珈琲の匂いのする想い出

雪水

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俺なんかでいいんですか(光輝視点)

違和感と自制と可愛さと

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俺は双葉くんを見送った後、仕事を休んだので特にすることがなかった。

受験が終わるくらいの時間までは仕事を少しでも進めようかと思っていたがどうせ丸一日休みが手に入ったので二度寝することにした。

目が覚めると時間は16:30だった。

流石にそろそろ受験が終わって家に帰っている頃だと思ったので双葉くんに会いに行った。

ピンポーン

双葉くんの家のインターホンはカメラが付いていてだれが来訪したかわかるようになっている。

モニターで確認したのか、インターホンからは声が聞こえずかわりにノータイムでドアが開いた。

「光輝さん!!」

言いながら双葉くんは抱きついてくる。

「おっと、受験お疲れ様。」

「ありがと!!」

「そういえば合格発表っていつなの?」

「2週間後の今日だね。」

予定を確認するとその日は奇跡的に休みだった。

「その日俺仕事休みだけどどうする?一緒に合否見に行く?」

「いく!」

「決まり~、今日は疲れてるだろうしこのくらいで帰るね。」

「はーい、また来てね!」

可愛らしい笑顔を前に俺は少し自制が効かなくなった。

「双葉くん、こっちおいで」

目でわかるくらい ? を浮かべたまま双葉くんがこっちに寄ってくる。

俺は双葉くんの頭を撫でながら 「よく頑張りました」 と言った。

もちろん目的は受験を労うことでもあったが1番は双葉くんの髪の毛を触りたかったからだ。

双葉くんは顔を真っ赤にして 「あ、ありが、、と。」 と言っていた。

可愛すぎる。

これ以上何かやらかす前に帰ろう。

「じゃあね~」

「うん!おやすみなさい。」

~時が流れ合否発表1日前~

俺はなぜか双葉くんが受かる未来しか見えてなかったから先にお祝い買っちゃおうと思ったが何を買えばいいか分からず考えていた。

そういえば、と双葉くんがクッキーが好きだって言っていたことを思い出しどうせテレワークだしと市内のそこそこ名のしれた洋菓子店に電話をかけた。

prrr...prrrrr

「お電話ありがとうございます、こちら◯◯、□□店でございます。」

「もしもし、あのですね」

「はい」

「お祝い用のいい感じのクッキーの詰め合わせとかあったりします?」

「はい、数種類ございますよ。どなた様にお送りされるものでしょうか?」

「知り合いの子供が受験合格したので。」

「それは良いですね、ご予算はどのくらいにいたしますか?」

正直いくらかけてもいいとさえ思った。

「何円でも大丈夫です。」

「かしこまりました、本日お受け取りで大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。お時間いつ頃がご都合よろしいでしょうか。」

「では19:00頃でも大丈夫ですか?」

「大丈夫です、では19:00頃お伺いしますね。」

「商品の方、私が選んでも大丈夫でしょうか?」

「ぜひ、お願いします。」

「承知いたしました。それではお待ちしております。失礼します。」

「はい、失礼します。」

まだ合格しているかは知らない。

だけどあれだけ頑張ってたんだ、落ちるはずがない。

これでねぎらう準備はオッケーっと。

あとすることなぁ、明日家に誘いたいし掃除でもするか。

正直言ってだいぶ仕事に余裕があるから今日のノルマはすぐ終わりそうなんだよな。

サクッと仕事を終わらせて掃除してクッキー取りに行こう、そう決めた俺はかつてないスピードで自分に課されたタスクをこなした。

時刻は17:00 ちょうど定時だ。

じゃあ19:00までに掃除を終わらせてしまおう。

~しばらく掃除~

「...ふぅ、こんなもんでいいかな?」

普段から割りと掃除をしていたのであまり重労働にはならなかった。

時計を見ると18:40、ちょうどいい時間だな。

俺は車の鍵を取り出し洋菓子店へと向かった。


カランコローン...

心地の良いドアベルとともにバターのような甘い香りに包まれる。

洋菓子店に入ったときのこの感覚が大好きだ。

「本日19:00にクッキーの詰め合わせを予約していたんですが...」

「お待ちしておりました。この度は本当におめでとうございます。こちら、クッキーの詰め合わせとサービスのサブレ、貝殻型マドレーヌでございます。」

「サービスだなんて、そんな!」

「こちらのサブレは大変食感が軽いものとなっておりまして、勉学がサクッと進むようにおまじないをかけております。こちらのマドレーヌは貝殻のように末広がりな形をしておりまして、どのような道にも進めるように、そうおまじないをかけております。ぜひ、お受け取りください。」

「本当にありがとうございます...!」

ここまでしてくれた優しい店員さんに頭が上がらない...

そうだ、お会計

「こちらおいくらですか?」

「2500円になります。」

「あ、意外と手の届きやすい価格帯なんですね。」

そう言うと店員さんは周囲を少し気にしながら囁いてきた。

「実は受験合格したっていうのを聞いて勝手ながら私もお祝いさせていただきたく、お値段の半分とサブレ、マドレーヌ代を持たせていただいてます。」

「えぇ!?」

「あっ、お静かに!バレたら困るので...」

「あぁすみません。でも本当に良いんですか?」

「えぇ、構いませんよ。むしろこちらこそいい体験をさせていただきありがとうございます。」

俺は2500円を払い店を後にした。

後は明日に備えるだけ。

楽しみだなぁ。

~そして合否発表の日の朝~

ピンポーン ピンポーン

「...はい?」

「おはよう光輝さん!朝だよ!結果発表だよ!」

「はいはい、今出るよ。」

俺は財布とスマホ、車の鍵を持って玄関から出た。

「じゃ、行こうか!」
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