形象彫刻

日八日夜八夜

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 黒い石を吐いた。
 石は水面に沈まずに地面にバウンドして足元に落ちた。
 
 わたしは、まじまじとそれを見た。
 一つだけ。
 ポツンと転がった石は歪な形をしていた。

「ハーラン」
 薄れて聞こえなくなっていた声が、記憶の底からわたしを呼ぶ。
 何て可哀想な娘、何て不幸な娘……。

 わたしは喉元を抑えた。
 絶望は吐き尽くした。
 わたしは石になってゆく。

 ……砕かれる運命の石に。
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