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「うさぎにちゃんと言ってくださいね。今日は本当に予定が多くて、リスケするの大変だったんですから」
何件変更のお願いしたと思ってるんですか、と運転席で小言を言う狐高の背中を眺めながら、優は、悪かったよ、と眉を下げる。
「でも狐高なら出来ると思って任せたんだ」
「……そういうこと言う社長は好きじゃありません」
狐高の横顔が赤くなり、つっけんどんに返される。優はそれに小さく笑った。
「ところで、あのうさぎ、具合が悪そうでしたが」
狐高が話題を変え、そう切り出した。優がそれに頷く。
「昨日から、腹部に違和感があるらしい。今朝も何も食べられなくて……午後空けて欲しいと言ったのはそのためなんだ」
「腹部が……ですか?」
狐高がミラー越しに優を見やる。優は、そうらしいが、と首を傾げた。
「あ、いえ……まだ社長と兎田くんは番ってないんですよね」
「ああ……そもそも番うってどういうことなのかも知らないんだ」
「それは……」
優の言葉に狐高が答えようとした時だった。優のスマホが着信を告げる。相手は取引先の社長だ。出ないわけにもいかず、仕方なく優はその電話に出る。狐高の言葉の続きを聴きたかったと思いながらも結局それが叶うことはなかった。
午前中の仕事を手際よく終わらせ、午後の仕事を狐高に任せると、優は明を連れて以前累に紹介された病院を訪れた。
その建物の見た目はただの一般住宅で、クリニックの看板も掲げていない。完全に口コミで運営しているようだった。
病院へ着いて受付をすると、すぐに検査に呼ばれた。明がそれに応え、ふらふらと立ち上がる。朝よりも更に具合の悪そうな明が痛々しかった。
「ごめんなさい、優さん……」
検査を終えて待合室の椅子に座っていた優のところへ戻ると、明が泣きそうな顔でこちらを見つめた。きっと今日のスケジュールを変えてしまったことを申し訳なく思っているのだろう。優はそんな明に笑顔を向け、隣に座らせる。
「謝ることはない。それよりも、明の体の方が心配だ」
優はそう言うと、そっと明の肩を抱き寄せた。明が安心したように優の胸に体を預ける。きっと体温も高いのだろう、握った手が熱い。
「明、もし君がどんなに重い病気だったとしても、俺は一生明の傍に居るから」
「……やだな、優さん。大袈裟です」
優が真面目に言うと、明は少しだけ笑ってそう答えた。明は大袈裟、などと言うが、人とは違う体なのだから、優の心配は尽きることはない。どんな病気だろうと、絶対に自分が治してやると思っていた。
「兎田さん、診察室へどうぞ」
優が決意を固くしていると、そんな声が聞こえ優が顔を上げた。少し緊張しながら、明の体を支え、優は立ち上がった。
「いわゆる性転換ですね」
目の前にいる白衣の医師は、穏やかな声でそう検査結果を伝えた。その言葉に明も、その隣に立っていた優も首を傾げる。
「お二人は番なんですよね。同性同士の番の場合、どちらかが性転換をして、妊娠を可能にします。見た目が変わることはないのですが、臓器が形を変えるんです。兎田さんの体の中でもそれが起こっているんです――これ、腹部のエコー写真ですが、小さく子宮が出来てるの、分かりますか?」
具合がよくなれば妊娠可能ですよ、と医師が微笑む。
「先生、ぼく……赤ちゃんを産めるんですね」
「そういうことです。でも、まだ体が安定してないので、時期はみてください」
おそらく一週間以内には落ち着きますよ、と言われ、優は安堵の息を吐いた。最悪の場合も想定していただけに、本当にほっとした。
「帰って休もうか、明」
優の言葉に明が素直に頷く。累から聞いていたとはいえ、その体がちゃんと変化していることが嬉しいのだろう。明はやさしい顔で腹部に手を当てていた。いつか、自分と明の血を受け継ぐ命がそこに宿るかもしれないと思うと、優も嬉しい。
二人は幸せな気持ちのままでその日は帰宅した。
「うさぎにちゃんと言ってくださいね。今日は本当に予定が多くて、リスケするの大変だったんですから」
何件変更のお願いしたと思ってるんですか、と運転席で小言を言う狐高の背中を眺めながら、優は、悪かったよ、と眉を下げる。
「でも狐高なら出来ると思って任せたんだ」
「……そういうこと言う社長は好きじゃありません」
狐高の横顔が赤くなり、つっけんどんに返される。優はそれに小さく笑った。
「ところで、あのうさぎ、具合が悪そうでしたが」
狐高が話題を変え、そう切り出した。優がそれに頷く。
「昨日から、腹部に違和感があるらしい。今朝も何も食べられなくて……午後空けて欲しいと言ったのはそのためなんだ」
「腹部が……ですか?」
狐高がミラー越しに優を見やる。優は、そうらしいが、と首を傾げた。
「あ、いえ……まだ社長と兎田くんは番ってないんですよね」
「ああ……そもそも番うってどういうことなのかも知らないんだ」
「それは……」
優の言葉に狐高が答えようとした時だった。優のスマホが着信を告げる。相手は取引先の社長だ。出ないわけにもいかず、仕方なく優はその電話に出る。狐高の言葉の続きを聴きたかったと思いながらも結局それが叶うことはなかった。
午前中の仕事を手際よく終わらせ、午後の仕事を狐高に任せると、優は明を連れて以前累に紹介された病院を訪れた。
その建物の見た目はただの一般住宅で、クリニックの看板も掲げていない。完全に口コミで運営しているようだった。
病院へ着いて受付をすると、すぐに検査に呼ばれた。明がそれに応え、ふらふらと立ち上がる。朝よりも更に具合の悪そうな明が痛々しかった。
「ごめんなさい、優さん……」
検査を終えて待合室の椅子に座っていた優のところへ戻ると、明が泣きそうな顔でこちらを見つめた。きっと今日のスケジュールを変えてしまったことを申し訳なく思っているのだろう。優はそんな明に笑顔を向け、隣に座らせる。
「謝ることはない。それよりも、明の体の方が心配だ」
優はそう言うと、そっと明の肩を抱き寄せた。明が安心したように優の胸に体を預ける。きっと体温も高いのだろう、握った手が熱い。
「明、もし君がどんなに重い病気だったとしても、俺は一生明の傍に居るから」
「……やだな、優さん。大袈裟です」
優が真面目に言うと、明は少しだけ笑ってそう答えた。明は大袈裟、などと言うが、人とは違う体なのだから、優の心配は尽きることはない。どんな病気だろうと、絶対に自分が治してやると思っていた。
「兎田さん、診察室へどうぞ」
優が決意を固くしていると、そんな声が聞こえ優が顔を上げた。少し緊張しながら、明の体を支え、優は立ち上がった。
「いわゆる性転換ですね」
目の前にいる白衣の医師は、穏やかな声でそう検査結果を伝えた。その言葉に明も、その隣に立っていた優も首を傾げる。
「お二人は番なんですよね。同性同士の番の場合、どちらかが性転換をして、妊娠を可能にします。見た目が変わることはないのですが、臓器が形を変えるんです。兎田さんの体の中でもそれが起こっているんです――これ、腹部のエコー写真ですが、小さく子宮が出来てるの、分かりますか?」
具合がよくなれば妊娠可能ですよ、と医師が微笑む。
「先生、ぼく……赤ちゃんを産めるんですね」
「そういうことです。でも、まだ体が安定してないので、時期はみてください」
おそらく一週間以内には落ち着きますよ、と言われ、優は安堵の息を吐いた。最悪の場合も想定していただけに、本当にほっとした。
「帰って休もうか、明」
優の言葉に明が素直に頷く。累から聞いていたとはいえ、その体がちゃんと変化していることが嬉しいのだろう。明はやさしい顔で腹部に手を当てていた。いつか、自分と明の血を受け継ぐ命がそこに宿るかもしれないと思うと、優も嬉しい。
二人は幸せな気持ちのままでその日は帰宅した。
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