63 / 208
令和6年最新話★★★
150
しおりを挟む ルビとスタールビーの魔力が増幅しているのは肌で感じられる。だから確かにそこにいるとわかるのだが、視認できないのだ。
これが鉱物人形の戦闘?
魔力が高まっているからだろう、ふたりから溢れ出す魔力が紅玉色の光として捉えられるようになった。
蛇型の魔物が翻弄されているのがわかる。
右へ、左へ。
首も尻尾も使える部分は使って動いているが、彼らを捉えきれていないようだ。魔物にとって、この屋内は狭すぎるのかもしれない。
衝撃波や咆哮で建物が軋み、揺れる。その都度、アメシストが結界を張り、シトリンが剣で飛翔体を弾いた。
「すごい……」
「一撃で仕留めるのかと思ったけど、慎重ね」
「そうなんですか?」
「彼らにとっても、あまり敵対したことのない相手なんでしょう。慎重なのはいいことよ」
セレナは答えながら、手を動かしている。術の準備のようだ。
「ところで、セレナさんはなにを?」
「倒したら毒素が充満、みたいなのもあるからね。精霊管理協会の制服ってその辺のことも考慮されていて術が編み込まれているんだけど、念には念を」
「現場に出ているだけありますね……」
ひょっとしたら、セレナの準備が整うのを待っているのかもしれない。彼女の手が止まったとき、赤い光が蛇型の魔物を分断した。
私の前方、地面に着地する音が二つ。すぐさまスタールビーが手をかざして結界を張る。
魔物が霧散した。蛇型の血煙が周囲の闇に溶けていく。
「――倒せたから引くぞ。ほかに魔物はいないはずだ」
結界は消さずに、スタールビーが告げる。
「呼吸はしないほうがいい。腐るぞ」
ルビが剣を虚空にしまうなり説明してくれた。彼の服の一部が溶けている。鉱物人形は衣装も含めて身体の一部だと説明されたのを思い出した。
私が手を伸ばそうとしたところで、アメシストが私を横抱きにする。
「治療は後だよ。脱出しよう」
建物が焼ける音がする。魔物がいたあたりの床が溶け始めていた。
私が頷いたのを確認して、撤退作業に入る。階段を降りて、来た道を辿って外に出た。
「よっ。お疲れ様だったな」
先に脱出していたオパールと合流した。彼の足元には腕と身体が別々にまとめられたステラが倒れている。大きな人形が落ちているみたいな感じで、どことなくシュールだ。
「サンプルが取れなかったけど、まあ仕方がないわよねえ」
オパールに向かって、セレナが肩をすくめた。オパールが苦笑する。
「データが取れりゃ充分だろ? 始末書と報告書、オレも手伝うからあんまり無茶してくれるな。きみは人間で、オレの伴侶なんだから。鉱物人形の未亡人とか、勘弁願いたいんだが」
「そっちもあんまり格好つけないでほしいわね」
「後輩に戦闘を見せるのが今回の仕事に含まれているんだろ? 任務を遂行しただけなのに、その言い方はないだろ」
ふたりのやり取りを見ていると、互いを信頼し心配していたのがよく伝わってくる。何かあったときにすぐに回復させたい都合で結婚しているのだとオパールは言っていたはずだが、彼らがパートナーとして選んだのは必然だったのだろうと思えた。
精霊管理協会の職員になるなら結婚必須みたいだけど、じゃあ精霊使いはどうなんだろう?
これが鉱物人形の戦闘?
魔力が高まっているからだろう、ふたりから溢れ出す魔力が紅玉色の光として捉えられるようになった。
蛇型の魔物が翻弄されているのがわかる。
右へ、左へ。
首も尻尾も使える部分は使って動いているが、彼らを捉えきれていないようだ。魔物にとって、この屋内は狭すぎるのかもしれない。
衝撃波や咆哮で建物が軋み、揺れる。その都度、アメシストが結界を張り、シトリンが剣で飛翔体を弾いた。
「すごい……」
「一撃で仕留めるのかと思ったけど、慎重ね」
「そうなんですか?」
「彼らにとっても、あまり敵対したことのない相手なんでしょう。慎重なのはいいことよ」
セレナは答えながら、手を動かしている。術の準備のようだ。
「ところで、セレナさんはなにを?」
「倒したら毒素が充満、みたいなのもあるからね。精霊管理協会の制服ってその辺のことも考慮されていて術が編み込まれているんだけど、念には念を」
「現場に出ているだけありますね……」
ひょっとしたら、セレナの準備が整うのを待っているのかもしれない。彼女の手が止まったとき、赤い光が蛇型の魔物を分断した。
私の前方、地面に着地する音が二つ。すぐさまスタールビーが手をかざして結界を張る。
魔物が霧散した。蛇型の血煙が周囲の闇に溶けていく。
「――倒せたから引くぞ。ほかに魔物はいないはずだ」
結界は消さずに、スタールビーが告げる。
「呼吸はしないほうがいい。腐るぞ」
ルビが剣を虚空にしまうなり説明してくれた。彼の服の一部が溶けている。鉱物人形は衣装も含めて身体の一部だと説明されたのを思い出した。
私が手を伸ばそうとしたところで、アメシストが私を横抱きにする。
「治療は後だよ。脱出しよう」
建物が焼ける音がする。魔物がいたあたりの床が溶け始めていた。
私が頷いたのを確認して、撤退作業に入る。階段を降りて、来た道を辿って外に出た。
「よっ。お疲れ様だったな」
先に脱出していたオパールと合流した。彼の足元には腕と身体が別々にまとめられたステラが倒れている。大きな人形が落ちているみたいな感じで、どことなくシュールだ。
「サンプルが取れなかったけど、まあ仕方がないわよねえ」
オパールに向かって、セレナが肩をすくめた。オパールが苦笑する。
「データが取れりゃ充分だろ? 始末書と報告書、オレも手伝うからあんまり無茶してくれるな。きみは人間で、オレの伴侶なんだから。鉱物人形の未亡人とか、勘弁願いたいんだが」
「そっちもあんまり格好つけないでほしいわね」
「後輩に戦闘を見せるのが今回の仕事に含まれているんだろ? 任務を遂行しただけなのに、その言い方はないだろ」
ふたりのやり取りを見ていると、互いを信頼し心配していたのがよく伝わってくる。何かあったときにすぐに回復させたい都合で結婚しているのだとオパールは言っていたはずだが、彼らがパートナーとして選んだのは必然だったのだろうと思えた。
精霊管理協会の職員になるなら結婚必須みたいだけど、じゃあ精霊使いはどうなんだろう?
0
お気に入りに追加
312
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。


うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる