色、蛇が次に濃い黒色で、花が1番薄い黒色です。その黒色が何とも気持ち悪いんだよ。

 そして昔の紋章だけど、昔の紋章は月と星の紋章でした。こう、月と星がくっ付く感じで描かれていて、やっぱりどちらも黒色だったの。それでこっちも月の方が黒色が濃くて、星は蛇の色と同じくらい。

 月の形なんて、本当にそっくりらしいよ。まぁ、月を描くにしても、そこまで違いが出るわけじゃないと思うけど。ほら三日月や半月、まん丸お月様だったり。でもこの月の絵は、大きさも形も、本当にそっくりだって。

 う~ん、昔の紋章を見ることができれば、ハッキリ分かるんだけど。昔のはエンシェントドラゴンおじさん達しか知らないもんね。ただ、昔にも気持ち悪い紋章があったっていうのは分かったよ。

『この辺り、月の先の方の描き方や、角度、そして色がまったく同じではないか』

『そうなのだ。我も最初に見た時はかなり驚いた』

 え? そこまでそっくりなの? まったく同じって言うほど? そこまで確認できるんだね。

『ここまで似ているとは。他は蛇に花か。こちらは初めて見るが』

『それとだ、今回コースタスクやその仲間達の話しを聞いていると、奴等もこの国を手に入れようと、いや世界を手に入れようとしていてな。そのために我を復活させ、最初に1番近くに居た、邪魔なドラゴン達を襲ったらしい』

『ドラゴン族は、他とは全く力が違うからな。ドラゴン達が状況を理解しないうちに、どうにかしようとしたか? それでもドラゴン達を、この国のドラゴン達を、そう簡単に倒せるとは思えないが』

『それでも今、少し押されてはいるが、ドラゴン達と戦うことができているからな。昔の連中と、今のコースタスク達の目的が似ているところ、そしてこの紋章が似ている事が、どうにも気になったのだ』

『なるほど、これでは確かにまったく無関係ともいえんな』

 コースタスク達の目的と、昔の敵の目的は、世界を手に入れて、全てを支配すること。そして紋章まで似ているなんて。もしかして昔のことと関係あるの? 
 ほら、昔の敵が考えた、世界を手に入れる。その考えに共感して、コースタスク達は同じ事をしようとしたとか。それで、紋章も似てるような物にしたとかね。

 そう考えたのは、もちろん僕だけじゃなくて。僕が考えつくくらいだからね、エンシェントドラゴンおじさん達が考えないわけもなく。やっぱりエンシェントドラゴンおじさん達も、同じ事を考えていたよ。

『昔、あの時も、途中で奴等の考えに賛同して、敵側についた者達もいたからな。あれからかなり時間は経ち、あの頃の事をしっかり知らない者達ばかりになっていても、あの頃の記録を見たか。あるいは伝えられている事を聞き、昔の賛同した者達同様、今度は自分達がと、仲間を集め動き出した可能性もあるだろう』

『その思いが強く、あの時の象徴だった黒い月を使い、新たな紋章を作った…か』

 昔の紋章の黒い月と星。なんかね、星よりも月の印象が強かったみたいで、月が敵の象徴になってたんだって。何だろう、月の方が、色が濃かったからかな? 濃い黒色、黒色だけどこう、闇が蠢くような、黒色に吸い込まれるような、そんな気持ち悪さだからね。

『どの時代にも、馬鹿な事を考える者達は一定数いるからな。その可能性は高いな。しかし、お前は他にも考えている事があるだろう?』

 少しの沈黙の後、エンシェントドラゴンおじさんが答えます。

『そうだ。もし、あの頃の関係者が、今も生きていたら?』

 え? 関係者が生きている?

『あの時確かに奴を倒すことに成功した。それはお前もしっかり見ているだろう?』

『ああ』

『その後のことは…。我は封印されてしまい、残党のことまでは。それについてはお前の方が、しっかり全て消したのだろう?』

『もちろんだ。私達は全ての残党を消し去った。もちろんその後何年も、監視は続けた。あの馬鹿な国王のこともあったからな。間違いはないはずだ。はずだが…』

『お前達の目を盗み、うまく闇に潜り込み、ずっと機会を伺っていたとしたら。人間や獣人達が、ここまで長く生きるとは思えんが、奴等の魔法は、我々でも知らないものばかりだったからな。何か生きながらえる魔法を使い、ここまで生き延びていたら』

『それはありえないだろう。これまで沢山の魔法が生まれてきた。しかし寿命に関しての魔法は。これまでにどれだけの者達が、その魔法に挑戦してきても、これだけは誰も成功することはなかった。こんな自然の流れに逆らうような魔法は』

『我もそう思いたい。だが、その可能性がないわけではないだろう? すべての可能性を考えなければ。もしあの頃の関係者が生きていて、また世界を手に入れようとしているのならば。新しく世界を手に入れよう考えている者達よりも、初めてではない分、対応が難しくなるぞ。こういう時はどう動けば良いかなど、分かっているからな』

『まったく、何ということだ』

『今はドラゴン達よりも少し劣っているが、それは戦い始めたばかりという事と、他にも新しい仲間を入れたせいで、まだ全てを出しきれていないのかもしれん。これからさらに力が上がってきたら…』

 わわ、僕が考えていたよりも、大変なことになってるよ。アサヒさんやエンシェントドラゴンおじさん、そしてアルフォンスさん達が、苦労してやっと倒した敵が、もしかしたら生きていたかもしれないだなんて。

 しかもこれから力が上がってくるかも? エセルバードさん達、一生懸命戦ってくれてるのに。エセルバードさん達大丈夫だよね? 心配になる僕、フィルやクルクルも心配そうな顔をしています。

『それと、もう1つ可能性が』

『まだ何かあるのか?』

 そんな、まだ何かあるの!?

『そのどちらも、という可能性もあるのだ』

『どういうことだ?』
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