元戦闘奴隷なのに、チャイニーズマフィアの香主《跡取り》と原住民族の族長からの寵愛を受けて困っています

さくらんこ

文字の大きさ
上 下
64 / 208
令和6年最新話★★★

151

しおりを挟む
※※※※※


 目が覚めたとき、どういう状況になっているのかよくわからなかった。
 えっと……ふたりに挟まれて寝ていたはずだけど。
 私はむくりと身体を起こす。足元のほうにふたりの気配を感じた。

「…………」

 気持ちよさそうに、アメシストとシトリンがくっついて寝ていた。青年の姿をしているのに、仔犬が身を寄せ合って寝ているみたいな様子でなんとも微笑ましい。
 昨日も思ったけどさ、仲良いよね……
 もともとひとつの石だったのだ。接触しているほうが安定するのかもしれない。

「別々に喚び出すのがあの石にとって正解だったのかもしれないけれど、こういうのを見せられるとアメトリンとして喚ぶべきだったんじゃないかって考えちゃうよねえ……」

 ふたりの頭を撫でてやると、くすぐったそうに身じろぎをして目を開けた。

「んー、おはよう、マスター」
「おはよう。眠れなかったのか?」

 それぞれが小さくあくびをして身体を起こした。

「おはようございます、アメシストさん、シトリンさん。私はちゃんと眠れたので元気です。おふたりはいかがですか?」
「僕は元気だよ。マスターの隣で寝ると回復も早いみたいだねえ」
「俺も元気だ。ここは寝心地がいい」
「そりゃあまあ、狭いベッドでぎゅうぎゅうに寝ていたのと比べたら、心地がいいんじゃないですかね?」

 病院では一人用のベッドにふたりで寝ていたのだ。このベッドは充分すぎるくらい広いのだから、それだけでも快適だろう。

「今夜も一緒に寝られるとありがたいんだが」
「私に手を出さない約束ができるなら、前向きに検討しましょう」
「僕も一緒がいいなあ。次は毛布も持ってくるから、ね?」
「……考えさせてください」

 ふと思い出したが、ルビは夜中にこの部屋を訪ねたのだろうか。ぐっすり寝過ぎて私は起きもしなかったのだが。


※※※※※


 アメシストとシトリンのふたりを連れ立って食堂を訪ねると、朝食の準備が進んでいた。焼いたパンの匂いとお茶の香りが満ちている。

「おはよう、マスター。昨夜はお楽しみだったのか?」
「おはようございます、ルビさん、別に何も楽しいことはありませんが」

 なんのことだろうと首を傾げると、アメシストとシトリンが居心地悪そうにした。厨房から顔を出したオパールが笑っている。

「あまりからかってやるなよ、ルビくん。マスターの部屋に忍び込めなかったからって、そういうのは感心しないなあ」
「鉱物人形がマスターに触れ合いを求めるのは自然だろう? あんただって、教官殿とよろしくしていたんじゃないのか?」

 不満げにルビが返すと、オパールは朝食の準備をしながら余裕の笑みを浮かべる。

「そりゃあオレと彼女は夫婦だからな。することはするぞ」
「……ご夫婦なんですか?」

 思わぬ発言に、私は適当な椅子に腰を下ろして尋ねた。オパールはこちらを見る。

「説明されなかったのか。協会職員は別段の事情がない限りは既婚者なんだよ。人間の伴侶がいなければ、オレらみたいに人間と鉱物人形で結婚しているんだぜ。回復させることを考えたら、そういうことにしておいたほうが都合がいいだろ?」

 なるほど、粘膜接触……
 私はわかったようなわからないような気持ちで頷いておく。
 そういえば、セレナの姿が見えないのだが、体力的なものでまだ寝ているということだろうか。
 むむむ……いつかはそういうことをしないといけなくなるんでしょうか……
 私はしれっと両隣に挟んで座るアメシストとシトリンを見やる。
 大きな怪我をさせなければいい話、よね?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...